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【第1章】異世界転移
【4話】異世界転生
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強烈な浮遊感を感じて目を覚ました。
頬の下には硬い床があった。寝ぼけながら「ベッドから落ちたか?」などと考えていると周りが騒がしいことに気付いた。
「おお! 召喚は成功だ! 勇者様が目覚められたぞ!」
知らない声が聞こえてきた。
俺は自分のベッドで寝たはずだ。
起き上がって声の方を見ると、俺がいたのは見たことのないだだっ広い大広間のようなところで、目の前には分かりやすいくらい王様っぽいヤツがでんと座っていて、その周りには黒いローブを着た魔術師っぽいヤツらと沢山の兵士が立っていた。
「ん、勇者? なんじゃそりゃ?」
隣から声がした。
見てみるとそこにはフレッドがいた。
視線に気づいたフレッドもこちらを見た。
「おう、コウ。昨日はフェニックス倒して……その後どうなったんだっけ?」
フレッドはまだ寝ぼけている様子で尋ねてきた。
「なっ、なんと!? 『フェニックスを倒した』だって!!?」
いきなり王様っぽいヤツが立ち上がって驚きの声を上げた。それを聞いて周りの兵士たちもザワつき始めた。
「殿下、落ち着いて下さい」
隣に控えていた黒ローブたちの先頭に立っているヤツが言った。
それを聞いて王様っぽいヤツはハッと我にかえって玉座に座り直した。
「ゴホン、これは失礼した勇者様方。私はドラゴ王国国王シーラ=イブン・ゴルドー3世と申します」
王様っぽいヤツはやはり王様だった。
しかし、勇者? 王国? いつの間にかゲームにログインしたのか?
俺は状況を確かめるために「ウィンドウ」を開こうとした。すると、「ステータス」を開くことは出来た。しかし、その「ウィンドウ」には「設定アイコン」も「ログアウトアイコン」も存在しなかった。
どういうことだ?
「お二人のお名前をお聞きしてもよろしいですかな?」
王様が尋ねてきた。
「俺の名前は、ふじ……いや、『コウ』です」
「俺はフレッド! よろしく!」
「ふむ、コウ様にフレッド様、よろしくお願いします。我々はある『お願い』があって、貴方がたをこの地に召喚いたしました」
「お願い?」
「詳しくは魔術顧問から説明いたします」
王様が手振りで合図をすると、さっきの黒ローブのリーダーが一歩前に進み出た。
「私は王国魔術顧問のヨーダ・ゴートと申します。突然ですが、我々はある問題に対処するため異世界より貴方達を召喚いたしました」
「え、マジで!? 異世界転生ってヤツじゃん! すげー!」
「いや、死んでないから転生じゃないだろ」
興奮を隠しきれないフレッドに思わずツッコミを入れる。
「ゴホン、ともあれ、どうか『お願い』を聞いてくださいませんか?」
「お願いとは?」
「この国を救って欲しいのです」
「おおー! それっぽいな!」
フレッドの反応が良い。
というかさっきからテンション高いな、コイツ。
「『国を救う』っていうのはつまり何をすればいいんですか?」
「……あの、呼び出しておいてなんですが、あまり驚かないんですね? 飲み込みが早過ぎでは?」
「ああ、ええ。私たちの世界ではよく見ますから」
「……異世界召喚を?」
「はい」
傍にいた黒ローブ達が口々に「異世界はそこまで魔術が発達しているのか!」「なんてハイレベルなんだ!」なんて言っている。
……まあよく見るのは嘘ではない。マンガやゲームの中でだが。
「恐れ入りました……。『国を救う』というのがつまり何か、というお話でしたね。具体的には、来たる魔物の軍勢からこの国を守って欲しいのです。今から7度目の満月を迎えた時、奴らは活性期に入ります。そのとき大挙して攻め込まれれば我が国はひとたまりもない」
「つまり、俺達が戦うのは結構先ってこと?」
「いえ、私達が望むのは防衛戦ではありません。勇者様方には〈迷宮〉を攻略していただきたい」
〈迷宮〉? それは〈デュプリケート〉と同じ言葉だが偶然か?
「〈迷宮〉攻略者が手に入れる強大な力は魔物への大きな『抑止力』となります。〈迷宮〉攻略者がいる国というだけで魔物達は簡単には寄り付かなくなるでしょう」
〈迷宮〉を攻略して手に入れる力とはボスのドロップのことだろうか? それとも別の何かだろうか?
