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【第2章】異世界再誕

【20話】リ・バース

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 カレンに〈治癒〉スキルの習得を手伝ってもらい無事習得した。
 習得条件は「回復ポーションの素材を集めろ」という「依頼達成型」だったので比較的簡単だった。

「急に『治癒魔術を教えて欲しい』なんてどうしたんですか? やっぱり私が不甲斐ないから自分で……」

 カレンは俯きがちにか細い声で尋ねた。

「違うよ。そういう訳じゃない。これは何よりも自分が死なないためさ」

「そう、ですか。……コウさんはこれからどうされるんですか? やっぱりまた〈迷宮〉に挑むんですか?」

「ああ……、王様にもう後はないって言われちゃったしね。生きる為にも行かないと」

「そんな……、ごめんなさい。コウさんは何も関係ない、私たちの国の問題なのに」

「カレンが謝ることじゃないさ」

「コウさん……」

 カレンは今にも泣き出しそうな顔で俺を見つめた。俺のためにこんな顔をしてくれる人がいる。それだけでちょっと心が軽くなった。

「カレン、ありがとう」

「え? なんでですか?」

「まあ、色々さ。じゃあそろそろ行くよ」

「ま、待ってください。どこへ行くんですか?」

「今必要なスキルを習得しに、ね」

「じゃあ私もついて行きます! この国の為に頑張って下さるんですから、私もお手伝いします」

「!……ありがとう、それじゃあ頼むよ」

「はい!」

 こうして俺はカレンと共に残り2つのスキルを習得した。


  ♢♢


 習得したスキルを試すため、俺とカレンはいつだかの実践演習で訪れたマンティスラプターの住処に来ていた。

「向こうに1匹いる。はぐれだ」

 〈迷宮〉から戻って以来、モンスターを見ると体がすくむ。
 そもそもゲームと異世界の大きな違いは、異世界では「死」が隣り合わせということだ。だから敵と向かい合うと怖いし、体がすくむのだ。
 以前の俺とフレッドはそのことを理解していなかった。幸いにも異世界をゲームの延長と考え、「死ぬ」ということを意識しなかったからだ。
 けど今は違う。俺は〈迷宮〉で「死」と「恐怖」を知った。

 だから俺は新しくを習得したのだ。

「《恐怖耐性》、《痛覚無効》!」

 小刻みに震えていた足の震えが収まり、恐怖でざわついていた心が凪いでいく。そして残ったのは非現実感とフレッドを殺したモンスターに復讐したいというドス黒い欲求のみだった。
 心に蓋をされ、非現実感に包まれて浮遊感すら覚えた。足取りは軽やかだった。スキップするようにマンティスラプターに近づいていき……、

「死ねぇ!!!!」

 後ろから一撃を加える。
 マンティスラプターが悲鳴をあげる。
 まだ息がある。
 俺はさらに敵の前に回り込んでもう一撃を加える。マンティスラプターは絶命した。

「コウさん、向こうからまた来ました! 3匹います!」

 カレンが指差す方向からは、マンティスラプターが迫ってきていた。

「モンスターの癖に仲間意識か? 生意気なんだよ」

 俺は向かってくるマンティスラプターに単身飛び込んで、無闇に剣を振るった。
 恐怖は鈍麻され、ヤツらの鎌が体を掠めても何も感じない。傷が付いても痛みもない。
 ただ1匹、また1匹と剣撃を浴びせる。

 と、そのとき後方のマンティスラプターが振るった鎌が俺の右腕を切り裂いた。
 前腕が切り飛ばされ、宙を舞った。
 血飛沫が上がる。
 大怪我をした体がアドレナリンを放出する。
 けれど、痛みはない。

「コウさん!」

 後ろからカレンの悲痛な声が聞こえる。
 しかし、

「⦅治癒キュア⦆」

俺がスキルを発動すると、前腕部を失った右腕は光に包まれ、切断面の方から見る間に再生していき、ほんの数秒ほどで元通りになった。
 それでも大怪我をしたと錯覚した体はアドレナリンをドバドバと出し続ける。

 心の奥から蓋をしていた感情が吹き上がってくる。
 興奮して気分がハイになっているのが分かる。
死の淵にいながら、死を感じない恍惚感。

「ハァーッハー!!!!!!!」

 誰かの笑い声が頭に響いてくる。
 けど、そんなことはどうでもよかった。
 俺は思うままに剣を振るい続けた。
 
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