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姉妹誘惑のお宿編

あの子、もう帰らないわよ③

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 は、は、は、と細かな吐息を繰り返す。
 なにかがおかしいと分かっていても、それは思考にならずに消えてしまう。
 どうして私は床に這いつくばって、自らお尻を高く上げているのだろう。とっくに股間はぺちょぺちょで、思い切り内股にしているからお尻が不安定に揺れて仕方ない。

「大丈夫、鵜鷺うさぎちゃん? ここ、すぐに溢れてくるよ。まだちょっとしか触っていないのに。感度がすごいね」

 そう囁く声も、きっとわざとだろう。生暖かい息を吐いて、そっとお尻の中心に当ててくる。
 まだ手錠は解いていない。足かせもだ。なのにどうしてこんなことになっているのかが分からない。

 ぬっ、ぬっ、と内側に入ってきて肩が跳ね上がる。
 分かっている動きだ。そこが弱いと分かっていて、丁寧に指先でなぞってくる。ぞりぞりと刺激をたっぷり与えながら。

「どうです、気持ちいいですかー?」

 両腕で体重を支えながら振り返る。どうにか呼吸を整えた大人っぽい顔つきで。

「ぜんぜんダメね。あなた、下手くそだわ」
「んー、鵜鷺ちゃん、マゾっ気があるよね。どうして欲しいのかすぐに伝わるし……」

 ぐっと肩を掴まれて上半身を起こされる。黒いネグリジェの内側は乳房がだいぶはだけており、ゆさっと大きく揺れた。
 目の前を通り過ぎてゆくのは徹の両腕で、いまは手枷をつけている。だから拒もうと思えば拒めるのに、己の股間に近づいてゆくのをじっと眺めることしかできない。

 は、は、と熱い息を吐いていたとき、かぷんと耳たぶを食まれた。

「ウッ!」
「鵜鷺ちゃん、分かる? もうすぐオマンコがとろとろになるよ? あーって声がたくさん出るし、たぶん何度もイクって言う」

 ぼそお、と耳の奥まで震わせるような声だ。唇がわなないて、さらに息が熱くなるような声だとも思う。秘部のように唾液がとろりとしてゆくのが分かった。

 おかしい、彼は経験の乏しい男のはずなのに。
 だけどセックスを知り尽くしているように触れてくるし、先ほどからずっとヒクヒクする。一番敏感なところも、お腹の奥も。

「が、がんばるのね、あなた。でもいくらそんなことをしても手錠は解かないし、茜の居場所も教えない。ふふ、可哀そうに」

 冷たい瞳でそう伝えたのに、彼は構わずに「ほら、見えちゃう」と言い、ネグリジェの端をゆっくりとめくってゆく。そうして彼と一緒にじっと眺めていると、愛液で己の股間に張りついた下着が現れて、ヒクヒクとまた震えた。すごく敏感なところが。

「透け透けだ。ほら、オマンコが透けている。ちゃんと端を自分で持つんだよ。そうしたらすごく気持ちいいことをしてあげるから」

 ぼそ、ぼそ、と囁かれると小刻みに肩が震えてしまう。そうだ、こうして私はいつの間にかリードを奪われていた。いつの間にか汗で衣服がぺったりと張りついており、胸の先端は苦しいと思えるくらい膨らんでいる。

 今もまたそうで、ついっと私の両手は勝手にネグリジェの端をつまんでいた。
 いい子だと耳元に囁かれて、そして宣言通りに遠慮なくネチネチと愛撫された。

「うッ、うッ、ウーーッ!」
「ほら、ゆっくり息をして。涎が垂れてもいいから、ちゃんと気持ちいい声を出そう。みっともなく」

 出せるわけがないと首をぶんぶん横に振った。
 だけど、ぬっち、ぬっち、と表側を指はなぶり、そしてぬるんと粘液たっぷりに入り込む。
 ああ、バレてる。気づかれている。そこの、そこの弱いトコがほじられっ、て……っ!

