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我ながら心が狭いです。

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「ゼルダ様。おかわりはいかがですか」

 いつのまにか隣に、ブホンが立っていました。我が執事ながらたまに怖いです。

 若い頃は、お父様と色々、本当に色々した仲らしいですけど。謎です。
 お父様が、知らなくていいことがあるんだよ、と仰るので知らないようにしています。

「もらうー。ほんとーにブホンのお茶はサイコーだよネ」

 なにくつろいでるんですか。まったく……。
 ブホンはうちの執事ですし、貴女の家はお隣ですよ。

 でも、厳格かつ凄腕の剣士であるゼルダのお祖父じい様も。
 計算高いお父様とお母様も、何事も隙がないブホンも、ごうつくばりのお兄様方までゼルダには甘いのです。

 一番甘いのは私ですけど。

「お褒めにあずかり恐縮です」
「うーん。一生懸命やってるんだけど、ブホンみたいには淹れられないネ」
「ゼルダ様の筋は悪くないです。何事も精進が肝心ですから」

 え。なに。

 ブホンってば、いつのまにか、この子にお茶の淹れ方とか教える関係になってるんですか!?
 そりゃ、ブホンのお茶はこの国一だけど、でも、悔しいです。

 私の悔しげな視線に気づいたのか、ブホンが咳払いをして、ちらっと私を見ました。

 文句言うなってことでしょうか?

 またブホンが咳払いをして、小さく首を振ります。

 え、ちがうんですか?

 ブホンはゼルダを見て、私を見ます。

 ああそういうこと。昨日のことを言えと?

 確かに、釘を刺しておかないと、また変なことやらかしかねないし。


「ブホンってば風邪? だいじょーぶ?」
「いえ。心配してくださってありがとうございます。ではごゆっくり」

 音もなくブホンが立ち去る。

「すごいよねーブホンは。
 どうやったらああいう風に歩けるかも盗もうと思ってるんだけど、
 ぜんぜんできないんだよね。ああいう風になりたいなー」
「むっ」

 確かにブホンは、あのお父様が惜しみなく高給を払うだけあって、我が家自慢の執事ですけど。
 私とも無言で遣り取り出来るくらい、気心が知れた仲ですけど。
 家族と言ってもいいくらいの人ですけど。

 でも、ゼルダが目をキラキラさせてると、ちょっと、むっとします。

 我ながら心が狭いですね。


 気を取り直して、

「ゼルダ」
「ん?」
「なんであんなバカなことしたんですか?」

 エリザベートでバラの騎士はこの子です。この子が変装していたんです。

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