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痴話喧嘩
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いつも仲良しな私たちですが、喧嘩だってします。いわゆる、痴話喧嘩。
例えば、今日。今。
事の始まりは、あっくんが私のシュークリームを食べたから。
「お風呂あがりに食べようと思ってたのに!」
頬を膨らませぷんすかと怒れば、あっくんは大きな体をちぢこませてうなだれる。
「ごめんなさい、みーちゃん……」
魔が差して、つい。
あっくんの言い訳に、怒りのボルテージがやや上がる。
「言い訳なんて聞きたくないもん!」
「うう、ごめんなさい……」
仁王立ちの私を見上げる双眸が、涙に潤んでぐらりと揺れた。
くっ……可愛い……!
駄菓子菓子! いえ、だがしかし!! 大好物をとられた恨みは恐ろしいのです。
それに、初犯ならまだしも、こんなことはこれで6回目!!
きちんと数えています! 6回目なんて、反省してないでしょう!!
「なんで食べたの?」
「お腹が減って……甘いものが食べたくて……」
だから私のシュークリームを、きちんと包みに名前を書いておいたシュークリームを、いつものじゃなくてちょっとお高いシュークリームを、食べた、とな?
ふつふつと、怒りのポットが沸きだす。
「もうっ! あっくんはいつもそう! 甘いものになると目がないんだから!」
「なっ……! 俺はみーちゃんしか見てないよ!」
「私だってあっくんしか見てないもん!」
今まで綺麗に正座していたあっくんは、立ち上がり涙を拭った。
そして、
「俺が一番好きなのはシュークリームじゃなくてみーちゃんだよ!」
と、自信満々に言い放つ。
思わずときめいたけれど、
「私の方があっくんを好きだよ!」
私も負けじと言い返した。
すると、あっくんはぶんぶんとかぶりを振る。
「俺の方が好きだよ!」
「私の方が好きだもん!」
「俺の方が大好きだよ!」
いっこうに引く気配のないあっくん。
「なにさ! だいたいね!」
人差し指の先をピッと伸ばし彼に向けた。
「あっくんはヘタレで甘えん坊で! すぐに泣くし抱きついてくるし! でもそんなところが可愛いし!」
私がそこまで言うと、あっくんは慌てた様子で言葉を遮る。
「みーちゃんだって! ちっちゃくて可愛くてふわふわしてて! お料理も上手だしいつも頑張ってるし! 大好きだよ!」
あ、あっくん……! そこまで想っててくれたなんて……! 嬉しい……!
感動に、思わず目尻が熱くなった。
「あっくんだって! かっこいいし背高いし!」
「みーちゃんだって可愛いくせに!」
「なにさ! もうっ!」
だめだ。今回も私の負け。
勢いよくあっくんに抱きつけば、彼は少しぐらついてから私を受け止めた。
腕に精一杯の力を込めると、あっくんも苦しいほどに私を抱きしめる。
「あっくん大好き!」
「俺も! みーちゃん大好き!」
喧嘩の始まりはなんだっけ……幸せだから、まあいっか。
私の緩む口元にあっくんがキスを落とし、お返しにと私も頬に口づけを送った。
「へへ、幸せ」
「俺も」
ふにゃりと笑うあっくんの頬は赤く染まっていて、今朝、彼が玄関に飾っていたツルコケモモを思い出す。
「あっくん、大好き」
「俺も、みーちゃんが大好き」
後でシュークリームいっぱい買ってくるね。
彼がぽつりと呟いた言葉で恨みと怒りが甦り、顎に向かって軽く頭突きをお見舞いする。
「痛い……っ! ひどいよみーちゃん! でも大好き!」
再び涙目になる彼に、教えてもらった花言葉を送りたくなった。
ツルコケモモ。花言葉は、傷ついた心を癒やす。
例えば、今日。今。
事の始まりは、あっくんが私のシュークリームを食べたから。
「お風呂あがりに食べようと思ってたのに!」
頬を膨らませぷんすかと怒れば、あっくんは大きな体をちぢこませてうなだれる。
「ごめんなさい、みーちゃん……」
魔が差して、つい。
あっくんの言い訳に、怒りのボルテージがやや上がる。
「言い訳なんて聞きたくないもん!」
「うう、ごめんなさい……」
仁王立ちの私を見上げる双眸が、涙に潤んでぐらりと揺れた。
くっ……可愛い……!
駄菓子菓子! いえ、だがしかし!! 大好物をとられた恨みは恐ろしいのです。
それに、初犯ならまだしも、こんなことはこれで6回目!!
きちんと数えています! 6回目なんて、反省してないでしょう!!
「なんで食べたの?」
「お腹が減って……甘いものが食べたくて……」
だから私のシュークリームを、きちんと包みに名前を書いておいたシュークリームを、いつものじゃなくてちょっとお高いシュークリームを、食べた、とな?
ふつふつと、怒りのポットが沸きだす。
「もうっ! あっくんはいつもそう! 甘いものになると目がないんだから!」
「なっ……! 俺はみーちゃんしか見てないよ!」
「私だってあっくんしか見てないもん!」
今まで綺麗に正座していたあっくんは、立ち上がり涙を拭った。
そして、
「俺が一番好きなのはシュークリームじゃなくてみーちゃんだよ!」
と、自信満々に言い放つ。
思わずときめいたけれど、
「私の方があっくんを好きだよ!」
私も負けじと言い返した。
すると、あっくんはぶんぶんとかぶりを振る。
「俺の方が好きだよ!」
「私の方が好きだもん!」
「俺の方が大好きだよ!」
いっこうに引く気配のないあっくん。
「なにさ! だいたいね!」
人差し指の先をピッと伸ばし彼に向けた。
「あっくんはヘタレで甘えん坊で! すぐに泣くし抱きついてくるし! でもそんなところが可愛いし!」
私がそこまで言うと、あっくんは慌てた様子で言葉を遮る。
「みーちゃんだって! ちっちゃくて可愛くてふわふわしてて! お料理も上手だしいつも頑張ってるし! 大好きだよ!」
あ、あっくん……! そこまで想っててくれたなんて……! 嬉しい……!
感動に、思わず目尻が熱くなった。
「あっくんだって! かっこいいし背高いし!」
「みーちゃんだって可愛いくせに!」
「なにさ! もうっ!」
だめだ。今回も私の負け。
勢いよくあっくんに抱きつけば、彼は少しぐらついてから私を受け止めた。
腕に精一杯の力を込めると、あっくんも苦しいほどに私を抱きしめる。
「あっくん大好き!」
「俺も! みーちゃん大好き!」
喧嘩の始まりはなんだっけ……幸せだから、まあいっか。
私の緩む口元にあっくんがキスを落とし、お返しにと私も頬に口づけを送った。
「へへ、幸せ」
「俺も」
ふにゃりと笑うあっくんの頬は赤く染まっていて、今朝、彼が玄関に飾っていたツルコケモモを思い出す。
「あっくん、大好き」
「俺も、みーちゃんが大好き」
後でシュークリームいっぱい買ってくるね。
彼がぽつりと呟いた言葉で恨みと怒りが甦り、顎に向かって軽く頭突きをお見舞いする。
「痛い……っ! ひどいよみーちゃん! でも大好き!」
再び涙目になる彼に、教えてもらった花言葉を送りたくなった。
ツルコケモモ。花言葉は、傷ついた心を癒やす。
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