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13 エピローグ

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 今日は、講義の日だ。伯爵家に行くとフィリップ様が待っていた。

大事な話があるので、コーデリア様の講義が済んだら必ず執務室に来るようにと言われる。



講義が終わりフィリップ様の執務室に行く。フィリップ様は、いつになく真剣な顔だ。

真剣な顔をするとチャラ男でもイケメンはさらにイケメンだ。いったい何かあったのかしら?



「アランの家を欺した男を捕まえた。持ち逃げした金の半分くらいは取り戻せそうだ。

それに少し足せば婚約破棄の違約金ぐらいにはなるだろう。

俺との婚約は破棄して、アランの所に戻っていいぞ」



――フィリップ様、アランの家を欺した男を探してくれたんだ。



「そうしたら、フィリップ様は廃嫡になるのではないですか?」



「なんだかんだ言ってうちの親は甘い。たぶん大丈夫だろう。もし廃嫡になったとしても死ぬ訳では無い、せいぜい領地で蟄居させられるだけだ。気にしなくていい」



「なぜ、そう言って下さるのですか? 私と結婚したくないからですか?」



「いや、俺は幸せそうに微笑む君が気に入っていたんだ。

俺と婚約してから君は悲しそうな顔や困った顔ばかりだ。

それに、俺のせいで君を危険に晒さらした。君がダリア嬢に刺されたとき心臓が止まるかと思った。

いろいろ考えたが、俺は君が幸せならそれでいいと思う」



いやああ、なんて良い人なのフィリップ様。

「チャラ男なんて言ってごめんなさい。見損なって、もとい、誤解してましたわ。

私の幸せを考えて下さってありがとうございます。

でもね、お金が戻ったらアランとよりを戻す、そんな軽い覚悟でアランと婚約を破棄して貴方と婚約した訳じゃないんですの」



「チャラ男と呼ばれてたのか……」

フィリップ様が何やらつぶやいている。



「私ね、何があってもずっと貴方の側にいますわ。もう婚約破棄はこりごりですの」

とにっこり微笑んで上目使いでフィリップ様を見つめる。

コーデリア様仕込みのアレだ。



フィリップ様は大きく目を見開く。アレ? なんか間違った?

普通顔がやっちゃいけないヤツだった?



「君には敵わないな。俺はいつも君に敵わないんだ」

言葉を言い終わると、彼は力いっぱい私を抱きしめてきた。



「ずっと側にいてくれるのか。君だけが俺を守るため頑張るんじゃ無くて、俺も君を守るために精いっぱい頑張る。だからお互いに手を取り合い、助け合い、支え合って、やっていこう」



そういうとフィリップ様は本当に、ほんとうに嬉しそうに笑った。













**









フィリップ様の予想通り、アランの家から詐欺師が捕まったので違約金を返したいという申し出がうちに来た。

失ったお金は半分も返らなかったのだ。

違約金を返してしまっては、アランの家は大変苦しいことになるだろう。



それに私はもう元に戻る気はないのだ。元に戻れないのだ。

そんな覚悟でした婚約破棄ではないのだ。



父から、アランの家の申し出に丁寧に断りを入れてもらった。



























――私は、いつか、あのこにしたことを謝りたい。

あのこの気持ちも聞かずに勝手にやってしまったこと。

勝手に守りたいと思ったこと。



フィリップ様によると、男は女の人に守られるより、守りたいらしい。

あのこは、守られたいなんて思っていなかったのかも……











――そして、私のことなど忘れて欲しい



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