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【第2章】異世界再誕

【22話】擬似的不死

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 カレンを担いで馬車に戻った。
 俺は川で体の血を洗い流したが、それでも服についた血とカレンの血みどろの姿はどうにもできず、待っていた兵士をひどく驚かせた。
 正直、記憶が曖昧だった。
 ハッキリ覚えているのは1匹目のマンティスラプターを見つけてソイツを倒したところまで。あのとき〈治癒キュア〉を使って、それで……。
 その後の記憶に残っているのはモンスターの肉を裂いていく感触と、高揚感と、頭に響く誰かの笑い声。

「コウ……さん?」

「カレン、目が覚めたか」

「よかった……元に戻ったんですね」

「元に?」

「覚えて、ないんですか?」

 尋ねながら、カレンは眉を顰めた。

「俺は渓流でモンスターを倒していた、けどそのときの記憶が朧げなんだ」

「そうなんですね……」

「一体何があったんだ?」

 俺の問いかけにカレンは俯いた。

「……あの後のコウさんは、いつもと様子が全然違って、手足がもげても、首を刎ねられても、高笑いをしながら剣を振り続けて」

「ちょっと待ってくれ。、だって?」

「ええ、コウさんは明らかに何度も死ぬような怪我を負ってました。けど、しばらくすると再生するんです。あんな状態じゃ〈治癒キュア〉は使えないはずなのに」

 そうだ、首がない状態でスキルを発動することなんかできない。
 なぜ? 他のスキルが働いた?
 いや、そんなスキル、俺にはない。
 ……違う、そうか!

「クールタイムか……!」

 そうだ、スキル発動から間を置かずに、もう一度スキルを使えば、2回目のスキルが発動するまでには待機時間、クールタイムが発生する。
 そして、「待ち状態」のスキルはクールタイム経過後
 半狂乱になりながら、戦いの最中に意図せず〈治癒〉を重ねがけしていたんだ。それが死後に自動発動した。
 本当にそうだとしたら、俺はSPスキルポイントが尽きなければ不死身だ。

「けど、そうやって傷つきながら戦うたびに、コウさんドンドンおかしくなっちゃって。まるで自分が傷つくのを喜んでるみたいに。笑いながら敵を殺して」

 カレンは目に涙を浮かべた。

「カレン……」

「もう、あんな無茶な戦い方はやめてください。おれじゃコウさんが壊れてしまう」

「……ありがとう」

 必死に訴えかけるカレンが、本気で俺の身を案じてくれていることが分かった。
 けど、俺は……。


  ♢♢
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