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嗚呼、救いようがなかったですわね

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「貴方とアンジェリカ嬢との婚姻は、国の安寧の為なのですよ!?」
陛下の悲痛な叫びが広間に響きます。
 
まぁ、そうですね。
説明させていただきますと、私の家、ザラーク家は王家への輿入れを幾世代かごとに繰り返してきました。
というのも我が家にはある「固有の能力」があるからなのですが。
……何故王家に重宝されるのか、定期的に婚儀を結ぶべきと思われているのか、彼の方は分かっていらっしゃるのでしょうか?

「≪解析≫など、職人や術師連中が持っていればいいではありませんか!何故それが国の安寧に繋がるというのですか。いくら母上とて……」
「大馬鹿者が!」
あらあら。流石女王陛下、『女性の武器は知性と心身の美貌、そして扇』と事あるごとに仰っていたのは伊達ではなかったのですわねぇ。

「アンジェリカ様……」
「あら、マリアンナ。良く気づかれずにこちらに来れたわね」
「あの状況で私のことも見ていられたら馬鹿とは、失礼、少し頭が弱くていらっしゃるとは言われなかったと思います」
「それもそうですわね」

振り向けばそこには先ほどバ……もう馬鹿でよろしいですか?馬鹿に肩を抱かれていた少女の姿が。
普通ならここで『この女狐!』などと叫ぶのが様式美というものですが。私たちの場合は少し違うのですよ。

「女王陛下、そこまでになさっていただけると幸いですわ」
そろそろ説明をいたしましょう。予想より大事になってはしまいましたが。
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