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36.

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 土曜日の午後の劇場は非常に賑わっていた。
 馬車を降り、護衛にエスコートさせて入口へと向かえば、赤毛に緑眼の美形教師が柱に凭れて佇んでいた。
「モーガン先生、ごきげんよう」
「やぁ待っていたよマーシャ嬢。とても美しいね」
「ありがとうございます」
 家まで迎えに来られてしまっては関係を疑われかねないので、ここで待ち合わせをしたのだった。
 「とても優秀な先生が気に入って下さったの。メイドや護衛も一緒で構わないとおっしゃっているので、行ってもいいですか?」と両親に頼み、遅くならないこと、二人っきりにならないことを約束して許してもらったのだった。
 正直、観劇の内容に興味はない。
 だがいざという時、この教師が役に立つ日が来るかも知れないので、離れすぎないよう、近すぎないよう、気をつけながらキープしておきたいのだった。
 教師は観劇を観ながら話しかけてくる。
 相づちを打ちながら楽しいということを伝えれば、教師は嬉しそうに笑うのだった。
「気分転換は出来た?」
「はい、今日はありがとうございました。とても楽しかったですわ」
「それは良かった。また誘っていいかい?」
「光栄です。メイドと護衛は一緒になりますけれど、それでもよろしければ」
「もちろん」
 馬車留めで別れ、マーシャはご機嫌だった。
 帰宅し、冒険者ギルドからの呼び出しを受けるまでは。
 不審がる両親とメイド達と共に通知を受け取ったマーシャは、首を傾げた。
「何故わたくしが呼び出しを受けるのかしら?」
「…坊ちゃまの件でしょうか?」
「…あいつは…姉にまで迷惑をかけようとしているのか…」
 ソファに力なく腰掛け項垂れる父親と、父の肩に縋るように手を置いて俯く母親。
 弟はあれから部屋に引きこもり、時折暴れているらしい。
 第二王子とのパーティーも解消され、友人として不適格の烙印を押され関わることを禁じられたという。
 第二王子は王宮で過ごしているというが、どのように過ごしているのかは聞こえてこない。公式の場も自粛しているようだった。
 噂はあっという間に国内を駆け巡り、第二王子の失態と、王太子殿下の英断が同時に語られている。
 王家の権威と信頼は、王太子殿下によって保たれたのだった。
 そして、パーティーメンバーだった侯爵令息と魔術師団長の次男に非難が集中することになった。
 主君を止めないどころか、一緒になって愚行を犯した失格者。
 それが彼らへの評価だった。
 十三歳、という年齢を考えれば厳しい評価であるといえる。
 だが無理矢理人を追い出して、クリアフラグを奪うなんてひどいやり口である。
 強盗と同じであった。
 マーシャは自業自得だと思っていたし、同情もなかった。
「セシルのことでしたら、わたくしがお話できることなどございませんが…」
「お嬢様、こちらにはいつもダンジョン攻略に赴く人員と装備で来るように、とございます。お嬢様自身に何か用があるのでしょうか」
「わからないわ。でもそう書いてあるなら、従うしかないわね。アンナ、手間をかけるけれど、準備してもらえるかしら」
「とんでもございません、お嬢様。すぐに準備致します」
 礼をして部屋を出ていくアンナを視線で見送りながら、マーシャは両親に向き直る。
「わたくしは何も後ろ暗いことなどございません。ご安心下さいませ。わたくしも準備がございますので、失礼致します」
「ああ…くれぐれも気をつけて行ってきなさい」
「はい」
 日曜日、午前八時厳守、という早い時間でありながら、冒険者ギルドでは多くの冒険者がすでに活動していた。