「ンうううーーっ! あっ、あっ、駄目っ、駄目っ! そこ駄目なのっ、もう触っちゃ駄目えッ!」

 ぬ゛るんっ、と指先がしっかりと押さえつけてきて、私は真上を向くまで仰け反った。親指で突起を押されてしまい、震えた膝から力が抜けてしまうと床を打つゴンという音が響く。

「~~~……っ!!」
「ここ、いじろっか。ゆーっくり、ゆーっくり、イこ?」
「やっ、やら……っ! やっ……うー、あっ! あンッ! あンッ! アッ!」

 鼻にかかった女の声を半ば強制的にあげさせられていた。気がついたら徹の肩に後頭部を乗せて、セックスしているくらい勝手に腰が揺れている。
 ひっ、と声を漏らしたまま、そして私は全身を大きくぶるんとわななかせる。二度、三度と繰り返したときに、また話しかけられた。

「おー、イッてるイッてる。どう、気持ち良かったでしょ、鵜鷺ちゃん?」

 ひっ、ひっ、とまともに呼吸もできないなか、男はなおもボソボソと耳の奥に囁いてくる。相手が年下というのが悔しくて、ごくんと唾を飲みこんでから振り向いた。

「まあ、相馬君のほうが上手だったわね」

 しかし爪先立ちのガニ股という姿では、あまり説得力も無かったろう。やはり徹の表情は変わらず「そっかぁ」と呟いてから、ジーッと己の股間の金具を鳴らす。
 勢いよく溢れてきたものに下腹部をペチンと鳴らされて、鵜鷺は己の股間を覗き込む姿勢からしばらく戻れなかった。

 凶悪さを感じるほど怒張したそれは、へそのあたりまである。つまりここまで届くからと暗に告げており、勝手に溢れる己の愛液で濡れてゆく。

 男の象徴であるそれは、とても性的な形をしていた。極めて効率的に女を気持ちよくさせる形を示しているし、段差など指一本分もあるものだから目が離せない。
 気づいたらたくさんの汗が流れていて、フローリングにしたたっていた。

「どうかなぁ、これなら気持ちいいと思う?」

 背後から抱きすくめられて、乳房をコネられながら囁かれた。だけどなかなか返事ができない。浅く早い呼吸が加速して、体温はさらに上がってゆく。
 ピンピンと小刻みに乳頭を指で弾かれて、ぶるうっと上半身が震えた。

「~~~……っ!」
「聞こえてる、鵜鷺ちゃん?」

 はーー、と気を落ち着かせるために息を吐く。その呼吸さえ見透かされているのかピンピンとまた指で弾かれて、痙攣によって息と思考を乱された。
 やっと確信した。彼は意図的に私の心を乱している。

「あっ、あー……っ! きっ、聞こえて、るわっ!」
「反応、すごいね。ここ弱いんだ。おっぱい、もっといじろっか」

 きゅっと乳頭をつままれて、うぐっ!と呻きながら奥歯を噛む。そのままコリコリと刺激されて、全身に甘痒い感覚が走る。密着した背筋から絶え間ない痙攣が男に伝わった。

 なんでだろう。すぐにバレる。コリコリの刺激がどんどん強く甘くなってきて、気づいたら汗だくの両手がフローリングにぺたんと突いていた。
 そのまま枕にするよう額を乗せると、いつの間にかまた尻を突き出す姿勢になっていた。

 はー、はー、という呼吸は熱っぽくて、いつの間にか唾液がたくさん垂れていた。みっともないと思いながら、ちらちらと後方に視線をやる。とっくに頬は上気しており、たぶん熱っぽい視線になっていたと思う。

