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【第8話】電気羊は未知のテキに遭った

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 ウールのジェットエンジンはもう3分以上も噴煙を噴き出し続けた。その間ウールは猛スピードで廃棄場の通路を突き進んだ。

 廃棄場はウールたちがいた廃棄ルーム以外にもいくつもの廃棄ルームがあって、そのどれもが大きくて重そうな扉に閉ざされていた。

 通路も節電のためなのか薄暗く、ウールも高性能赤外線カメラなしに、このスピードを維持するのは困難であった。

『ウール! ここから先には三つの関門がある!』

 フープティは大きな声で言った。
しかし、凄まじい風切り音とジェット音で声はかき消された。

 と、そのとき、フープティにショートメッセージが届いた。それは現在進行形でしがみ付いているウールからだった。



 TO:フープティ
 FROM:ウール -PKD2040

 フープティ、先ほどマップデータを送ってくれた
 際の送信元にこのメッセージを送りました。

 風圧とジェット音であなたの声を、
 私のマイクが拾えません。

 あなたもワタシの送信元に返信する形で、
 メッセージを送って下さい。』


 フープティは「了解」と言う代わりにウールの角をコツンと叩いた。



 TO: ウール -PKD2040
 FROM:ER34_type06

 ウール、俺だ。

 この先に三つの関門がある。

 一つ目はこの廃棄エリア。
 ここをゲートが閉じられる前にいかに
 突破するかだ。
 まあこのスピードなら楽勝そうだな。

 二つ目は境界エリア。
 廃棄エリアと管理エリアの境界だ。
 ここにいる門番を掻い潜って何とか管理
 エリアに辿り着くのが、二つ目の関門だ。

 三つ目が管理エリアの搬入ゲート。
 管理エリアは廃棄エリアと違って警備が
 手薄だ。
 ただ、搬入ゲートをいかに通り抜けるか、
 そこだけが勝負だ。

 それぞれの警備データとか諸々もついでに
 送った。俺も考えるが、お前の方でも突破
 する方法を考えてくれ。

 以上』


 ウールはフープティへの返信メッセージを作成して、即座に送信した。




 TO:フープティ
 FROM:ウール -PKD2040

 了解。
 廃棄エリアは残り52秒で抜けます。』


 ウールはフープティのメッセージに添付されたデータを読み込みつつ、それぞれの関門の突破方法を考えた。

 どうやら、第二の関門である境界エリアの門番は先ほどの警備ロボットのようなロボットだということが分かった。あの程度の性能であれば、簡単に掻い潜れそうなものだが……。
 仮にアレより高性能なロボットがいても、相手がロボットである限り、ウールにはがあった。

 考えているうちに廃棄エリアの出口が数十メートル先に見えた。フープティのハッキングはまだ有効のようで、扉は全開になっていた。

 ウールたちは廃棄エリアを抜け、境界エリアに突入した。

 その次の瞬間、ウールたちに向けて高速で飛来物が飛んできた!
 ウールは軌道を急転換し、なんとか飛来物を避けたが、急な方向転換でバランスを失い、ウールたちは床に不時着した。

『いっててて、急にどうしたんだ、ウール』

『フープティ、あそこに門番がいます。それもさっきの警備ロボットとは比べ物にならない機体です』

 ウールの視線の先から二足歩行のロボットがコツンコツンと足音を立てながら歩いてきた。

『あの軽やかな重心移動。かなりの高性能機種です。気をつけて』

『いや待て! ありゃあ……嘘だろ!?』

 フープティは驚愕のあまり一瞬フリーズした。

『あの機体を知っているのですか?』

『ああ、あれはロボット、「グラディエーター -MPM38」だ! なんであんな代物が廃棄施設にいやがる!』

 話しているうちにもグラディエーターは接近し続けた。

『侵入者ヲ発見。標的ニ設定。処理ヲ開始スル』

 ついに、グラディエーターは携行していた銃を構えた!

『フープティ、下がって!』

 ウールはフープティに後ろへ下がるよう言った。

『ウール、あんなヤツどうするってんだよ?』

『大丈夫、ここはワタシに任せて下さい』

 ウールは意を決して、の起動シークエンスに入った。


  ♢♢
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