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【第1章】異世界転移
【5話】カレン・エマーソン
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広大な大広間、玉座に座る王が再び口を開いた。
「勇者のお二方もお疲れでしょうし、詳しい話は明日にしましょう。お部屋を用意しておりますので、是非そちらでお寛ぎください」
王が合図をすると傍から侍女が進み出て、会釈をしながら「ご案内します」と言った。
「王よ、少しよろしいでしょうか?」
王の右側に控えていた甲冑を着た大男が言った。
「おお、ランドルフ。申してみよ」
「ありがとうございます、陛下。これは提案なのですが、今後の事を考え勇者様達のお側に一名、私が推薦する者を世話役として置かせて下さい」
「ほう……して、その者とは?」
「エマーソン特別任官、前へ」
促されて兵士の中から女性が一人、前に進み出た。服装が他の兵士とは全然違っていた。
「彼女は特別任官のカレン・エマーソンです。治癒魔術に長けており、勇者様方に不測の事態が起ころうとも万全の対応が可能です」
紹介を受けて跪いていたカレンが顔を上げた。
「ふむ、治癒魔術か。よかろう、其の者を勇者様方の側付きに任ずる」
「はい!」
「よし、では今日のところは今度こそここまでとしましょう。お二人ともゆっくりお休みください」
王はそう告げると大広間を後にしていった。大勢いた周りの人間もゾロゾロと奥へ引っ込んでいった。
王と話していた大男は一言、「エマーソン、あとは任せたぞ」とだけ告げて去っていった。
大広間には俺たち二人とカレンと侍女一人だけが残された。
「勇者様、今日からお二人のお世話をさせて頂きます、カレン・エマーソンです。よろしくお願いします」
カレンは俺たちに深々と頭を下げた。
「ああ、よろしく、エマーソンさん」
「エマーソン『さん』なんてそんな! 『カレン』か『エマーソン』とお呼びください」
「おう、よろしく、カレンちゃん!」
フレッドは早速カレンの名を呼んだ。コイツのこの馴れ馴れしさ、もとい人当たりの良さはむしろ尊敬してしまう。
「よろしく、カレン」
挨拶を交わし終えたところで、侍女が「よろしいでしょうか?」と声を掛けてきた。
「では、お部屋へ案内いたします」
そう言って侍女は俺たち二人を先導して歩き始めた。俺たちとカレンはその後に続いた。
夜伽の話題→否定→緊張解ける→元の世界の質問
「なあ、俺たちに「様」なんて付けなくていいぜ? なんだかむず痒いや」
フレッドが唐突にカレンに言った。
それを聞いてカレンは慌てた様子で、
「そ、そんな! 勇者様をそのように気軽にはお呼びできません!」
「いや、フレッドの言う通り、普通に呼んでくれた方がありがたいな」
そう聞くとカレンは少しばかり押し黙って、また顔を上げて答えた。
「うぅ……わかり、ました。コウさん、フレッドさん」
「おう、よろしく!」
そう答えると、フレッドは俺の側に寄ってきた。そして顔を近づけて耳を貸せとジェスチャーしてきた。
「おい、コウ。カレンちゃんめちゃくちゃ可愛いじゃん。さすが異世界、サービスいいぜ!」
フレッドは少し離れて歩くカレンに聞かれないように俺に耳打ちした。
「なんだよ、いきなり」
俺も小声で返事をした。
確かにカレンは美人だ。少し幼さの残り顔立ちだが、目鼻立ちざハッキリしている。
「どうかされましたか?」
カレンが尋ねてくる。
俺はフレッドに言われて改めてカレンの容姿をよく見た。背中まで伸びる明るめな粟色の髪、細身な体、色白な肌、……うん、文句なく美人だ。
「いや、なにも!」
慌てて答えて少し声が上ずる。
「ふふ、そうですか。困ったことがあればなんでも言ってくださいね。ランドルフ様から仰せつかっていますから。雑用でも話し相手でも、よ、夜伽のお相手でもなんでも……」
カレンは顔を真っ赤にして言った。
「よ、よよよ、夜伽なんてそんな! け、結構です!」
「よとぎ??」
フレッドが素っ頓狂な声を発した。
カレンは赤面したまま俯いてしまった。
「着きました。こちらのお部屋です」
侍女が部屋の扉の前で立ち止まって言った。
「ベッドメイクなどは済んでおります。では、おやすみなさいませ」
