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男女で部屋を用意してもらい、冒険者装備に着替える。
部屋を出たら、第一王女が立っていた。
「殿下」
サラが頭を下げようとする前に、王女はサラの両肩に手を置いた。
真っ直ぐ視線を合わせるが、悲痛な表情をしていた。
「…レイノルドお兄様を、よろしくお願いします」
兄には無事に帰って来てもらいたい。
でもサラ達も死んで欲しくない。
そんな感情が見えるようだった。
王族としては、「危険になったら王太子を守って死んでくれ」と言うしかない。
でも言いたくない。
そんな気持ちが伝わってきて、サラは笑顔で頷いた。
「全力を尽くします」
「…無事で、帰って来てね。わたくしは王宮で、お兄様の代わりに詰めます。陛下は各国とのやりとりや報償のことで忙しい。現場のことはお兄様がやる。総括は、わたくしがやります」
「はい。イーディス殿下、よろしくお願い致します」
「任せて。あなた達の活動が円滑に進むよう、わたくしも全力を尽くします」
そしてリディアへと視線を向け、王女として完璧な微笑みを向けた。
「我が国の危機に参じて頂き、感謝致します。ご武運を」
「ありがとうございます、王女殿下」
王女が議事堂へと向かっていく後ろ姿を見送って、待ち合わせ場所へと歩き出す。
リディアは感心したように呟いた。
「あの王太子にしてあの王女在り、なのね」
「王女殿下もとても素晴らしい方です」
「親しいのね、サラ」
「学園の先輩ですし、幼少の頃から親しくさせて頂いています」
「なるほどね~」
すでに待っていた男性陣と共に、王宮に設置されている転移装置でルイビスタスへと移動した。
王太子には護衛騎士が五名ついているが、彼らは戦力にはならない。
ダンジョン攻略の時と同じように、一歩下がった位置で敵に絡まれないように、という配慮すらできるか怪しい。
敵は数十万とも言われており、敵に囲まれる事態もないとはいえない。
護衛騎士達は自分達が都市に残るという選択肢には強行に反対をした。
だが正直な所、戦場で王太子が危機に陥ったとして、護衛騎士達が駆けつけて代わりに盾になれるかといえば、無理だった。
むしろ冒険者達の邪魔になる。
そう説得する王太子に、反論できる騎士はいなかった。
せめて、と都市内にいる間は付き従うことで妥協し、王太子一行は大本営へと向かう。
騎士団や魔術師団の面々が総立ちで迎えようとするのを止めて、王太子はさっさと中へと入って受付をするのだった。
「私のことはAランク冒険者として適度に扱ってくれれば良い。この非常事態に王族として遇しろなどとは言わぬ。ただ報告や連絡事項がある場合は別だが」
「御意」
ピアスを受け取り、皆でつけた。
Aランク以上の冒険者がやりとりするピアスの方は、積極的に情報交換が行われているようだった。
ルイビスタスの周辺はやはりAランク以下の魔獣しかいないようで、Sランク冒険者達は警戒に当たり高ランクの魔獣を倒しながら、周辺の数が減り次第進軍する、とのことだった。
先に来ていたAランク冒険者が王太子の周囲に集まって来る。
王太子が労う彼らの中に、サラ達は見知った顔をいくつも見つけた。
「まずはAランク冒険者諸君には、夜明けまで休憩を挟みながら外で魔獣の殲滅を手伝ってもらいたい」
「そのことなのですが殿下」
最初に発言したのは、左目部分に縦の傷跡を残した三人組パーティーのリーダーだった。
以前サラのランク不正疑惑が持ち上がった時、監視役として同行した三人組である。
「こちらの二人組がAランクに上がったばかりだというので、パーティーとして共に行動してもいいでしょうか」
こちらの二人、と紹介されていたのは、サラがAランク試験を受けた際、共に戦った夫婦である。
サラに気づいた二人は、にこりと微笑んだ。