 掲示板を見ている者、換金している者、少し離れたテーブルとイスに座って情報交換をしている者、壁に凭れ掛かって何かを待っている者、受付で何かを話している者。
 マーシャが中に入ると、一斉に視線がこちらを向いたが、注目されることには慣れていた。
 いつもギルドへ行けば、同じように見られるからだ。
 マーシャと、メイド達が珍しいのだろうと気にも留めずに受付へと歩き、呼び出しを受けていることを告げれば、すぐに二階の会議室の一つへ通された。
 中に入ると、ギルドマスターと数人の冒険者がすでにソファに座っており、一人掛けのソファを勧められてマーシャは腰掛ける。
「おはようございます。今日はどのような内容で、わたくしは呼ばれたのでしょうか」
 今のマーシャの立場は、侯爵令嬢ではあるけれどもCランク冒険者である。
 ギルドマスターには敬意を払わなければならないのだった。
 ギルドマスターは、ソファに座っている三人に視線を向けて、マーシャに紹介をした。
「こちらの三名はAランク冒険者。今日は君の監視役として参加してもらう」
「…監視役、とは?」
 首を傾げながら問えば、ギルドマスターと冒険者は互いに視線を交わし、驚いたようにこちらを見る。
「何故呼ばれたのか、わからない?」
「わかりません。弟の件でしたら、わたくしにお話しできることはございませんけれど」
「…はぁ」
 Aランク冒険者の一人が、大仰にため息を付いた。
 浅黒く筋骨隆々というべき大きな体格で、左側の額から目、頬にかけて縦に大きな傷跡を残した、黒髪灰瞳の男である。
 この世界は回復魔法が優秀であるので、傷跡を残さず治療することは可能だ。
 消さずに残しているということは、威嚇の意味か、自戒の意味か。
 とにかく、あえて残しているということだった。
 マーシャの向かいの一人掛けソファに座っており、おそらくパーティーのリーダー格と思われる。
「…なんですの?」
 気丈に返すが、男は肩を竦めて答えず、マスターへと視線を向けるのみだった。
 ギルドマスターは頷き、マーシャへと向き直る。
「君が不正にランクを手に入れたという報告が上がっている。故に、Cランクに上がるに相応しい実力を持っていることを証明してもらう」
「…は?」
「二十階のボスをもう一度倒してもらう」
「お待ち下さい!」
 声を上げたのはアンナだった。
「…何か?」
 ギルドマスターが不快げに眉を顰めながら答えれば、アンナは控えていた背後から一歩前に出た。
「お嬢様は正しく二十階に到達し、ボスを討伐されました。そこに疑念の余地などございません!」
「疑念の余地があるから今この状況になってるんだが、頭が悪いのか」
 リーダー格の男が呆れを隠さずため息を付きながら言うが、アンナは食ってかかった。
「どこの誰ですか、そのような無礼な物言いをつけたのは。お嬢様は筆頭侯爵家の令嬢であらせられます。到底許されることではございませんよ!」
「筆頭侯爵家のご令息だよ」
「はあ?」
「その令嬢に物言いをつけたのは、令嬢の弟だ。納得したら口を閉じてろ、メイドふぜいが」
 男が高圧的な物言いで、アンナの口を封じる。
 この男はおそらく本当に強いのだろうと思われた。
 威嚇一つで、部屋の空気が震えたのだった。
「…セシルが…?」
 マーシャが呟けば、男は「そうだ」と頷いた。
「すでに調査済みだ。これは決定事項だ。グダグダごねる分、おうちに帰る時間が遅くなるぜ。俺らはすでに前払いで報酬は受け取っているし、延びるようなら延滞料金ももらえる契約になっている。いつまででも付き合ってやれるが、筆頭侯爵家であらせられるお嬢様は、何日もダンジョン攻略で籠ってても許されるのか?」
「え…」
