36 / 39
第三十六話 正しさと空言
しおりを挟む
──……変成王。
私は自分の事を「世間に溢れる平均的な十八歳の女性の中でもずば抜けて教養のある人間である」と自負しているのだが、つい今しがた『帽子屋』と呼ばれている男の口から出たワードには一切聞き覚えが無い。
生まれて初めて体験した地震のショックで一時的に取り乱しはしたものの、男の丸眼鏡の奥にある瞳を見据えたまま心を落ち着かせて何度も反芻する。
(考えるのよ、アリス……彼は自分がベルゼブブであると認めていたわ。それはそうとして、役割? 全うするって、いったい何を? ベルゼブブでありながら『変成王』が役割? 不思議の国にはそんな名前の付いた生き物なんて、)
「ええ、ええ。ええ、そうです。不思議の国には悪魔は勿論、変成王など存在しませんとも」
「!?」
嗚呼、またよ。
イカレ帽子屋──いいえ。ベルゼブブは、まるで私の思考を見透かしているかのような話し方をする。彼に読心術やテレパシーといった類の能力が備わって無いのなら、“電波を用いて盗聴している”のだろう。許せない……許せない!!
「ええ、その通り。ンッフフ。小生の“これ”はエンパスやテレパスの類ではなく、レディの仰る『思考盗聴』に近いです。ンンー、しかし少し違います」
そう言って、ベルゼブブはひどく優雅な動きでシルクハットを拾い上げてから自身の頭に被り直すと、前屈みになり黒手袋に包まれた左手でマグカップの取っ手を握り、飲み口を唇に運んでゴクリゴクリと甘ったるいコーヒーを嚥下する。
いったい何が『違う』のかしら?思考盗聴に“近い”だなんて濁した言い方をしていたけれど、この男が私に無断で頭の中を電波ジャックしているのは確かな事実であると露見した。犯罪者よ!?そう、犯罪者なのよ!!絶対に許してはいけないわ!!
四肢こそ動かせないものの、眼球と目玉付近の筋肉は自由を失っていない。少し上にある不届き者の顔を思い切り睨みつけてやれば、吊り上がった眉がピクリと反応を示した。
「ンフフッ、ンッフ……電波など必要ありませぬ。その身、その心。小生の前に存在するだけで十分なのです」
(さっきから意味の分からないことばかり言って、本当に腹が立つわ……! これだからイカレた生き物は困るのよ!!)
「ンンンー……まあ、そう怒らないでくださいな。ネタバラシは後ほどきちんとしますから、ね?」
甘ったるい猫撫で声が言葉を紡ぎ、獅子の尾がひらりふわりと愉快そうに揺れる。マグカップをテーブルに置いたベルゼブブはのんびりとした動作で背筋を伸ばし、両腕を組んでこちらの機嫌を伺うかのように小首を傾けたまま穏やかに微笑んだ。
「ンッフフ……さて、さて。小生はレディにもう一度だけチャンスを与えます」
(チャンス?)
心の中で問い返すと同時に、男が左手の指をパチンと鳴らす。
「レディが本当に自分を『正しい』と思うのであれば、何も困る事は起こり得ませぬとも。ええ、ええ」
くすくす、くすり。小さな小さな嘲笑が“お母様”の記憶と重なって、私の理性を狂わせる。
「──っ、何が言いたいの!?」
感情に任せて椅子から立ち上がったところで、私の体に自由が戻ってきていることに気が付いた。
そして、本能的に理解させられる。私の頭から足の爪先に至るまでを、何らかの手段を用いてこの男の手が“操作している”のだと。
「さあ。さあさあ、レディ? これが最期のチャンスです」
ニタニタと薄気味の悪い笑みを浮かべた男が、ゆらりと片腕を上げて私の背後を指差した。
人差し指の先を視線で追って体ごとゆっくり振り返れば、つい先ほどまで何も無かったはずの壁に木製の扉が三つ出現しており、反射的に「え」と吃驚の声が漏れる。
「どうぞ、自由にお逃げください。レディが本当に正しい人間であるなら、その扉の先は全て正しい道に繋がっております」
言葉の意味を解釈するより先に、いったん落ち着いて大きく息を吐き思考を巡らせた。
この男の能力?が私の体を襲ったのは、この建物内に入ってからだ。少なくとも、街中や庭にいる段階で手足が自由を失った覚えはない。彼が振る舞った飲食物には手をつけていないのだから、トリックがあるとすれば『ベルゼブブの家の中』だろう。つまり、建物外に出てしまえば能力(と思しき力)は発動できないのではないか?