「ああ、彼らか。参加してくれて礼を言う。そういうことなら許可しよう。受付でその旨報告しておいて欲しい」
「はい…それで、殿下も戦われるんですね」
「そのつもりだ」
「こりゃいいや。自国の為に命を懸けて戦う王太子殿下がいる。それだけで俺らもやる気になります」
「それは良かった。だが命は大切にして欲しい」
「無論、生きて帰りますよ」
Aランク以上の連絡網に王太子から通達があり、Sランク冒険者を始め全員が頷いた。
Bランク以下の冒険者もグループを作り、周辺の弱い魔獣を交代制で出撃しては討伐してを繰り返している。
彼らは都市から大きく離れることはなく、襲い来る敵を殲滅するのが役割であった。
救護テントと一時休憩場所は門の内側入ってすぐのところに設置されており、回復と一時休憩はすぐにできるようになっていた。
睡眠が必要な場合には宿を使うか、自前のテントを広場に使用する。
都市の住民はほとんどが王都へ避難しているが、宿の従業員や食堂の従業員等は自発的に残って支援をしてくれていた。
他にも様々な雑用をする者など、転移装置と行き来してできる支援をしてくれる者の数は多かった。
騎士団や魔術師団、都市を守る私兵団も、冒険者を支える為に働いていた。
彼らは王太子の姿を見て驚き、そして歓喜した。
王太子自らが前線に立ち、民を守ってくれるのだ。
防壁門に向かう道中頭を下げ、「この国を救って下さい」と懇願する民の姿を多く目にする。
そのたびに王太子は手を振りながら、大丈夫だと言うのだった。
どれだけ心強いことだろう。
不安と恐怖の混じる顔に笑顔が戻るのを見ながらサラは思う。
絶対に死なせてはならない。
守らなければならないのだった。
ルイビスタスは東西南北に出入口がある為、Aランク冒険者のパーティは分散して出撃した。
出てすぐの場所には低ランク冒険者が固まっており、迫り来る魔獣に対処する為皆で協力しあいながら戦っていた。
魔獣の数は多い。
そこら中に光球が浮かび、周辺は昼間のような明るさにはなっているが、明かりの向こうは暗闇であり、魔獣の唸り声や遠吠えがひっきりなしに聞こえてくる。
防壁の上から一定距離にいる敵を排除する為に私兵団や騎士団、魔術師団がずらりと並び、攻撃をすることで外に出ている冒険者達が押し潰されるのを辛うじて防いでいた。
「Aランク冒険者が殲滅に加わる!皆、しっかり踏みとどまれ!」
王太子の呼びかけに、冒険者達が雄叫びを上げた。
王太子がカイルを振り返り、察したカイルが身体強化をかけ始めた。
リアムが素早くカイルに強化魔法をかけ、サラと兄に魔力回復の魔法を唱える。
兄妹は自身に強化魔法をかけ、戦闘場所を選定した。
「対応できる分だけ引っ掛けて来い。高ランクの魔獣を連れて来る時には、連絡が欲しい」
「了解!」
カイルが走り出し、範囲攻撃をぶちかましながら敵陣に突っ込んでいく。
弱い敵は範囲攻撃で消し飛ぶし、残った敵もダメージを追いながらカイルを追いかけ始める。
兄妹は陣の詠唱を始め、強化をかけた王太子は違う方向に固まっている敵に範囲魔法を撃ち込み始める。
「王太子殿下は豪快な方ですねぇ」
リアムの呟きに、リディアが笑った。
「今更でしょ!」
兄妹は詠唱中であり、側に立つ王太子の身が危険である。
リディアとリアムは生き残って襲い来る敵に容赦なく範囲攻撃魔法を唱えて殲滅していった。
それだけで数百は片づいた頃、カイルが大量の敵を引き連れて戻って来たのだった。
背後に、黒山ができていた。
「…おい、多すぎないか…」
呆れた王太子の言葉を、カイルは豪快に笑い飛ばした。
「Bランクも混じってっぞ!俺の体力半分切った!駆け込むぞぉおおお!!」
詠唱完了タイミングぴったりであった。
駆け込んだ瞬間兄妹の陣が発動し、カイルの体力が回復すると同時に王太子達の範囲攻撃魔法が炸裂した。
