月明かりに照らされて……

月明かりに照らされて……

　真っ暗な部屋。
　カーテンは閉め切っている。そこから漏れる僅かな月明かりだけが、私の白い身体を照らしている。

　ここには私とあなたの二人きり。
　黒いワンピースはさっき脱ぎ捨てた。
　私はあなたの心に届かないまま、あなたの首に腕を回す。


　さあ、抱きしめて、その腕で。
　夜が明けるまであなたは私だけのモノ……。


　目線が交錯する。

　あなたの表情に濁った情熱が顔を覗かせる。
　あなたは優しく、私の背中に腕を回した。


　そう、そのまま強く抱き寄せて。


　そう願った私の瞳に、あなたの中の澄んだ感情が映る。
　私じゃない、他の誰かへの澄んだ感情……。

　そして、あなたは私の身体に触れた手を離す。


　ああ……
　ここまでしても、私は選んでもらえないの……？


　私は澄んだ感情で、縋るようにあなたに身体を押し付ける。
　けど、あなたの鼓動は高鳴りはしない。
　そのとき私は気付いてしまった。

　あなたの澄んだ情熱はもう他のヒトのモノなのね……。


　真っ暗な部屋のドアが開く。
　窓から漏れた月明かりが濡れた頬を照らした。