 ――続きをしたいなら、これを先にどうにかしなくちゃ。

 そう言うようにただの会社員である徹は手首を見せている。無理して動かしたせいで赤く腫れており、ボーッとした瞳でそれを見る。

「だ、駄目ぇ、外したらいけないの……」
「そっか、なら仕方ない。こっちはおあずけだ」

 だめぇ、だめぇ、とお尻を振る。大きなお尻を揺らすのは年を考えると恥ずかしい。だけど先ほどたっぷり想像してしまった。間近で見てしまったせいで、一番奥まで容赦なく貫かれてしまうところを。

 予感があったのだ。
 たぶんものすごく気持ちいい思いをすると。
 だからお腹の奥がキュンキュン鳴っていて、もうどうしようもないくらい苦しい。

 だから彼から手を引かれ、成されるまま膝の上に横にされて、ぺちんぺちんとお尻を叩かれても甘えた女声をやめられない。

「やあん、やあんっ」
「ほら、この手枷を解いて、茜ちゃんの居場所を教えるんだ。そうしたらアンアンって気持ちいい声を出せる。とろーって溢れるよ。ここから恥ずかしい液体がたくさん出て、頭のなかまでとろーってする」

 あお、お……と呻いた。
 たっぷり想像したせいで、たぶんサカってしまったのだろう。じっとりと全身で汗をかいて、そして尚も囁いてくる声に欲情する。そう、なぜか欲情してしまうのだ。思考がどんどん霞みがかって、あのことしか考えられない。
 耐えきれず思いきり身体をねじると、ぬるぬるの太ももがこすれ合って水音を立てた。

「鵜鷺ちゃんはエッチだから、たぶんずっとイキ続ける。ここがずっとビクビクして、はしたない言葉も平気で口にするようになる」

 う、う、と下腹部を撫でられるたび強制的に息を吐き出す。
 はーー、と息を吐いて思考を整えようとしたときに、また乳頭をつままれた。

「アッ、ンッ!」
「ほら、集中して。ここに挿入はいっているのを想像して。一番気持ちいいところをゾリゾリとこすってきて、お尻をパンパン鳴らされているのを考えるんだ」

 そう脳に直接届くように囁かれ、内股のところを撫でられて、どぷっと愛液が溢れた。こんな身体の変化など味わったことがないので、びっくりしたというのが正直な気持ちだ。

 そう、そうだ。
 思えばいつの間にか身体の求めるままに動いている。呼吸を乱されるし、いつもすごくいやらしい言葉で囁いてくる。
 勝手に片脚が持ち上がって、ピンと爪先を伸ばしたのはもう身体が受け入れてしまっているのだ。交尾がしたいという訴えなのだと今さらに気づいた。

「いい子だ、いい子だ。もうすぐこのお尻をパンパンって鳴らされる」

 不意打ちのようにお尻を叩かれて、ビクッと全身が震えた。気づいたら尿道から溢れるものがあり、またもびっくりして瞳を丸くした。

「あ、あ、あ!」
「感度が凄いね。想像だけでこうなるなんて。鵜鷺ちゃんならずっとオーガズムできるよ。ほら、見て、すごくエッチな身体になってる」

 ハーハーと湿度の高い息を吐きながら、言われるままに己の身体を見下ろす。するとこぼれかけの乳頭は見たことないほど硬くなっており、汗でぬるぬるに輝いている。
 いつの間にか両脚ともしっかりと開いており、下腹部が絶えず痙攣している。波打つそれは艶めかしく、汗と愛液で光沢をまとっている太ももは……ごくっと再び喉を鳴らした。
 後ろから抱きかかえる形で下腹部をコネられながら、また耳たぶを食まれた。ちょっと痛いくらいが、すごく良かった。全身がぶるんっとわななくほどに。

「うわ、すっごいマゾ顔。鵜鷺ちゃんに鏡で見せてあげたい。耳まで真っ赤にさせて、さっきからじいっと見つめてきて目を離さないんだ。ほら、キスできる?」

 こくん、こくん、と小刻みに何度も頷く。
 そして舌を覗かせながら、むぢゅっと唇全体を重ね合わせた。ぺろぺろと口内を舐めてしまうのは、たぶん性的な興奮が高まり過ぎたせいだ。

 ――舌、美味しっ!