三分の一が倒れ、残り三分の二のヘイトは変わらずカイルが持っていた。
リアムがカイルの体力監視に入り、兄妹達は自身の魔力を監視しながら敵を殲滅していく。
Bランク程度の強さならば、もはや敵にもならなかった。
敵の数が五分の一を切った頃には、カイルはまた自身に強化をかけていた。
リアムが強化魔法をかけ、サラが体力を全快させる。
「第二陣、行ってくらぁー!」
とても楽しそうに叫びながらカイルがまた敵に突っ込んでいった。
周囲からは「マジかよ…」「すげぇ…」という感嘆の呟きが漏れ聞こえ、ずいぶんと敵の減った周辺を見渡して安堵のため息をついていた。
だが敵が減ったのは王太子パーティーの周辺だけである。少し離れた所では黒山ができており、まだまだ果ては見えなかった。
兄妹は魔力ポーションを飲み、陣を維持する。
王太子はまた近場の敵をひっかけてはリディアとリアムに処理をさせ、カイルが戻って来るまでの繋ぎを無駄なくこなしていた。
遅れて参加してきたAランク冒険者達も加わって、夜明け前には万単位の敵を倒したはずであったが、まだ草原の向こうには多くの敵がこちらに向かってやって来ていた。
「すごい数だな」
途中で二度休憩を取った以外はずっと戦闘しっぱなしであったカイル達も、さすがにため息をついた。
「長期戦になる、と父が言っていた。しっかり休んで無理はするな、とも」
兄が言えば、皆の表情が改まる。
「前回のスタンピードは収束まで一ヶ月くらいかかったんだっけか」
カイルが思い出すような仕草をしながら呟き、王太子は頷く。
「ワイバーンロードを討伐するのに一週間かかった、という話だ」
「ああ、そうだったそうだった。被弾がでかすぎて近づける奴が親父殿一行しかいかなったっていう話だろ」
「そう、将軍殿がメイン盾、魔法剣士殿がサブ盾で維持していたと言っていた」
「盾役を維持する為の回復に十人、アタッカーを維持する回復に二十人、補助に十人、他も交代しながら当たったていう話だろ」
「何しろ名誉騎士一行以外の魔法攻撃も物理攻撃も、レジストされてダメージがまともに通らないから、他の冒険者は後衛に回ったという話だ」
「今なら親父殿達もっと強くなってるから、楽に戦えるんじゃねぇの?」
「そうだといいんだがな。敵が強くなっていなければいいが」
「恐ろしいこと言うなよ」
大本営へと戻り、使用した薬品の補充を受けて担当の都市、辺境伯領フランクリンへと飛んだ。
王太子は各都市を回って激励してから行くと言い、兄と護衛騎士を連れて行った。サラ達は一足先に宿に入って昼まで休憩をすることにした。
足の速い魔獣がすでに門へと到達しているようだが、低ランクの為、他の冒険者が対処している。
魔力をしっかり回復させ、カイル達と昼食を取ったが王太子と兄はまだ戻って来なかった。
メンバーがいなければ待機するしかない。
定期的に入って来るAランク以上の連絡用ピアスに耳を傾けながら、サラは少し街を回ってみることにした。
カイル達が一緒に行こうかと言ってくれたがゆっくり過ごして欲しいと遠慮して、宿を出る。
「サラさん、一人で出歩かない方がいいですよ」
背後から声をかけられ振り返れば、リアムが優しい笑みを浮かべて立っていた。
「リアムさん」
「カイルさんご夫婦に遠慮するのはわかりますが、私には声をかけて欲しかったです。私一人残されても気を使ってしまうんですよ」
「あ、言われてみれば確かに」
夫婦はとても仲睦まじい。
そこに一人残されたリアムの気持ちを考え、サラは笑った。
「わかって頂ければ結構です。殿下やクリスさんには適いませんが、護衛させて頂きますね」
「とても頼もしいです」
「それは良かった」
フランクリンはフォスター辺境伯領であり、辺境伯自ら拠点に物資を運んだり、都市内の見回りをして民の励ましをしているというだけあって、とても賑やかであった。