仮定すると同時に、彼の提示した『さいごのチャンス』に飛びついた。
当然、ここへ来た時と同じ玄関扉から脱出するという策も浮かんだが、そのためにはまずベルゼブブの隣を走り抜けて彼の背後にある扉をくぐり、リビングから出なければならない。途中で捕まってしまう可能性まで危惧すると、あまりにもリスキーだ。
(まずはここから離れないと──……)
ベルゼブブは言った。私が本当に正しい人間であるならば、扉の先は全て正しい道に繋がっていると。
私が間違うなど絶対にない。アリスはいつでも正しくて、カラスは白いと主張すればこの世の全てのカラスが『白』になる。殊このワンダーランドにおいて、私はもっとも正しい人間なのだ。
それなのに。
「!?」
三つのうち一番右端にあった金色の冷たいドアノブを掴み、ガチャガチャと乱暴に回して力任せに扉を押す。けれど、その向こう側に踏み入れようとした足は目の前の光景を見て本能的に動きを止めてしまった。
──……辺り一面に広がる火の海。ごうごうと燃え盛る赤色と橙色が、これ以上は進めないと声高らかに主張している。
熱い、熱い。別室でも屋外でもない。どこまでも暗闇と炎の広がる此処は、
「ン~ンッン~ンン~」
扉を開け放ったまま一歩二歩と後退り、呑気に鼻歌をうたうベルゼブブを再度思い切り睨みつけてやった。けれど、そんなことはどこ吹く風とばかりに長身の男は残り二つのドアノブを回して順に開扉する。
先にある風景は同じく火の海。はじめから逃げ道など用意されていなかったのだ。
「嗚呼、レディ。なんと嘆かわしい」
「……騙したのね」
「何を仰るやら……先に小生を欺こうとしたのは、レディの方ではありませんか」
「!!」
低く低く、言葉が落ちる。細められた海色の瞳に射抜かれた──たったそれだけで、ドクリと心臓が大きく跳ねて悪寒が背筋を駆け上がった。
今だ開け放たれたままの扉の向こうからは熱気が流れ込んでおり、暑いはずだというのに両手がぶるぶると震えだす。
いつの間にか息継ぎの仕方を忘れていることに気がついて、一つ大きく息を吸った。
「わた、し……私は、貴方を騙そうとしたりなんて……」
騙そうとした覚えはない。
はっきりとそう言い切ってしまえばいいだけの話なのに、喉に『何か』がつっかえている異物感で声を上手く出せない。
(……私は、彼を怖がっているの?)
ああ、そうだわ。この感情、この既視感。私は──……ベルゼブブに強い恐怖を覚えているのだ。
どうしようもなく怖ろしい。だって、だって、あの言い方!あれじゃあまるで、全て見透かされているみたいじゃない!私の脳みそに流れる思考を現在進行形で盗聴されているのなら、本当の事を皆に全部バラされてしまうかもしれない。
嫌、嫌。そんなの困るわ、絶対にダメよ!だって、ようやく“ ”のに。
「それに、レディが本当に正しい人間であるならば、『自分は正しい』などと考えもしないものなのですよ。自らの“罪”で報いを受けているというのに、軽々しく『自分には罪が無い』と申して憤慨するのもまた、的外れも的外れ」
ギラつく青が私を映し、男は愉快そうにクックと喉を鳴らす。
バチンッ!扉の奥で爆ぜた火花の音が耳の奥を強く撃ち、全身にまとわりついていた『恐怖』の鎖がガラリと崩れた。
(……そうよ、そうだわ。簡単な話よ)
「さて。嗚呼、ようやく……ディナーの時間でございます」
恍惚とした表情で呟いたベルゼブブは、自身の左足にゆっくりと片手を伸ばす。彼の太ももあたりには革製のベルトで黒いナイフホルダーが固定されており、そこからぶら下がる銀のナイフとフォークは炎を映してギラギラ光っていた。
度重なる彼の意味不明な発言など、今はもう気にならない。だって、問題の解決方法を見つけたんだもの。
「アリス、大丈夫。これから何が起きたって、私はずっと貴女の味方よ。アリス、貴女は正しい人間だわ。間違っているのはこの男。こんな悪い奴は、」
──……殺してしまえばいいのよ。
透き通るように美しいロリーナ姉さんの声が、私のすぐ耳元でそう囁いた。
