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56 エピローグ
しおりを挟む黄龍様とセバスさんと世間話をしているうちに、倒れていた一行が目を覚ました。
魔力垂れ流しの犯人(犯竜?)が正気に戻って、魔力が落ち着いたのだ。
魔力流出事故がぶじ解決した旨を報告すると、皆大変喜んだ。
竜の魔法で、一瞬で王宮に帰還した。
竜の魔法、すごい。
しかも、黄龍様がついてきた。もちろん、お付きのセバスさんも。
ずっと寝てたので暇なのだろうか? それとも、時代が変わって物見遊山だろうか?
心配してたとおり、ハルカの帰還は引き留められた。
町民から聞いたのか、ヤヒクの町でエクストラヒールを使ったこともバレていて、聖女として遇するという。
あと、ハルカは一行のイケメンから、個別で引き留めに合っている。
チャラ双子は、「僕らを見分けられるのは君だけなんだ」と口説いていた。
え? 私も見分け付くけど! 鑑定使えるから名前見えるし(笑)
内務局主任のマルチーノさんは、「君が望むなら、国も滅ぼす」と真っ黒なことを言っていた。
学者のユーゴさんは、「一緒に研究しよう」と口説いた。それは、共同研究の誘いか?
騎士のフェルナンドさんは、「君を泣かせたい」と言った。
あとでハルカから聞いて、「きゃ~S属性?、おばちゃんを泣かせて!」と言ったらチョップされた。
アルベルト様は、「貴女はいつも私の欲しい言葉をくれる。そんな風に言ってくれる人は、今まで誰もいなかった。君が望むなら、私は王座を手に入れる」と。
あとで、ハルカに「あんた何言ったの?」と聞いたら、「わかんない。普通に世間話とか?」と首をかしげていた。
うっかり言った言葉が相手の心を打つことがあるようだ。気をつけよう。
エンバー先輩は、「君と一緒に居ると、安らげる。ずっと側にいて欲しい」と微笑んだ。
おばちゃんの押しはエンバー先輩と学者さんだ。アルベルト様も素敵だけど、地位がらみでいろいろ大変な目に遭いそうだ。
結局、ハルカはそれを全部断り、帰還を選んだ。
それから、私に「お母さんだということ、なんで隠したの?」と詰め寄った。
「だってハルカ優しい子だから、私のためにここに残るって言うかもしれないし。
よく分からないけど、死んだ人間が生きてる人に影響を与えてはいけないと思うのよ。
それに、乙女ゲームの主人公に生まれ変わったっていうの恥ずかしかったし……」
絶対、最後でしょう!と怒られた。
ハルカにずっと聞きたくてたまらなかった家族のその後を聞いた。
夫も上の娘も元気でいるようだ。
「お母さんも向こうに帰らない?」とハルカが誘ってくれた。
「金髪美少女よ!」「お父さん喜んじゃうね!」
「それもイヤだけどw、無国籍よ! 仕事も出来ないし。
お母さんね、お父さんと結婚して貴女たちを育ててちゃんと大人になってくれて、人生なんの悔いもないの。
貴女たちなら私が居なくても大丈夫って信頼してる。
それにね、何よりこっちに女手一つで育ててくれた母さまがいるから、帰る気ないわ」
「カインが理由じゃないんだ」
なんで、カイン??
帰ると決めたハルカに、一行は優しかった。
アルベルト様とマルチーノさんが行政を押さえ、双子が魔法省を説得して、帰還はなされることになった。
もちろん、魔方陣はレイアス先生が作った物が使われる。
ああ、実験に3回つきあわないといけない……
帰還する前の日、私とハルカは一緒の部屋で寝た。
「お母さん、わたしね、私をかばってお母さんが死んですごく辛かった。
ずっと自分が許せなかった。あの日お母さんに会いたくて遠くに行きたかったから、召喚されちゃったんだと思う」
あの日、私は信号無視して突っ込んできた車を見てハルカを突き飛ばした。
で、自分も逃げようとアタフタしてるところを轢かれて死んだ。おばさんは急には動けないのだ。
ハルカをかばって死んだつもりはちっともなくて、もたもたしてて逃げ遅れたのが正しいと、説明したら、お母さんらしいってハルカが笑った。
私はずっと何で乙女ゲームの主人公に生まれ変わったんだろう?って思っていた。
ああ、私はきっと、娘の誤解を解くために、娘の辛い気持ちをほぐすためにここに生まれてきたんだわ。
ストンと心に落ちた。
翌る日、
「イケメンは魅力的だけど、私は私で自分の世界でしっかり生きる。お母さんも頑張ってね」
「お母さんが私のお母さんでよかったよ」
母泣かせなことを言うとハルカは私をそっと抱きしめた。
魔方陣で消える娘を、泣きながら見送った。
本当は側にいて欲しい。ここにいてと、ワガママを言いたい。
でも、子供は大きくなって親元から旅立つもの。
子供には子供の人生がある。
どこにいても、逢えなくても、ずっとずっと貴女達の幸せを祈ってるよ。
**
あれから、竜がついてくる。竜はずっと眠っていて最初に見た動物になついてしまうのだろうか?
ひよこ的なアレだろうか?
まあ、寂しいと病んでしまうリスザルのような動物らしいので、しょうがない。
好きなだけくっつかせておこう。
その後、学園にも転入すると言いだし、カインとひと揉めするのは、また別の話だ。
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