絶えず人の行き来があり、商店も変わらず営業している。
冒険者の数が多く、騎士団や魔術師団などの制服を着た者達の往来が激しいせいで物々しい雰囲気はいかんともしがたいが、悲壮感はなかった。
もともと大森林のある土地であり、魔獣との戦いは日常茶飯事である。
都市にまで押し寄せて来ることもあって、住民達もある程度は対応できるということで、落ち着いていた。
大侵攻の攻撃先が隣の侯爵領であることも大きいかも知れない。大森林からここまで真っ直ぐに来ていたら、雰囲気は違ったものになっていたのだろう。
サラの先輩でもあるフォスター辺境伯令息エドワードは、防壁に上がって私兵達の指揮をしており、妹達はアイラと共に救護テントに詰めて、回復要員として働いているということだった。
この都市の拠点に登録に来た際、辺境伯自らに歓迎してもらい、事情を教えてもらった。
辺境伯は拠点に詰め、王宮や大本営、他都市からの連絡をとりまとめてこの都市の指揮をしていた。
辺境伯令息は大人し気なイメージであるが、辺境伯は豪快な戦士といった風情である。だが頭が切れ、常に冒険者の意見を入れて魔獣討伐に当たってきた有能な領主であるのだった。
そして何より、領民に慕われている。
辺境伯夫人もまた拠点に詰め、冒険者達が都市内で快適に過ごせるように手を尽くしてくれていた。
辺境伯領の都市は頑丈な防壁と備えがある為、簡単に破られることはない。
私兵団もよく訓練されているし、領民達も戦時の心得を理解していた。
誰もが冒険者達を気遣ってくれ、戦いに専念できるよう心を砕いてくれていることが窺えて、サラは温かい気持ちになった。
リアムと共に防壁を見て回り、救護テントでアイラに挨拶をした所、ミリアムやミラもいて驚く。
「エリザベス様はCランク冒険者として参加されておりますわ。わたくし達、できることをしようと決意致しましたの。サラ様、お気をつけ下さいまし。もし回復が必要になられたら、いらして下さいましね」
「ありがとうございます。心強いです」
共に戦っている皆がいる。
皆が笑って過ごせる未来の為に、全力を尽くそう。
サラは決意するのだった。
部屋を出たら、第一王女が立っていた。
「殿下」
サラが頭を下げようとする前に、王女はサラの両肩に手を置いた。
真っ直ぐ視線を合わせるが、悲痛な表情をしていた。
「…レイノルドお兄様を、よろしくお願いします」
兄には無事に帰って来てもらいたい。
でもサラ達も死んで欲しくない。
そんな感情が見えるようだった。
王族としては、「危険になったら王太子を守って死んでくれ」と言うしかない。
でも言いたくない。
そんな気持ちが伝わってきて、サラは笑顔で頷いた。
「全力を尽くします」
「…無事で、帰って来てね。わたくしは王宮で、お兄様の代わりに詰めます。陛下は各国とのやりとりや報償のことで忙しい。現場のことはお兄様がやる。総括は、わたくしがやります」
「はい。イーディス殿下、よろしくお願い致します」
「任せて。あなた達の活動が円滑に進むよう、わたくしも全力を尽くします」
そしてリディアへと視線を向け、王女として完璧な微笑みを向けた。
「我が国の危機に参じて頂き、感謝致します。ご武運を」
「ありがとうございます、王女殿下」
王女が議事堂へと向かっていく後ろ姿を見送って、待ち合わせ場所へと歩き出す。
リディアは感心したように呟いた。
「あの王太子にしてあの王女在り、なのね」
「王女殿下もとても素晴らしい方です」
「親しいのね、サラ」
「学園の先輩ですし、幼少の頃から親しくさせて頂いています」
「なるほどね~」
すでに待っていた男性陣と共に、王宮に設置されている転移装置でルイビスタスへと移動した。
王太子には護衛騎士が五名ついているが、彼らは戦力にはならない。