私は自分の事を「世間に溢れる平均的な十八歳の女性の中でもずば抜けて教養のある人間である」と自負しているのだが、つい今しがた『帽子屋』と呼ばれている男の口から出たワードには一切聞き覚えが無い。
生まれて初めて体験した地震のショックで一時的に取り乱しはしたものの、男の丸眼鏡の奥にある瞳を見据えたまま心を落ち着かせて何度も反芻する。
(考えるのよ、アリス……彼は自分がベルゼブブであると認めていたわ。それはそうとして、役割? 全うするって、いったい何を? ベルゼブブでありながら『変成王』が役割? 不思議の国にはそんな名前の付いた生き物なんて、)
「ええ、ええ。ええ、そうです。不思議の国には悪魔は勿論、変成王など存在しませんとも」
「!?」
嗚呼、またよ。
イカレ帽子屋──いいえ。ベルゼブブは、まるで私の思考を見透かしているかのような話し方をする。彼に読心術やテレパシーといった類の能力が備わって無いのなら、“電波を用いて盗聴している”のだろう。許せない……許せない!!
「ええ、その通り。ンッフフ。小生の“これ”はエンパスやテレパスの類ではなく、レディの仰る『思考盗聴』に近いです。ンンー、しかし少し違います」
そう言って、ベルゼブブはひどく優雅な動きでシルクハットを拾い上げてから自身の頭に被り直すと、前屈みになり黒手袋に包まれた左手でマグカップの取っ手を握り、飲み口を唇に運んでゴクリゴクリと甘ったるいコーヒーを嚥下する。
いったい何が『違う』のかしら?思考盗聴に“近い”だなんて濁した言い方をしていたけれど、この男が私に無断で頭の中を電波ジャックしているのは確かな事実であると露見した。犯罪者よ!?そう、犯罪者なのよ!!絶対に許してはいけないわ!!
四肢こそ動かせないものの、眼球と目玉付近の筋肉は自由を失っていない。少し上にある不届き者の顔を思い切り睨みつけてやれば、吊り上がった眉がピクリと反応を示した。
「ンフフッ、ンッフ……電波など必要ありませぬ。その身、その心。小生の前に存在するだけで十分なのです」
(さっきから意味の分からないことばかり言って、本当に腹が立つわ……! これだからイカレた生き物は困るのよ!!)
「ンンンー……まあ、そう怒らないでくださいな。ネタバラシは後ほどきちんとしますから、ね?」
甘ったるい猫撫で声が言葉を紡ぎ、獅子の尾がひらりふわりと愉快そうに揺れる。マグカップをテーブルに置いたベルゼブブはのんびりとした動作で背筋を伸ばし、両腕を組んでこちらの機嫌を伺うかのように小首を傾けたまま穏やかに微笑んだ。
「ンッフフ……さて、さて。小生はレディにもう一度だけチャンスを与えます」
(チャンス?)
心の中で問い返すと同時に、男が左手の指をパチンと鳴らす。
「レディが本当に自分を『正しい』と思うのであれば、何も困る事は起こり得ませぬとも。ええ、ええ」
くすくす、くすり。小さな小さな嘲笑が“お母様”の記憶と重なって、私の理性を狂わせる。
「──っ、何が言いたいの!?」
感情に任せて椅子から立ち上がったところで、私の体に自由が戻ってきていることに気が付いた。
そして、本能的に理解させられる。私の頭から足の爪先に至るまでを、何らかの手段を用いてこの男の手が“操作している”のだと。
「さあ。さあさあ、レディ? これが最期のチャンスです」
ニタニタと薄気味の悪い笑みを浮かべた男が、ゆらりと片腕を上げて私の背後を指差した。
人差し指の先を視線で追って体ごとゆっくり振り返れば、つい先ほどまで何も無かったはずの壁に木製の扉が三つ出現しており、反射的に「え」と吃驚の声が漏れる。
「どうぞ、自由にお逃げください。レディが本当に正しい人間であるなら、その扉の先は全て正しい道に繋がっております」
言葉の意味を解釈するより先に、いったん落ち着いて大きく息を吐き思考を巡らせた。
この男の能力?が私の体を襲ったのは、この建物内に入ってからだ。少なくとも、街中や庭にいる段階で手足が自由を失った覚えはない。彼が振る舞った飲食物には手をつけていないのだから、トリックがあるとすれば『ベルゼブブの家の中』だろう。つまり、建物外に出てしまえば能力(と思しき力)は発動できないのではないか?
