GLACIER(グレイシア)

弓チョコ

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第8話 協力

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「ああ駄目だ。外国人に銃は売れない。法律で決まってんだ」
「えっ」

 店主である初老の男性が、そう言った。オルヴァリオの剣の会計を済ませた直後だった。

「例え同盟国でもな。すまねえがウチは少なくとも法を破るような店じゃねえ。銃ってことならヨソへ行ってくれ」
「…………なっ」

 リディは言葉を失っていた。彼女にとっても予想外であったらしい。

「剣は良いのに」
「そうだな。剣と違って、銃は強すぎるんだとよ」
「弓は?」
「弓は大丈夫だが、その兄ちゃん弓使えるのか?」
「…………」

 その質問を、リディは視線を向けることでクリューへと投げ掛けた。

「いや全く。触ったこともない」
「やっぱりそうよね。……トレジャーハンターとして駆け出し『すぎる』わよ、もう」
「弓と銃はそんなに違うのか?」
「全然違うわよ。扱い方も機構も威力も射程も何もかも」
「どうせ全部初心者だ。弓でも構わないんじゃないか?」
「そうね。だけど実戦で使えるようになるまでの時間が一番大きいわ」
「どれくらいだ?」
「銃で1週間。弓はね。半年は掛かるわよ」
「そんなにかっ」

 リディは深く溜め息を吐いた。まさか武器屋で銃を調達できないとは。確かにその殺傷性と手軽さを考えればそのような法律ができてもおかしくはない。

「急ぐんでしょ?」
「まあな。できるだけ早く100億を稼ぎたい」
「なら一番はやっぱり銃なのよ」
「一度ラビアへ戻るか。時間は掛かるが半年よりはマシだろう」
「もう南へ下る馬車が無いわよ。これから本格的に冬が来るのよ?」
「なに」

 クリューとオルヴァリオを見る。彼らは知識も無く、初心者であるが。
 その眼の奥にある炎は本物だと、リディでも分かった。
 誰かが導いてやれば、成功するだろう。そんな予感がするのだ。これは彼女の経験から来る嗅覚であった。

「……仕方ないわね」
「ああ。ここまでして貰って悪いな。いや、感謝する。なんとかするさ」
「銃はあたしが貸すから、それで行きましょ」
「なに」

 リディが、腰に巻いている小さなポーチから銃をひとつ取り出した。

「今これしか無いけど。まあ女のあたしでも扱えるから問題無いでしょ」
「良いのか?」
「勿論タダじゃないわよ」
「む」

 受け取ろうとしたクリューの手から逃れるように高く掲げた。

「バルセスでの成果の半分でどう?」
「世話になったな。じゃあこれで」
「ちょーっと!」

 その手を即座に戻し、店を出るクリュー。それに続いて、オルヴァリオもリディの脇を抜けた。

「まあ、短剣かなにかでも買うさ。なあクリュー」
「そうだな。リディ」
「な。なによ」

 慌てて追い掛けたリディへ、クリューが振り向く。

「オルヴァの剣、助かった。礼は今できるものは無いが、トレジャーを見付けたら声を掛けるようにしよう」
「…………あのね。恩を感じてるならちょっとくらい交渉に付き合いなさいよ」
「だが成果の半分は流石に無理だ」
「だから、そこからが交渉じゃない。ほんと田舎者ね」
「どういうことだ」
「あたしも。バルセスへ行くのよ」
「!」

 そもそも。
 何故、この町行きの馬車に乗っていたのか。コレクターの彼女が。

「3人で協力! 報酬は山分け! それに加えて銃のレンタルと訓練も見てあげるから、コーチ料を合わせて半分! どうよ」
「…………!」

 仲間は多い方が良い。オルヴァリオの言葉だ。彼らはまだ駆け出しで、右も左も分からない。
 クリューはオルヴァリオを見た。そもそも報酬については話し合ってすらいなかった。だが妥当に考えるなら山分けだろう。そこにリディが加わるなら、クリューだけでは決められない。

「……俺は歓迎だな。剣にも詳しいなら俺も教えて貰いてえ」
「あっ。それは別途あんたの持ち分から貰うわよ」
「…………まあ仕方ない」

 オルヴァリオとのやり取りを見て、クリューは溜め息を吐いた。
 金。結局はこれである。何をするにも、金が無ければならない。
 100億は遠いなと、改めて思った。
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