ダンジョン攻略の時と同じように、一歩下がった位置で敵に絡まれないように、という配慮すらできるか怪しい。
敵は数十万とも言われており、敵に囲まれる事態もないとはいえない。
護衛騎士達は自分達が都市に残るという選択肢には強行に反対をした。
だが正直な所、戦場で王太子が危機に陥ったとして、護衛騎士達が駆けつけて代わりに盾になれるかといえば、無理だった。
むしろ冒険者達の邪魔になる。
そう説得する王太子に、反論できる騎士はいなかった。
せめて、と都市内にいる間は付き従うことで妥協し、王太子一行は大本営へと向かう。
騎士団や魔術師団の面々が総立ちで迎えようとするのを止めて、王太子はさっさと中へと入って受付をするのだった。
「私のことはAランク冒険者として適度に扱ってくれれば良い。この非常事態に王族として遇しろなどとは言わぬ。ただ報告や連絡事項がある場合は別だが」
「御意」
ピアスを受け取り、皆でつけた。
Aランク以上の冒険者がやりとりするピアスの方は、積極的に情報交換が行われているようだった。
ルイビスタスの周辺はやはりAランク以下の魔獣しかいないようで、Sランク冒険者達は警戒に当たり高ランクの魔獣を倒しながら、周辺の数が減り次第進軍する、とのことだった。
先に来ていたAランク冒険者が王太子の周囲に集まって来る。
王太子が労う彼らの中に、サラ達は見知った顔をいくつも見つけた。
「まずはAランク冒険者諸君には、夜明けまで休憩を挟みながら外で魔獣の殲滅を手伝ってもらいたい」
「そのことなのですが殿下」
最初に発言したのは、左目部分に縦の傷跡を残した三人組パーティーのリーダーだった。
以前サラのランク不正疑惑が持ち上がった時、監視役として同行した三人組である。
「こちらの二人組がAランクに上がったばかりだというので、パーティーとして共に行動してもいいでしょうか」
こちらの二人、と紹介されていたのは、サラがAランク試験を受けた際、共に戦った夫婦である。
サラに気づいた二人は、にこりと微笑んだ。
「ああ、彼らか。参加してくれて礼を言う。そういうことなら許可しよう。受付でその旨報告しておいて欲しい」
「はい…それで、殿下も戦われるんですね」
「そのつもりだ」
「こりゃいいや。自国の為に命を懸けて戦う王太子殿下がいる。それだけで俺らもやる気になります」
「それは良かった。だが命は大切にして欲しい」
「無論、生きて帰りますよ」
Aランク以上の連絡網に王太子から通達があり、Sランク冒険者を始め全員が頷いた。
Bランク以下の冒険者もグループを作り、周辺の弱い魔獣を交代制で出撃しては討伐してを繰り返している。
彼らは都市から大きく離れることはなく、襲い来る敵を殲滅するのが役割であった。
救護テントと一時休憩場所は門の内側入ってすぐのところに設置されており、回復と一時休憩はすぐにできるようになっていた。
睡眠が必要な場合には宿を使うか、自前のテントを広場に使用する。
都市の住民はほとんどが王都へ避難しているが、宿の従業員や食堂の従業員等は自発的に残って支援をしてくれていた。
他にも様々な雑用をする者など、転移装置と行き来してできる支援をしてくれる者の数は多かった。
騎士団や魔術師団、都市を守る私兵団も、冒険者を支える為に働いていた。
彼らは王太子の姿を見て驚き、そして歓喜した。
王太子自らが前線に立ち、民を守ってくれるのだ。
防壁門に向かう道中頭を下げ、「この国を救って下さい」と懇願する民の姿を多く目にする。
そのたびに王太子は手を振りながら、大丈夫だと言うのだった。
どれだけ心強いことだろう。
不安と恐怖の混じる顔に笑顔が戻るのを見ながらサラは思う。
絶対に死なせてはならない。
守らなければならないのだった。
ルイビスタスは東西南北に出入口がある為、Aランク冒険者のパーティは分散して出撃した。
