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20 ピンクブロンドはヒロインに要求する。
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「貴女を猶子にしておいたのはモンブラン侯爵家にとっても間違いでした。ですから今からでも間違いを正して――」
「出て行くにあたって、猶子としての権利を放棄する事になるので、その分の補償をいただきます」
アタシにとっては大正解でした。
養子と違って、猶子は権利を取り上げられるだけでなくて、放棄もできるんですから。
なぜこんな制度が出来たかと言えば、かつて猶子制度は貴族にとっていい金儲けの手段だったからだ。
絶大な権力を持った貴族達は、無理矢理権利を奪うのも放棄させるのも簡単だったからだ。
実際、過去には何十人も猶子を作って、役に立たなければ放り出すような事が横行していたそうな。
例えば、大商人の三男坊辺りを無理矢理猶子にして、猶子にしてるのを人質にさんざん資産を吸い上げたあげく、相手が破綻したら放逐するとか。
猶子に娘を押しつけて、一族に加えることで、多額の借金をチャラにするとか。
余りのヒドい嫁に耐えかねて離婚話になれば、もの凄い多額の慰謝料を毟り取るとか。
だから有力な商人は、みんなこの国から逃げちゃったんだけど。
そうした濫用を防ぐために、猶子が権利を放棄すると、その見返りに少額だが資産が贈られるようになったのだ。
少額とはいえ、アタシの卒業までの学費と生活費には十分すぎる。
「ですから、養子になればそのような必要は」
思ったよりしつこい。
この屋敷から穏便に出たかったけど、そういうわけにはいかないみたい。
養子にして、今度は政略結婚の道具にでも使う気かしら。
それとも誰か貴族の男をたらしこませるのに使ってから捨てるつもりかしら。
アタシははっきりと言った。
「お嬢様の事が全くこれっぽっちも信頼出来ないからです」
「色々な誤解や行き違いはありましたけど、それらは全て家族になれば解消できることですわ」
なに傷ついたような顔をしてるんだか。うまい芝居。流石淑女。
表情筋を全部制御できるにちがいない。
アタシ、娼館で生まれ育ったんで、貴族どものたるんだ裸のケツみて育ちましたから、汚いやり口一杯知ってるんですけど。
貴族様が下々の者をだまくらかす手口の数々。
それに、うちの娼館には貴族のご令嬢だったとかいう人がいて、いろいろ聞きましたよ。
悪役令嬢にされちゃった手口をね!
ピンクブロンドの呪いって戯言もその人から聞いたよ!
「出て行くにあたって、猶子としての権利を放棄する事になるので、その分の補償をいただきます」
アタシにとっては大正解でした。
養子と違って、猶子は権利を取り上げられるだけでなくて、放棄もできるんですから。
なぜこんな制度が出来たかと言えば、かつて猶子制度は貴族にとっていい金儲けの手段だったからだ。
絶大な権力を持った貴族達は、無理矢理権利を奪うのも放棄させるのも簡単だったからだ。
実際、過去には何十人も猶子を作って、役に立たなければ放り出すような事が横行していたそうな。
例えば、大商人の三男坊辺りを無理矢理猶子にして、猶子にしてるのを人質にさんざん資産を吸い上げたあげく、相手が破綻したら放逐するとか。
猶子に娘を押しつけて、一族に加えることで、多額の借金をチャラにするとか。
余りのヒドい嫁に耐えかねて離婚話になれば、もの凄い多額の慰謝料を毟り取るとか。
だから有力な商人は、みんなこの国から逃げちゃったんだけど。
そうした濫用を防ぐために、猶子が権利を放棄すると、その見返りに少額だが資産が贈られるようになったのだ。
少額とはいえ、アタシの卒業までの学費と生活費には十分すぎる。
「ですから、養子になればそのような必要は」
思ったよりしつこい。
この屋敷から穏便に出たかったけど、そういうわけにはいかないみたい。
養子にして、今度は政略結婚の道具にでも使う気かしら。
それとも誰か貴族の男をたらしこませるのに使ってから捨てるつもりかしら。
アタシははっきりと言った。
「お嬢様の事が全くこれっぽっちも信頼出来ないからです」
「色々な誤解や行き違いはありましたけど、それらは全て家族になれば解消できることですわ」
なに傷ついたような顔をしてるんだか。うまい芝居。流石淑女。
表情筋を全部制御できるにちがいない。
アタシ、娼館で生まれ育ったんで、貴族どものたるんだ裸のケツみて育ちましたから、汚いやり口一杯知ってるんですけど。
貴族様が下々の者をだまくらかす手口の数々。
それに、うちの娼館には貴族のご令嬢だったとかいう人がいて、いろいろ聞きましたよ。
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