「さっさとダンジョンに行くぞ。立て。行動しろ」
「…ま、待って下さい。ほ、本当に?」
 事態が予想もしなかった方向へと動いており、マーシャは戸惑う。
 正面に座る男が面倒くささを隠しもせずに、片眉を上げて舌打ちをした。
「何だ?理解が遅いな。決定事項だと言っただろうが。逃げたら冒険者資格剥奪、討伐できなきゃランク剥奪。簡単なことだ、ボスを倒しゃいいんだからな。実力を示せばお咎めなしだ。これからも将来有望な冒険者として頑張ってくれ」
 男の言い分に、逃げ場がないことを理解する。
 マーシャは仕方なく頷き、立ち上がった。
「では少し、準備する時間を頂けますか。午前十時に、ダンジョン前広場で待ち合わせにして下さいまし」
 やらねばならないことを考えながら言えば、男は大声で笑い始めた。
「ははっ!聞いたかギルマス。こいつ、Aランク冒険者に待ちぼうけしてろとぬかしやがった!すげぇな、さすが筆頭侯爵家様は格が違うな。王族の皆様ですら俺らの都合を聞いてくれるのにな!」
「…申し訳ない」
 ギルドマスターが謝り、男はギルドマスターの肩を叩く。
「なんであんたが謝るんだ。あんたは何も悪くない。Cランクごときに舐められる俺達がまだまだ未熟なんだよ、なぁ皆?」
 じっと黙して座っていた後衛とおぼしき男女二人は、笑いながら頷いた。
「そうだな。Cランクごときに舐められる、俺達はまだまだだな」
「本当に。Cランクごときに舐められる、私達って本当にダメね」
「そういうことだ。ギルマスは何も悪くない。じゃ、俺らは時間までのんびり茶でも飲んでようか」
「賛成」
「どうせならダンジョン城二階のレストランに行かない?私あそこのイチゴパフェを食べたいわ」
「じゃ、行くか」
「俺はコーヒーゼリーパフェを食べてみたいな」
「夏限定らしいわよね。美味しいのかしら」
「知らね。つか、パフェって甘いじゃねぇか。俺は普通のコーヒーでいいや」
「おっさんはこれだから…」
「いやいやおっさんは関係なくね?」
 三人は賑やかに言い合いながら立ち上がり、ギルドマスターにだけ礼をして、マーシャ一行を置いて出て行った。
「ぼんやりしている時間があるのかね」
 立ち尽くすマーシャに言葉をかけるギルドマスターの表情は冷たい。
「何をしたいのか知らないが、彼らを二時間も待たせるんだ。さっさと行きなさい」
「…失礼致します」
 そんな言い方をしなくてもいいではないか、とマーシャは思う。
 普通に言ってくれれば伝わるにも関わらず、突き放したような物言いをするギルドマスターは嫌いだ、と思った。
 ボスを討伐すれば問題はないのだ。
 メンバーを募らなければならなかった。
 会議室を出て、アンナを振り返る。
 怒りに顔を歪ませているメイドに、「メンバーを募らなければならないわね」と言えば、はっとしたようにマーシャを見た。
「さようでございますね。一足先に向かいます。お嬢様は護衛と共にいらして下さい」
「ええ、いつもありがとう、アンナ」
「もったいないお言葉でございます」
 駆け足で去るアンナがとても頼もしかった。
 三十を過ぎている彼女は、一度結婚に失敗しているのだと言う。
 生まれたばかりの子供を病で失い、愛人に子が出来たと夫に離婚を切り出され、メイドになったのだそうだ。
 娘のように可愛がってくれていることを知っていたし、アンナのことはとても信頼している。
 彼女に任せておけば、安心だった。
 護衛と共にダンジョン都市へ向かい、広場が見えるカフェで待つ。
 約束の十時前には、なんとかメンバーが集まったようだった。
 引率として雇ったBランク冒険者二名、Dランクの前衛と後衛を一名ずつ。
 掲示板前で進行についての説明をしていると、Aランク冒険者三名がやって来た。