出てすぐの場所には低ランク冒険者が固まっており、迫り来る魔獣に対処する為皆で協力しあいながら戦っていた。
魔獣の数は多い。
そこら中に光球が浮かび、周辺は昼間のような明るさにはなっているが、明かりの向こうは暗闇であり、魔獣の唸り声や遠吠えがひっきりなしに聞こえてくる。
防壁の上から一定距離にいる敵を排除する為に私兵団や騎士団、魔術師団がずらりと並び、攻撃をすることで外に出ている冒険者達が押し潰されるのを辛うじて防いでいた。
「Aランク冒険者が殲滅に加わる!皆、しっかり踏みとどまれ!」
王太子の呼びかけに、冒険者達が雄叫びを上げた。
王太子がカイルを振り返り、察したカイルが身体強化をかけ始めた。
リアムが素早くカイルに強化魔法をかけ、サラと兄に魔力回復の魔法を唱える。
兄妹は自身に強化魔法をかけ、戦闘場所を選定した。
「対応できる分だけ引っ掛けて来い。高ランクの魔獣を連れて来る時には、連絡が欲しい」
「了解!」
カイルが走り出し、範囲攻撃をぶちかましながら敵陣に突っ込んでいく。
弱い敵は範囲攻撃で消し飛ぶし、残った敵もダメージを追いながらカイルを追いかけ始める。
兄妹は陣の詠唱を始め、強化をかけた王太子は違う方向に固まっている敵に範囲魔法を撃ち込み始める。
「王太子殿下は豪快な方ですねぇ」
リアムの呟きに、リディアが笑った。
「今更でしょ!」
兄妹は詠唱中であり、側に立つ王太子の身が危険である。
リディアとリアムは生き残って襲い来る敵に容赦なく範囲攻撃魔法を唱えて殲滅していった。
それだけで数百は片づいた頃、カイルが大量の敵を引き連れて戻って来たのだった。
背後に、黒山ができていた。
「…おい、多すぎないか…」
呆れた王太子の言葉を、カイルは豪快に笑い飛ばした。
「Bランクも混じってっぞ!俺の体力半分切った!駆け込むぞぉおおお!!」
詠唱完了タイミングぴったりであった。
駆け込んだ瞬間兄妹の陣が発動し、カイルの体力が回復すると同時に王太子達の範囲攻撃魔法が炸裂した。
三分の一が倒れ、残り三分の二のヘイトは変わらずカイルが持っていた。
リアムがカイルの体力監視に入り、兄妹達は自身の魔力を監視しながら敵を殲滅していく。
Bランク程度の強さならば、もはや敵にもならなかった。
敵の数が五分の一を切った頃には、カイルはまた自身に強化をかけていた。
リアムが強化魔法をかけ、サラが体力を全快させる。
「第二陣、行ってくらぁー!」
とても楽しそうに叫びながらカイルがまた敵に突っ込んでいった。
周囲からは「マジかよ…」「すげぇ…」という感嘆の呟きが漏れ聞こえ、ずいぶんと敵の減った周辺を見渡して安堵のため息をついていた。
だが敵が減ったのは王太子パーティーの周辺だけである。少し離れた所では黒山ができており、まだまだ果ては見えなかった。
兄妹は魔力ポーションを飲み、陣を維持する。
王太子はまた近場の敵をひっかけてはリディアとリアムに処理をさせ、カイルが戻って来るまでの繋ぎを無駄なくこなしていた。
遅れて参加してきたAランク冒険者達も加わって、夜明け前には万単位の敵を倒したはずであったが、まだ草原の向こうには多くの敵がこちらに向かってやって来ていた。
「すごい数だな」
途中で二度休憩を取った以外はずっと戦闘しっぱなしであったカイル達も、さすがにため息をついた。
「長期戦になる、と父が言っていた。しっかり休んで無理はするな、とも」
兄が言えば、皆の表情が改まる。
「前回のスタンピードは収束まで一ヶ月くらいかかったんだっけか」
カイルが思い出すような仕草をしながら呟き、王太子は頷く。
「ワイバーンロードを討伐するのに一週間かかった、という話だ」
「ああ、そうだったそうだった。被弾がでかすぎて近づける奴が親父殿一行しかいかなったっていう話だろ」