そう言って侍女は去っていった。
「では、私もここで……。おやすみなさい」
カレンは俯いたまま、足早に去っていった。
「勇者のお二方もお疲れでしょうし、詳しい話は明日にしましょう。お部屋を用意しておりますので、是非そちらでお寛ぎください」
王が合図をすると傍から侍女が進み出て、会釈をしながら「ご案内します」と言った。
「王よ、少しよろしいでしょうか?」
王の右側に控えていた甲冑を着た大男が言った。
「おお、ランドルフ。申してみよ」
「ありがとうございます、陛下。これは提案なのですが、今後の事を考え勇者様達のお側に一名、私が推薦する者を世話役として置かせて下さい」
「ほう……して、その者とは?」
「エマーソン特別任官、前へ」
促されて兵士の中から女性が一人、前に進み出た。服装が他の兵士とは全然違っていた。
「彼女は特別任官のカレン・エマーソンです。治癒魔術に長けており、勇者様方に不測の事態が起ころうとも万全の対応が可能です」
紹介を受けて跪いていたカレンが顔を上げた。
「ふむ、治癒魔術か。よかろう、其の者を勇者様方の側付きに任ずる」
「はい!」
「よし、では今日のところは今度こそここまでとしましょう。お二人ともゆっくりお休みください」
王はそう告げると大広間を後にしていった。大勢いた周りの人間もゾロゾロと奥へ引っ込んでいった。
王と話していた大男は一言、「エマーソン、あとは任せたぞ」とだけ告げて去っていった。
大広間には俺たち二人とカレンと侍女一人だけが残された。
「勇者様、今日からお二人のお世話をさせて頂きます、カレン・エマーソンです。よろしくお願いします」
カレンは俺たちに深々と頭を下げた。
「ああ、よろしく、エマーソンさん」
「エマーソン『さん』なんてそんな! 『カレン』か『エマーソン』とお呼びください」
「おう、よろしく、カレンちゃん!」
フレッドは早速カレンの名を呼んだ。コイツのこの馴れ馴れしさ、もとい人当たりの良さはむしろ尊敬してしまう。
「よろしく、カレン」
挨拶を交わし終えたところで、侍女が「よろしいでしょうか?」と声を掛けてきた。
「では、お部屋へ案内いたします」
そう言って侍女は俺たち二人を先導して歩き始めた。俺たちとカレンはその後に続いた。
夜伽の話題→否定→緊張解ける→元の世界の質問
「なあ、俺たちに「様」なんて付けなくていいぜ? なんだかむず痒いや」
フレッドが唐突にカレンに言った。
それを聞いてカレンは慌てた様子で、
「そ、そんな! 勇者様をそのように気軽にはお呼びできません!」
「いや、フレッドの言う通り、普通に呼んでくれた方がありがたいな」
そう聞くとカレンは少しばかり押し黙って、また顔を上げて答えた。
「うぅ……わかり、ました。コウさん、フレッドさん」
「おう、よろしく!」
そう答えると、フレッドは俺の側に寄ってきた。そして顔を近づけて耳を貸せとジェスチャーしてきた。
「おい、コウ。カレンちゃんめちゃくちゃ可愛いじゃん。さすが異世界、サービスいいぜ!」
フレッドは少し離れて歩くカレンに聞かれないように俺に耳打ちした。
「なんだよ、いきなり」
俺も小声で返事をした。
確かにカレンは美人だ。少し幼さの残り顔立ちだが、目鼻立ちざハッキリしている。
「どうかされましたか?」
カレンが尋ねてくる。
俺はフレッドに言われて改めてカレンの容姿をよく見た。背中まで伸びる明るめな粟色の髪、細身な体、色白な肌、……うん、文句なく美人だ。
「いや、なにも!」
慌てて答えて少し声が上ずる。
「ふふ、そうですか。困ったことがあればなんでも言ってくださいね。ランドルフ様から仰せつかっていますから。雑用でも話し相手でも、よ、夜伽のお相手でもなんでも……」
カレンは顔を真っ赤にして言った。
「よ、よよよ、夜伽なんてそんな! け、結構です!」
「よとぎ??」
フレッドが素っ頓狂な声を発した。
カレンは赤面したまま俯いてしまった。
「着きました。こちらのお部屋です」
侍女が部屋の扉の前で立ち止まって言った。
「ベッドメイクなどは済んでおります。では、おやすみなさいませ」
そう言って侍女は去っていった。
「では、私もここで……。おやすみなさい」
カレンは俯いたまま、足早に去っていった。
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