 そんなバカなことを思う。
 ぬるんと全体を舐められると、背筋がゾッゾッと震える。興奮と期待と感度が高すぎて、小さな刺激だけで達してしまいそうだった。

 雌犬という言葉がある。
 漫画などの創作でよく見かける隠語だ。
 あんなのはフィクションだから許されることであり、特に女性にとって鼻で笑う表現だろう。女性蔑視もはなはだしく、もう少し時代が進めば規制されるのは確実だろう。

 でも、いまはまさにその状態だった。
 ぺろぺろと唾液たっぷりに己から舐めており、とろんとした瞳から戻ってこれない。
 冷静になろうとしても、刺激がどんどん強くなる。こんなの服従を示すように両脚を開いてしまうし、ときおり乳首を触られるだけで仰け反ってしまうだろうに。

「あッ! ウッ! ちくびぃ……っ!」

 そんな普段言わないことまで口にして、うふぅーと奥歯を噛みながら熱っぽい息を吐く。
 なんだっけ、なにをしようとしていたんだっけ。彼になにを伝えるはずで、私は束縛したんだっけ。
 そうあやふやな記憶を呼び起こそうとしているとき、すぐ耳元で囁かれた。

「じゃあ、そろそろ……しよっか」
「ど、どうぞ」

 ぎゅっと己の両ひざを手で支えて、脚をいやらしく開きながらそう答える。いまアレをされたらどうなるか分からないが、もう下腹部の奥がキュンキュン鳴りつづけていて苦しいくらいだった。

 彼の手が、ゆっくりと股間に伸びてゆく。もうすぐチャックの音を鳴らして、さっきのアレを出すだろう。
 けれど、がしゃんと手錠が鳴って……それがすごく邪魔だと感じる。

 ハーハーと荒い息を吐きながら、鵜鷺はじっと手錠を見つめた。


 ◆


 どっす、と乱暴にメットをかぶせられた。
 痛いくらいだったが文句は言わない。弟の克樹は怒りで爆発寸前の顔をしており、それでも「乗れ!」と言ってくれたのだ。

 やはり克樹は男だと思う。しなければいけないことを最優先にして、それ以外をすっぱりと忘れてくれる。
 茜ちゃんを愛する男でもあり、いまはこれほど頼もしい仲間はいない。
 後部座席に腰を置くと、すぐにエンジン音を吹かして坂道を下り始める。タイヤが砂利を弾き飛ばす音を聞きながら弟に声をかけた。

「急げ、茜ちゃんがすぐ近くで捕まってる!」
「ふざけんなよ、クソが! 落っこちるなよ!」

 オンッと前輪をわずかに浮かせて、伊豆街道を直進する。まだ大粒の雨が降っているけれど、気にせず携帯を取り出すと周囲の地図をモニターに広げてゆく。
 先ほど聞いた住所を入力すると、目的地にカーソルが立った。

「見ーつけた。ちょっと千夏ちゃんに電話する。警察を呼んでもらおうぜ」
「だな。茜の携帯がまだ手元にあるなら、もし嘘の住所だったとしても探し出せる」

 さて、それはどうだろう。
 ごく短時間で成したとはいえ、鵜鷺さんはどっぷりと性欲のなかにいた。たぶんあれは女性にしか分からないだろうけど、一種の催眠術に近いのではと思う。
 部屋から出る間際、ネグリジェ姿のままソファーに突っ伏して喘いでいたのを思い出すが……深く考えるのはやめにしよう。緊急事態を伝えるために、無理やりメットの内側にスマホを入れた。

 女を守るとき男は強くなるというのは本当らしい。
 腹が立つだけでなく、ブッ殺してやりたいという思いだけが強くなる。
 荒い雨を浴びながら、後部座席を掴む腕がミシッと音を立てた。
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