「お待たせ致しました。メンバーが揃いましたので、いつでも出発できますわ」
 声をかけると、リーダー格の男は募った冒険者を一巡して眺め、またマーシャへと視線を戻した。
「人数多くねぇか?」
「こちらは、二十階まで引率して下さるBランク冒険者の方々です」
「引率!」
 Aランク三名が驚いたように声を揃え、そして顔を見合わせた。
 代表して男がこちらを向いたが、その表情は伺い知れないものになっていた。
「そうか。じゃ、さっさと行こうや。俺達はただの見学者だ、よろしくな」
 前半はマーシャに、後半はBランク冒険者達に向けて言い、三人組はさっさと転移装置へと歩き出した。
「行きましょう」
 十一階に飛ぶと、三人組はマーシャ達から離れ、後ろへと回った。
「どうぞ、進行してくれ」
 完全に傍観者の構えだった。
 そこから二十階に到達するまで、Aランク冒険者達は一切関わって来ず、距離を置いてついて来た。
 二十階に到達したところで、Bランク冒険者は帰って行った。
 そこで初めてリーダー格の男が近づいてきて、ボスに挑戦する三名に告げる。
「中に入るのはこの三名。だが今回は特例として、俺とキャリーの二名が監視として中に入る。入ってすぐの扉に張り付いて見ているだけだ。手出しはしない。これは冒険者ギルドから許可が出ている」
 許可証を見て、参加して来たDランクの前衛と後衛の男が不安そうな顔でマーシャを見てくるが、無視をした。
「通常通り戦闘してくれれば構わない。こちらは手出ししないので、討伐できればクリアフラグは手に入る。もし、無理そうだったら入口扉から外に出ること。外に出るまで俺達は見ているだけだ」
「はい」
「ではどうぞ」
 マーシャ達が中に入るのを促して、後ろについて男とキャリーと呼ばれた後衛の女が中に入る。
 後衛の男は扉の外に残るのだそうだ。
「俺はここで戦闘終わるまで待機」
「よろしく」
 中に入り、言葉通り男とキャリーは扉の所で立ち止まった。
 Dランクの三人は中央へと歩み寄り、簡単な作戦を話し合う。
「俺が盾役、二人で回復と攻撃を交代で。…どっちが先に攻撃する?」
「俺でいいかな?」
「ええ。わたくしが回復でよろしくてよ」
「…じゃ、行きますか」
 スライムの戦術を知っているということは、何度か戦闘経験があるか、誰かから聞いたのだろう。
 倒せそうだ、と内心安堵し、マーシャは杖を握りしめた。
 前衛が中央広場のスライムに突っ込んで、戦闘開始だった。
 マーシャは作戦通り回復魔法を飛ばすが、前衛の体力はじりじりと削られていた。
「おい、回復が足りないぞ!」
 前衛が叫ぶが、マーシャは心外だった。
「きちんと回復しているでしょう!文句を言う前に、攻撃をかわしたらどうなの!?」
「はぁ!?」
 重い一撃を食らって、前衛が吹っ飛んだ。
 反応が遅れたマーシャに代わって、もう一人の後衛が回復を飛ばす。
「回復が満足にできないとかマジかよ…。おい、あんた攻撃に回れよ」
「い、言われなくともわかってるわよ!」
 冒険者の男共は、本当に育ちが悪く、口も悪い。
 平気で女性に暴言を吐くし、優しくもないし、思いやりの欠片もなかった。
 攻撃魔法を撃っていると、後衛男が耐えかねたように怒鳴り出す。
「おいおまえ!さっきから舐めてんのかよ!そんなダメージじゃ一日かかっても倒せねぇよ!真面目にやれよ!」
 マーシャに向かって投げられた言葉に、憤慨した。
「さっきからなんですの!?無礼な!真面目にやっているじゃないの!何様なのよ!そう言うなら、あんたこそさっさと倒してみせなさいよ!」
 怒りに任せて攻撃魔法を撃った。
「あっ…」
 前衛が声を上げ、そちらを見ればスライムがこちらに向かって突進して来ていた。
「きゃぁあぁああ…ッ」
 声が途中で途切れた。
