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これは罰なんでしょうか?

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 私の様子を見て、フリードリヒは高笑い。

「はっはっは。ショックなのだろう! 愉快痛快ッ!
 金まみれの卑しい傲慢は敗北し、高貴で正しき正義は勝利するのダッ!」

 バカは放っておいて。
 私はハニートラップ女をしげしげと見ました。

「……」

 緑色がかったきれいな瞳をしています。

「えへ。どーちたのかなー?」

 ビンゴ!
 やっぱりあの子ですわ!

 凄まじい化け方ですけど、毎日のように顔を合わせている私には判ってしまいました。
 かわいらしく小首を傾げちゃったりして、化ければ化けるもんですね。

 でも、ああ、なんてことでしょう!
 この救いようのないバカがこの子をここへ連れてきたということは。
 この子、このバカとベッドインしたってことですよね!?
 ちっちゃくて、きれいなこの子の体に、貧弱なおぞましいものを……。
 あ、貧弱なモノを直接見たわけじゃありませんよ。調査報告にそう書いてあっただけです。

 認めたくありませんが、そうでなかったらフリードリヒが連れてくるはずありません。

 イヤイヤイヤ!
 そんなの駄目です。あってはいけないことです!

「なんて……ことなの……」

 思わずよろめいてしまいました。

 考えただけで胸が苦しいです。めまいがします。
 血の気がますます引きます。
 私の世界で一番大切なものが汚されてしまったんです。

 この子はいつまでも子供で、そういうことから世界で一番遠いと思ってたのに!

 バカは高笑い。
 不快。すごく不快です。
 金属がこすれあうみたいに響きます。

「くっくっく。真っ青な顔をしおって愉快爽快!
 悔しいだろう悔しいだろう!
 金では手に入らないものがこの世にあると思い知ったカァァァッ!」

 確かにそうですわね。
 この世には金で手に入らないものがありますわ。

 悔しい? そうかもしれません。
 でも、貴方にではありません。
 この子にこんなことをやらせてしまったという事にです。

 私は昔から計算高い子供で、うちの経営する商会でもそれなりの仕事をしてはいます。
 でも、実家には既に有能かつ陰険な長兄と優秀かつ情熱家の次兄がおり、商会を差配する立場にはなれそうもありません(あ、仲はいいです。女だからという理由でなれないわけではありません)。
 であればサクセン家乗っ取りという事業で腕をふるおう、なんて考えていたんです。
 父と兄たちからは、荒廃した領地の再建は任せると言質もとってました。

 意に沿わない結婚しか出来ないと判っているつもりでしたから。
 どうせ一番愛しい相手とはどうにもならないんですもの。

 でも、私は。
 逃げていただけだったのかもしれません。

 これは大事なものから目を背けようとしていた罰なのでしょうか。

 ですが、この子にここまでやらせてしまった以上、無駄にするわけにはいきませんね。

 私は悔しさと悲しさをぐっとこらえて、礼儀正しく。

「婚約破棄、謹んでお受けします。
 列席者の皆様が証人です」

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