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テレーズはボクの守護天使

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「そんなはずは――」

 ボクは不意に思い出した。

 あいつは、あの裏切り者のグスタフだけは、そんなことを言っていた。

『殿下の婚約者であるマリアンヌ侯爵令嬢は学園に来ておりません。テレーズ嬢を突き落とすのは不可能です』と。

 だけど、宰相の息子、ボクの幼なじみで忠実な友であるギルデンスターンがビシッと言ってやったんだ。
『婚約者殿は学園生、それが学園に来ていないなんてあり得ないですね。
 グスタフ、あんな悪女を庇って見え透いた嘘をつくなんて……君はあの女の手先だったんだな、見損なったよ』と。
 他の友もみんなそれに同調したのだ。

 ボクは激怒して、グスタフを裏切り者として断罪。学園からも追い出そうとしたけど、流石にその権限はなくて、側近からの追放で我慢し―

「児戯に等しい謀ですが、必要にして十分でしたね。
 なぜならこの罠は、殿下とテレーズ嬢にだけ向けられたものなのですから」
「わっ罠!? どういうことだ!」

 ワナワナと震えるボクに言葉がブスッと突き刺さるっ。

「私に全く関心のない、というか、いないと清々するとしか思っていない殿下は、私を見かけなくても気にもとめません。王宮で行われている王太子教育もさぼってばかりですから、昼間の私とすれ違うこともなかったでしょう。
 そして学園に全く友達のいないテレーズ嬢は、そういう事情を誰にも教えてもらえなかったのでしょう」
 
 ボクとテレーズが罠に!? どうして誰がなぜ!? なにゆえっ!?
 足元が崩れそうな恐怖を感じる。
 だが、動揺するボクを庇うようにテレーズが前へ進み出た。

「ゲルドリング伯爵令嬢様! やはり貴女は殿下の婚約者にふさわしくありません! 学園生でありながら学園に通っていないなんて!
 しかも貴女は貴族の子弟! 夫を支え家内を守るのが貴族の淑女の責務です! そのための教育です!
 幾ら位の高い伯爵令嬢である貴女でもそんなことは許されません!」

 ボクを必死で庇うテレーズの背中が光り輝いて見えるっ。
 テレーズ! 君はなんて勇敢なんだ! ボクの天使!
 ああっ。輝く天使の翼が見えるようだ!

 そうだ! そうだ! その通りだ!

 ここでこそ王者のポーズ復活! ざまぁするは我にあり!
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