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君に囁いて

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 俺のお嫁さんは、とっても可愛い。

 小さくて、笑顔が……いや、笑顔『も』素敵で、ふわふわしていて、素直でまっすぐで頑張り屋さんで、お料理も上手。

 とっても大好きな、可愛い可愛い、世界に一人だけの俺のお嫁さん。 


(ふふ。二人とも、よく寝てる)


 今日もいつも通りお仕事を終え、お店を閉めて家に帰ってみれば、ベビーベッドで眠る美花子と、そのそばでうたた寝をしているみーちゃんがいた。

 何よりも大切な、宝物の二人。


(可愛い) 


 美しく咲く花のような子に、なりますように。
 そんな願いを込めて、美花子みかこという名前にした。

 すやすや眠るその小さな頬に手を伸ばし、ぷにぷにとつっついてみる。


(……起きない)


 小さく小さく、くつくつと笑ってからみーちゃんの頭を撫でた。 


「……みい、お疲れ様」


 さらさらの髪の毛を指ですき、口づけを落とす。


「いつもありがとう、みい」
「……えへへ……」


 ぽつり。
 耳に届いたみーちゃんの呟きに、起こしてしまっただろうかと慌てて顔を覗き見た。

 けれどそのまぶたは閉じられたままで、


(みーちゃん、まつ毛長い……可愛いなあ……)


 もう一度、頭を優しく撫でる。 

 それから、起こしてしまわないように気をつけながらみーちゃんの体を抱き上げた。
 いわゆる、お姫様抱っこ。


「軽いなぁ、みーちゃん」


 小さいし、軽いし、やわらかい。
 その体を寝室まで運び、ベッドの上にそっとおろした。


(……可愛い)


 再度、穴があく勢いでまじまじと愛しい彼女の顔を見る。
 何度見ても飽きない。可愛い可愛い、俺だけのお嫁さん。 

 みーちゃんの体に毛布をかけて、


「おやすみ、みい」


 額にキスをし、


「……愛してるよ」


 囁きを夢の中へ落とす。

 彼女の髪から匂ってきた薔薇の匂い。
 これは、新しいシャンプーだろうか。


「……明日、飾っておこうかな」


 赤い薔薇。
 ベタすぎてくさいかもしれないけれど。

 そんなことを考えながら、明日の朝のためのお米をいだ。 





 私の旦那さまは、
 俺のお嫁さんは、

 へたれで、甘えん坊。
 小さくて、可愛い。

 明日も明後日も、来年も再来年も。きっと、

 私は、
 俺は、

 あの人のことが、世界で一番愛しくてたまらないんだと思う。


「……私も、愛してるよ。あっくん」





ーおわりー
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