「そう、将軍殿がメイン盾、魔法剣士殿がサブ盾で維持していたと言っていた」
「盾役を維持する為の回復に十人、アタッカーを維持する回復に二十人、補助に十人、他も交代しながら当たったていう話だろ」
「何しろ名誉騎士一行以外の魔法攻撃も物理攻撃も、レジストされてダメージがまともに通らないから、他の冒険者は後衛に回ったという話だ」
「今なら親父殿達もっと強くなってるから、楽に戦えるんじゃねぇの?」
「そうだといいんだがな。敵が強くなっていなければいいが」
「恐ろしいこと言うなよ」
大本営へと戻り、使用した薬品の補充を受けて担当の都市、辺境伯領フランクリンへと飛んだ。
王太子は各都市を回って激励してから行くと言い、兄と護衛騎士を連れて行った。サラ達は一足先に宿に入って昼まで休憩をすることにした。
足の速い魔獣がすでに門へと到達しているようだが、低ランクの為、他の冒険者が対処している。
魔力をしっかり回復させ、カイル達と昼食を取ったが王太子と兄はまだ戻って来なかった。
メンバーがいなければ待機するしかない。
定期的に入って来るAランク以上の連絡用ピアスに耳を傾けながら、サラは少し街を回ってみることにした。
カイル達が一緒に行こうかと言ってくれたがゆっくり過ごして欲しいと遠慮して、宿を出る。
「サラさん、一人で出歩かない方がいいですよ」
背後から声をかけられ振り返れば、リアムが優しい笑みを浮かべて立っていた。
「リアムさん」
「カイルさんご夫婦に遠慮するのはわかりますが、私には声をかけて欲しかったです。私一人残されても気を使ってしまうんですよ」
「あ、言われてみれば確かに」
夫婦はとても仲睦まじい。
そこに一人残されたリアムの気持ちを考え、サラは笑った。
「わかって頂ければ結構です。殿下やクリスさんには適いませんが、護衛させて頂きますね」
「とても頼もしいです」
「それは良かった」
フランクリンはフォスター辺境伯領であり、辺境伯自ら拠点に物資を運んだり、都市内の見回りをして民の励ましをしているというだけあって、とても賑やかであった。
絶えず人の行き来があり、商店も変わらず営業している。
冒険者の数が多く、騎士団や魔術師団などの制服を着た者達の往来が激しいせいで物々しい雰囲気はいかんともしがたいが、悲壮感はなかった。
もともと大森林のある土地であり、魔獣との戦いは日常茶飯事である。
都市にまで押し寄せて来ることもあって、住民達もある程度は対応できるということで、落ち着いていた。
大侵攻の攻撃先が隣の侯爵領であることも大きいかも知れない。大森林からここまで真っ直ぐに来ていたら、雰囲気は違ったものになっていたのだろう。
サラの先輩でもあるフォスター辺境伯令息エドワードは、防壁に上がって私兵達の指揮をしており、妹達はアイラと共に救護テントに詰めて、回復要員として働いているということだった。
この都市の拠点に登録に来た際、辺境伯自らに歓迎してもらい、事情を教えてもらった。
辺境伯は拠点に詰め、王宮や大本営、他都市からの連絡をとりまとめてこの都市の指揮をしていた。
辺境伯令息は大人し気なイメージであるが、辺境伯は豪快な戦士といった風情である。だが頭が切れ、常に冒険者の意見を入れて魔獣討伐に当たってきた有能な領主であるのだった。
そして何より、領民に慕われている。
辺境伯夫人もまた拠点に詰め、冒険者達が都市内で快適に過ごせるように手を尽くしてくれていた。
辺境伯領の都市は頑丈な防壁と備えがある為、簡単に破られることはない。
私兵団もよく訓練されているし、領民達も戦時の心得を理解していた。
誰もが冒険者達を気遣ってくれ、戦いに専念できるよう心を砕いてくれていることが窺えて、サラは温かい気持ちになった。
リアムと共に防壁を見て回り、救護テントでアイラに挨拶をした所、ミリアムやミラもいて驚く。
