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婚約者は破滅です。どうでもいいですけどね。

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「くっ。追――」

 私はずいと進み出て、お父様の耳元で、

「お父様。変なものはつつかない方がよろしいかと。
 すでに我が家は大勝利です」

 そうささやくと、お父様は見事なおひげを撫でて、

「……ふむ」

 頭の中で、バチバチと計算をしているのでしょう。
 目の中で数字が回転してます。

 我が家の息がかかった者たちだけが集うパーティで、先方からの婚約破棄。
 我が家との取引で利益を得てる人たちしかいませんから、全員が元婚約者アホ有責だと証言してくれるでしょう。
 しかも、男を女だと間違えて婚約しようとしていたフシアナぶりも満天下に。あのバカの評判は地の底。
 そのうえ、サクセン侯爵家の資産は全てこちらのものに。

 無能の極みの侯爵家のせいで荒れ果てておりますが、資源豊富、地味豊か、我が家が経営すればウハウハ間違いなしの優良物件。

 下手に怪人を捕まえて、他家の関わりなど出てきたら、面倒なことになる。


 ちーん。


 計算が出来たようです。


「……あの怪人を追え。ただし相手は怪人だ。慎重に追うのだ。
 無理に追う必要はない。屋敷の敷地から出るまででいい。
 こちらから怪我人など出したら馬鹿馬鹿しい」

「はっっ」

 執事ブホンは、その高給っぷりにふさわしく、万事心得てうなずいてくれました。
 そして一瞬ですが、私の方へ意味ありげな視線を送ってきます。  

 あの自称バラの騎士の正体、判っているのですね。

 全く、どうしてくれようかしら。

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