 触手が伸びて、顔面を叩かれた。
 吹っ飛ばされ、沼に落ちた。
 沼は浅く、立てば膝程の深さしかないが、マーシャは立ち上がれなかった。
 どうやら回復されたようで、すぐに目は覚ました。
 汚い沼に沈んでいる己に気づき、今度は嫌悪の悲鳴を上げながら立ち上がる。
 必死に中央の広場に這い上がるが、泥臭さと草の生臭さに、吐き気がした。
「下手くそかよ!ボス動かしてんじゃねぇぞ!」
 前衛が叫び、後衛男も頷いた。
 だがマーシャはそれどころではない。
 汚水を吸って重くなった衣服、張り付く髪、どこかに飛んでいった杖。
 戦闘どころではなかった。
「いやぁああッ!!汚い!!何よ!!何で助けてくれないのよぉ!!」
 叫びながら、浄化魔法を使って全身を綺麗に戻す。
 風魔法を使って髪と衣服を乾かした。
 癇癪を起こしながら自分の外見を整え始めたマーシャを見て、前衛と後衛男は戦闘の無駄を悟り、何故Aランク冒険者が監視しているのかを理解したのだった。
 魔力が尽きさえしなければ、二人でも倒せるかもしれない。
 だが魔力は尽きるし、ポーションは無尽蔵ではない。
 そもそも、こんな戦力にもならないお荷物令嬢を抱え、必死にアイテムを使ってまでボスを倒す必要性を感じなかった。
 何故こんな奴にまで、クリアフラグをくれてやらねばならないのか。
「…入口まで引っ張る。回復任せていいか」
 前衛が後衛男に話しかけ、後衛男は即答した。
「任せろ。走ってくれ」
「おう!」
 マーシャのことは放置して、二人は入口へ向かって全力で走り出した。
「…え…っ?ちょっと、何やってるのよ!!戦闘はこれからでしょう!?」
 叫ぶマーシャを無視して、走る。
 扉前にいたAランク冒険者の二人は、ボスの感知範囲からいつの間にか離れていた。
 宣言通り、見ているだけを貫くようだった。
 一目散に入口へ走り、前衛が扉を開けて外に走り出た。
 ターゲットを見失い、戸惑っているスライムの横を後衛男が走り抜け、扉の外へと出て行った。
 残されたマーシャもまた外へと向かって走っていたが、二人が出て行き扉が閉まって、スライムが振り返る気配がした。
 以前にも経験した、足が竦む感覚にマーシャは震えた。
「ひどい…ひどい…!!何でわたくしを置いて逃げるのよぉ!男ならわたくしを守りなさいよ!!何でよもう!信じられない!!」
 叫んでも、もう相手は扉の外だった。
 スライムが近づいて来る。
 Aランク冒険者に助けを求める為視線を向けるが、彼らは腕を組んで壁際でただ見ていた。
 腹を立て、マーシャは彼らに向かって怒りをぶつける。
「ちょっと!!見てないで助けなさいよ!何の為にいるの!?わたくしが死んだらどうするのよ!!」
 だが何の反応も示さない。
 さらに叫んでやろうと口を開くが、言葉は出なかった。
 触手に、腹を攻撃された。
 体中に熱と痛みが走り、息が詰まった。
 せっかく走ったというのに中央広場付近まで吹っ飛ばされ、マーシャは床を転がる。
「いたい…いたい…っいたいぃい…っ」
 呻くことしかできず、身体を動かせない。
 何故助けてくれないの。
 何故見ているだけなの。
 わたくしが死んでもいいっていうの?
 まだ彼らは動かない。
 スライムはこちらへ近づいて来ている。
「いや、いや…なんで、なんで、なんで…ッ!!」
 いつもそう。
 ここでは誰も助けてくれない。
 誰も彼もが我先にと逃げ出して、マーシャのことなど見向きもしない。
 こんなに頑張っているのに。
 ひどい。
 皆、優しくない。
 為す術もなくスライムの追撃を食らって、マーシャの意識は暗転した。 
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