「エリザベス様はCランク冒険者として参加されておりますわ。わたくし達、できることをしようと決意致しましたの。サラ様、お気をつけ下さいまし。もし回復が必要になられたら、いらして下さいましね」
「ありがとうございます。心強いです」
共に戦っている皆がいる。
皆が笑って過ごせる未来の為に、全力を尽くそう。
サラは決意するのだった。
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王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
【完結】底辺冒険者の相続 〜昔、助けたお爺さんが、実はS級冒険者で、その遺言で七つの伝説級最強アイテムを相続しました〜
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
試験雇用中の冒険者パーティー【ブレイブソード】のリーダーに呼び出されたウィルは、クビを宣言されてしまう。その理由は同じ三ヶ月の試験雇用を受けていたコナーを雇うと決めたからだった。
ウィルは冒険者になって一年と一ヶ月、対してコナーは冒険者になって一ヶ月のド新人である。納得の出来ないウィルはコナーと一対一の決闘を申し込む。
その後、なんやかんやとあって、ウィルはシェフィールドの町を出て、実家の農家を継ぐ為に乗り合い馬車に乗ることになった。道中、魔物と遭遇するも、なんやかんやとあって、無事に生まれ故郷のサークス村に到着した。
無事に到着した村で農家として、再出発しようと考えるウィルの前に、両親は半年前にウィル宛てに届いた一通の手紙を渡してきた。
手紙内容は数年前にウィルが落とし物を探すのを手伝った、お爺さんが亡くなったことを知らせるものだった。そして、そのお爺さんの遺言でウィルに渡したい物があるから屋敷があるアポンタインの町に来て欲しいというものだった。
屋敷に到着したウィルだったが、彼はそこでお爺さんがS級冒険者だったことを知らされる。そんな驚く彼の前に、伝説級最強アイテムが次々と並べられていく。
【聖龍剣・死喰】【邪龍剣・命喰】【無限収納袋】【透明マント】【神速ブーツ】【賢者の壺】【神眼の指輪】
だが、ウィルはもう冒険者を辞めるつもりでいた。そんな彼の前に、お爺さんの孫娘であり、S級冒険者であるアシュリーが現れ、遺産の相続を放棄するように要求してきた。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
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16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました
鈴宮ソラ
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オラルト伯爵家に生まれたレイは、水色の髪と瞳という非凡な容姿をしていた。あまりに両親に似ていないため両親は彼女を幼い頃から不気味だと虐待しつづける。
レイは考える事をやめた。辛いだけだから、苦しいだけだから。心を閉ざしてしまった。
十数年後。法官として勤めるエメリック公爵によって伯爵の罪は暴かれた。そして公爵はレイの並外れた才能を見抜き、言うのだった。
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養女として迎えられたレイは家族のあたたかさを知り、貴族の世界で成長していく。
前題 公爵家の養子になりました~最強の氷魔法まで授かっていたようです~
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