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王太子はひとまわり成長したっ!

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「ゲルドリング伯爵令嬢。これでわたしは殿下のお側にいられるのですね?」

 その目には、なにか凄い覚悟があった。

 テレーズかっこいい!
 また惚れてしまうじゃないか!
 いったいボクにどれだけ惚れさせるんだ!

「はいそうです。
 そのうち誰もが知るでしょう。貴女が実質的な王妃であると。
 ただし、貴女は表を全て取り仕切るので、礼儀作法、社交に関しては完璧に覚えてもらわねばなりません」

「……覚悟はできております」

「貴女ならやれます。私が保証しますよ。
 それに、貴女が準王妃となる頃には、名前を覚える必要のある貴族は、ずいぶんと減っていて楽になっているでしょうし」

 ん? どういう意味なんだろう?

「それから殿下」
「まかせろ! なんだか知らないが減るなら覚えられるかもしれない!」
「私は殿下を見誤っておりました」
「え。そうなの?」
「テレーズ嬢が殿下を庇うようなことがあれば、彼女に全ての罪を押しつけて逃れようとすると予想していたのですが」

「ひどっ!
 はやりの劇の『ざまぁ』される悪役みたいなことするはずないじゃないか!
 ボクは善なんだからなっ!」

「そうですね。確かに殿下は善人ですね。
 この3年の間、テレーズ嬢の貞節を権力をカサに着て無理矢理奪うようなことはしませんでした。
 引き起こした失態の責任を、自ら引き受けようとしました。
 テレーズ嬢だけでなく裏切った側近まで庇いました。
 その上、彼女を心の底から愛しているとしか説明できない奇行の数々……」

 もしかして褒められてるのかっ!?
 まさか。
 このボクが、灰色メガネに!?

 夢じゃないよね?

「それに、私が懇切丁寧に説明すれば、本当に理解をしているかには、やや不安が残るものの、飲み込んで受け入れるだけの知性と度量はあるようですね」

 なんかわかりにくいが、褒められてる感じがする!

 うわー。褒めない人に褒められると、すごく褒められてる気がするぞっ!

 もりあがるぜ!

「殿下は為政者としては三流以下にしかなれないでしょうが、人間としては王家の中で一番まともです。
 王になるべきなのは殿下しかおりません」

 会場の誰かが叫んだ。

「我らの王太子殿下! 我らの王太子妃殿下! 未来の準王妃殿下!
 我らの全身全霊は貴方方のために!」

 皆が一斉にボクらの方へ向いてひざまずいてくれたじゃないですかっ!?

 マジ!? マジなの!?

 ボクが王でテレーズが一字違いで王妃!?

 うひょー。すげー未来!

 ボクはびしり、と片手をあげて前髪をふわり。
 王者のポーズを決めっ!

 テレーズがそっとよりそって来て、耳元に口を近づけてくる。

「な、なにテレーズ?」

 おっぱい押しつけられるとドキドキするじゃないか!

「殿下。わたしも殿下も忘れてはなりませんね。
 この忠誠も崇拝も尊敬も、全てゲルドリング伯爵令嬢に対するものだということを」
「……判ってるって」

 骨身にしみました。
 この世の中には敵に回しちゃいけない相手がいるってことをさ。 

 ちゃららちゃっちゃちゃ~~♪

 王太子オットーはひとまわり成長した!
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