「お願いです。どうかこの国のため〈迷宮〉を攻略していただきたい!」
俺はそろそろ話の展開についていけなくなり、この夢がいつ醒めるのかを考え始めていた。
頬の下には硬い床があった。寝ぼけながら「ベッドから落ちたか?」などと考えていると周りが騒がしいことに気付いた。
「おお! 召喚は成功だ! 勇者様が目覚められたぞ!」
知らない声が聞こえてきた。
俺は自分のベッドで寝たはずだ。
起き上がって声の方を見ると、俺がいたのは見たことのないだだっ広い大広間のようなところで、目の前には分かりやすいくらい王様っぽいヤツがでんと座っていて、その周りには黒いローブを着た魔術師っぽいヤツらと沢山の兵士が立っていた。
「ん、勇者? なんじゃそりゃ?」
隣から声がした。
見てみるとそこにはフレッドがいた。
視線に気づいたフレッドもこちらを見た。
「おう、コウ。昨日はフェニックス倒して……その後どうなったんだっけ?」
フレッドはまだ寝ぼけている様子で尋ねてきた。
「なっ、なんと!? 『フェニックスを倒した』だって!!?」
いきなり王様っぽいヤツが立ち上がって驚きの声を上げた。それを聞いて周りの兵士たちもザワつき始めた。
「殿下、落ち着いて下さい」
隣に控えていた黒ローブたちの先頭に立っているヤツが言った。
それを聞いて王様っぽいヤツはハッと我にかえって玉座に座り直した。
「ゴホン、これは失礼した勇者様方。私はドラゴ王国国王シーラ=イブン・ゴルドー3世と申します」
王様っぽいヤツはやはり王様だった。
しかし、勇者? 王国? いつの間にかゲームにログインしたのか?
俺は状況を確かめるために「ウィンドウ」を開こうとした。すると、「ステータス」を開くことは出来た。しかし、その「ウィンドウ」には「設定アイコン」も「ログアウトアイコン」も存在しなかった。
どういうことだ?
「お二人のお名前をお聞きしてもよろしいですかな?」
王様が尋ねてきた。
「俺の名前は、ふじ……いや、『コウ』です」
「俺はフレッド! よろしく!」
「ふむ、コウ様にフレッド様、よろしくお願いします。我々はある『お願い』があって、貴方がたをこの地に召喚いたしました」
「お願い?」
「詳しくは魔術顧問から説明いたします」
王様が手振りで合図をすると、さっきの黒ローブのリーダーが一歩前に進み出た。
「私は王国魔術顧問のヨーダ・ゴートと申します。突然ですが、我々はある問題に対処するため異世界より貴方達を召喚いたしました」
「え、マジで!? 異世界転生ってヤツじゃん! すげー!」
「いや、死んでないから転生じゃないだろ」
興奮を隠しきれないフレッドに思わずツッコミを入れる。
「ゴホン、ともあれ、どうか『お願い』を聞いてくださいませんか?」
「お願いとは?」
「この国を救って欲しいのです」
「おおー! それっぽいな!」
フレッドの反応が良い。
というかさっきからテンション高いな、コイツ。
「『国を救う』っていうのはつまり何をすればいいんですか?」
「……あの、呼び出しておいてなんですが、あまり驚かないんですね? 飲み込みが早過ぎでは?」
「ああ、ええ。私たちの世界ではよく見ますから」
「……異世界召喚を?」
「はい」
傍にいた黒ローブ達が口々に「異世界はそこまで魔術が発達しているのか!」「なんてハイレベルなんだ!」なんて言っている。
……まあよく見るのは嘘ではない。マンガやゲームの中でだが。
「恐れ入りました……。『国を救う』というのがつまり何か、というお話でしたね。具体的には、来たる魔物の軍勢からこの国を守って欲しいのです。今から7度目の満月を迎えた時、奴らは活性期に入ります。そのとき大挙して攻め込まれれば我が国はひとたまりもない」
「つまり、俺達が戦うのは結構先ってこと?」
「いえ、私達が望むのは防衛戦ではありません。勇者様方には〈迷宮〉を攻略していただきたい」
〈迷宮〉? それは〈デュプリケート〉と同じ言葉だが偶然か?
「〈迷宮〉攻略者が手に入れる強大な力は魔物への大きな『抑止力』となります。〈迷宮〉攻略者がいる国というだけで魔物達は簡単には寄り付かなくなるでしょう」
〈迷宮〉を攻略して手に入れる力とはボスのドロップのことだろうか? それとも別の何かだろうか?
「お願いです。どうかこの国のため〈迷宮〉を攻略していただきたい!」
俺はそろそろ話の展開についていけなくなり、この夢がいつ醒めるのかを考え始めていた。
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