仮定すると同時に、彼の提示した『さいごのチャンス』に飛びついた。
当然、ここへ来た時と同じ玄関扉から脱出するという策も浮かんだが、そのためにはまずベルゼブブの隣を走り抜けて彼の背後にある扉をくぐり、リビングから出なければならない。途中で捕まってしまう可能性まで危惧すると、あまりにもリスキーだ。
(まずはここから離れないと──……)
ベルゼブブは言った。私が本当に正しい人間であるならば、扉の先は全て正しい道に繋がっていると。
私が間違うなど絶対にない。アリスはいつでも正しくて、カラスは白いと主張すればこの世の全てのカラスが『白』になる。殊このワンダーランドにおいて、私はもっとも正しい人間なのだ。
それなのに。
「!?」
三つのうち一番右端にあった金色の冷たいドアノブを掴み、ガチャガチャと乱暴に回して力任せに扉を押す。けれど、その向こう側に踏み入れようとした足は目の前の光景を見て本能的に動きを止めてしまった。
──……辺り一面に広がる火の海。ごうごうと燃え盛る赤色と橙色が、これ以上は進めないと声高らかに主張している。
熱い、熱い。別室でも屋外でもない。どこまでも暗闇と炎の広がる此処は、
「ン~ンッン~ンン~」
扉を開け放ったまま一歩二歩と後退り、呑気に鼻歌をうたうベルゼブブを再度思い切り睨みつけてやった。けれど、そんなことはどこ吹く風とばかりに長身の男は残り二つのドアノブを回して順に開扉する。
先にある風景は同じく火の海。はじめから逃げ道など用意されていなかったのだ。
「嗚呼、レディ。なんと嘆かわしい」
「……騙したのね」
「何を仰るやら……先に小生を欺こうとしたのは、レディの方ではありませんか」
「!!」
低く低く、言葉が落ちる。細められた海色の瞳に射抜かれた──たったそれだけで、ドクリと心臓が大きく跳ねて悪寒が背筋を駆け上がった。
今だ開け放たれたままの扉の向こうからは熱気が流れ込んでおり、暑いはずだというのに両手がぶるぶると震えだす。
いつの間にか息継ぎの仕方を忘れていることに気がついて、一つ大きく息を吸った。
「わた、し……私は、貴方を騙そうとしたりなんて……」
騙そうとした覚えはない。
はっきりとそう言い切ってしまえばいいだけの話なのに、喉に『何か』がつっかえている異物感で声を上手く出せない。
(……私は、彼を怖がっているの?)
ああ、そうだわ。この感情、この既視感。私は──……ベルゼブブに強い恐怖を覚えているのだ。
どうしようもなく怖ろしい。だって、だって、あの言い方!あれじゃあまるで、全て見透かされているみたいじゃない!私の脳みそに流れる思考を現在進行形で盗聴されているのなら、本当の事を皆に全部バラされてしまうかもしれない。
嫌、嫌。そんなの困るわ、絶対にダメよ!だって、ようやく“ ”のに。
「それに、レディが本当に正しい人間であるならば、『自分は正しい』などと考えもしないものなのですよ。自らの“罪”で報いを受けているというのに、軽々しく『自分には罪が無い』と申して憤慨するのもまた、的外れも的外れ」
ギラつく青が私を映し、男は愉快そうにクックと喉を鳴らす。
バチンッ!扉の奥で爆ぜた火花の音が耳の奥を強く撃ち、全身にまとわりついていた『恐怖』の鎖がガラリと崩れた。
(……そうよ、そうだわ。簡単な話よ)
「さて。嗚呼、ようやく……ディナーの時間でございます」
恍惚とした表情で呟いたベルゼブブは、自身の左足にゆっくりと片手を伸ばす。彼の太ももあたりには革製のベルトで黒いナイフホルダーが固定されており、そこからぶら下がる銀のナイフとフォークは炎を映してギラギラ光っていた。
度重なる彼の意味不明な発言など、今はもう気にならない。だって、問題の解決方法を見つけたんだもの。
「アリス、大丈夫。これから何が起きたって、私はずっと貴女の味方よ。アリス、貴女は正しい人間だわ。間違っているのはこの男。こんな悪い奴は、」
──……殺してしまえばいいのよ。
透き通るように美しいロリーナ姉さんの声が、私のすぐ耳元でそう囁いた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
花の檻
蒼琉璃
ホラー
東京で連続して起きる、通称『連続種死殺人事件』は人々を恐怖のどん底に落としていた。
それが明るみになったのは、桜井鳴海の死が白昼堂々渋谷のスクランブル交差点で公開処刑されたからだ。
唯一の身内を、心身とも殺された高階葵(たかしなあおい)による、異能復讐物語。
刑事鬼頭と犯罪心理学者佐伯との攻防の末にある、葵の未来とは………。
Illustrator がんそん様 Suico様
※ホラーミステリー大賞作品。
※グロテスク・スプラッター要素あり。
※シリアス。
※ホラーミステリー。
※犯罪描写などがありますが、それらは悪として書いています。
浮気の代償の清算は、ご自身でどうぞ。私は執行する側です。
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
ホラー
第6回ホラー・ミステリー小説大賞 読者賞受賞作品。
一話完結のオムニバス形式
どの話から読んでも、楽しめます。
浮気をした相手とその旦那にざまぁの仕返しを。
サイコパスホラーな作品です。
一話目は、結婚三年目。
美男美女カップル。ハイスペックな旦那様を捕まえたね。
そんな賛辞など意味もないほど、旦那はクズだった。婚約前からも浮気を繰り返し、それは結婚してからも変わらなかった。
そのたびに意味不明な理論を言いだし、悪いのは自分のせいではないと言い張る。
離婚しないのはせめてもの意地であり、彼に後悔してもらうため。
そう。浮気をしたのだから、その代償は払っていただかないと。彼にも、その彼を誘惑した女にも。
甦る妻
星 陽月
ホラー
【あらすじ】
その日、会社をリストラされた中沢は、夕食のステーキを口に運びながらも喋りつづける妻の蠢く唇を見ていて殺意をいだく。中沢は「妻が浮気をしている」そう思いこんでいた。
殺意をいだきながら、中沢もまたステーキを口に運び、赤ワインを飲んでいるうちに酔いが回ってしまった。妻に支えられながら2階の寝室に入り、ベッドに倒れこむように横になると、急速に闇に引き込まれてしまったのだった。
ふと目を覚まして時計を見ると10時を過ぎており、中沢は3時間ほど眠ってしまっていた。
ベッドから出て、1階に下りリビングに入ると、妻がスマートフォンで誰かと話していた。
中沢はとっさにキッチン身を隠すと、神経を集中して聞き耳を立てた。
相手の話しにうなずきながら、妻の声は歓喜していた。
浮気相手の男なのだと中沢は確信した。そのとたん、胸に狂気が芽生え、それは嫉妬の炎となり、こみ上げる怒りと憎悪が中沢の理性を断ち切った。中沢は妻の背後へと近づいていき、それに気づいてふり返った妻の首を絞めて殺害した。
殺してしまった妻の身体をシーツにくるみ、車のトランクに入れて山林へと運ぶと、中沢は地中に埋めて自宅へともどった。
翌日、解雇されたにもかかわらず、会社のあるオフィスビルの前まで来てしまい、しばらくそのオフィスビルを眺めていた。行くあてもないまま新宿の街を徘徊し、夕刻にになって自宅へともどってリビングのソファに坐っていると、死んだはずの妻が姿を現したのだった。
パニックに陥る中沢だったが、キッチンで夕食の料理を作っている妻の背を見ていて、「妻を殺したのは、悪い夢だったのだ」と思うようにした。しかし、中沢はまた、妻を殺してしまう。
中沢はそうして、妻を殺すという日々をくり返すこととなってしまった。
まるでメビウスの環のように、そこから逃れることは出来ないのだった。
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる