聖女のち性欲処理からの

よしゆき

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 蒼はゆっくりと目を覚ました。ぼんやりと視線を動かすと、隣にいたテオドールと目が合う。こうして彼の横で目覚めるのは蒼にとっては日常なので驚くことはない。

「起きたのか?」
「うん……。おはよう……」

 ぼうっとしながら、体を起こす。そこで自分が寝間着に着替えていないことに気づいた。

「あれ……僕……あれ? 昨日、テオドールと一緒に寝たんだっけ?」

 パーティーに参加せず、一人で過ごしていた。用意してもらった酒を飲んで、だんだん頭がふわふわして、それからカミルが部屋に来たような気がする。でもその辺りからの記憶が薄れ、よく思い出せない。

「覚えてないのか?」
「もしかして僕、酔っ払って迷惑とかかけた……?」

 蒼白になって尋ねる。

「酔っ払ってはいたけど、別になにも」
「そ、そっか。よかった……」

 テオドールにあっさり否定され、ほっと胸を撫で下ろす。

「起きたんなら、さっさと準備しろ」
「え……?」
「もう城に用はない。帰るぞ」
「あ、う、うん、わかった……」

 蒼は急いで浴室に向かった。
 汗を流しながら、テオドールの言葉の意味を考える。
「帰るぞ」というのは、蒼も一緒にテオドールの家に帰るということでいいのだろうか。それとも……。
 考えてもわからず、テオドールに尋ねることもできず、いつの間にか集まっていた勇者一行と一緒に城を出る。
 ローベルトは城に勤める騎士団長なので、彼とはここでお別れだ。
 年長の彼はいつも皆をまとめてくれていた。どっしりと落ち着いていて、お父さん的存在だった。
 蒼は差し出された彼の手を握る。しっかりと握手を交わした。

「元気でな、アオ。テオドールはまだ子供で大変なことも多いだろうが、アオが一緒ならうまくやっていける。頑張れよ」

 ローベルトはそう言って微笑んだ。
 彼は他の仲間ともそれぞれ握手を交わし、一人一人に声をかけていた。
 別れを惜しみつつ、見送るローベルトを残し馬車は走り出す。
 御者をつとめるユリアルマが、馬車で全員を送ってくれることになったのだ。ローベルトを除いたいつものメンバーが乗っている。
 カミルは何故かずっと落ち込んでいる。蒼は自分が昨日彼に言ったことを一つも覚えていなかった。彼がどうしてこんなにもショックを受けているのかわからない。けれど特に気にはならないので放っておいた。
 テオドールもカミルのことなど気にも留めていない。
 エリーゼが気を遣って「元気を出して下さい」と声をかければ、カミルは調子に乗って「エリーゼちゃんが慰めてくれたら、すぐに元気になるよ」と言った。

「申し訳ございません。お断りさせて頂きます」

 口調は丁寧だが、エリーゼは汚いゴミを見るような目でカミルを見ていた。
 カミルは更に深く落ち込んだ。
 次はそんなカミルと別れる番だった。

「もう二度と会うことはないでしょうが、お元気で」

 エリーゼは丁寧に深々とカミルに向かって頭を下げた。
 馬車を降りたカミルは泣きそうな顔で、「う、うん……皆も、元気で……」と震える声で言い手を振る。
 もしかしてカミルはパーティーメンバーに嫌われていたのではないかと蒼は思った。勇者一行として一緒に旅はしてきたが、それがなければ一生関わりたくない相手だと蒼も思っている。
 カミルを置いて、馬車は再び走り出した。来たときと同じように、町から町へと移動する。
 そしてエリーゼとの別れのときがやってきた。

「アオさんが一緒に旅をしてくれてよかったです。本当にありがとうございます」

 エリーゼに礼を言われて蒼は焦る。

「そ、そんな、僕なんてただの雑用係で……」
「いいえ。アオさんがいなければ、きっとすごく大変だったと思います。……色々と」

 言いながら、エリーゼはテオドールにそっと視線を向けた。離れた場所にいるので、彼にこちらの会話は聞かれていない。

「アオさんのお陰で、楽しい旅になりました」
「こ、こちらこそ、エリーゼと旅ができてよかった。エリーゼの笑顔と優しさにいつも癒されてたよ。ありがとう」

 はにかみながらも、蒼は素直に気持ちを伝えた。
 握手を交わしたあと、エリーゼはテオドールにも別れの挨拶をしに行く。
 エリーゼと教会の前で別れ、馬車ははじまりの町へと向かった。
 テオドールの暮らす町と家を見ても、蒼は懐かしさは感じない。見て回る暇もなく旅ははじまったから。
 けれど、旅の始点に帰ってきたのだと思うと感慨深い。長かった旅が本当に終わったのだと実感する。

「あ、蒼さん」
「ん?」
「元の世界に帰りたいと思ったときは、いつでも遠慮せず私を呼んで下さいね。呼んでくれれば私に声は届きます。私がすぐに向こうへ送りますから」

 別れ際、ユリアルマはテオドールには聞こえないよう蒼に言った。

「テオドールのお世話は大変でしょうが、頑張って下さい」
「えっ、あ、う、うん……」

 ローベルトにも似たようなことを言われたけれど、そうは言われても、蒼がこれからもテオドールと一緒にいられるのかはわからない。
 曖昧な返事をする蒼に、ユリアルマは微笑んだ。

「大丈夫ですよ、蒼さん。テオドールは嘘はつかないです。傍にいてほしいというのは彼の本心です。だからもっと自信を持って下さい」
「ユリアルマ……」

 にっこり笑って、ユリアルマは蒼から離れた。

「じゃあ、私はこれで失礼しますね。テオドール! わがまま言って蒼さんを困らせちゃ駄目ですからね!」
「うるせーな。ガキじゃねーんだぞ」
「子供じゃないですか!」
「いいからとっとと帰れ、チビ」
「まったくもー! 最後まで可愛くないんですから!」

 ぷんぷんしながらユリアルマは馬を操り走り去っていった。
 テオドールと二人になり、急に緊張してきた。
 そわそわと落ち着かない蒼に気づかず、テオドールは自宅のドアを開ける。

「うわ、ホコリ積もってんな。まず掃除だな」

 言いながら部屋に入っていき、こちらを振り返る。

「手伝えよ、アオ」
「あっ、う、う、うん……っ」

 蒼も彼に続いて中に入った。
 それから、二人で部屋中を掃除した。
 蒼はここで一緒に暮らしていいのか。出ていった方がいいのか。
 これからのことを尋ねたかったが、それは後回しになった。
 掃除が終わった後は食料の買い出しに出掛けた。
 町の住人はテオドールが勇者だということを知らない。テオドールが敢えて言わなかったからだ。
 王都で勇者一行のパレードが開かれる予定だったが、テオドールが断固拒否したそうだ。国民を集め勇者一行を表彰するという催しも、同じ理由で行われなかった。
 目立つのを嫌うテオドールを、勇者だと知っている者は限られているのだ。
 だからテオドールは、この町の住民にもただ長い旅行に行くと説明していた。

「あら、帰ってたのテオ坊」
「テオ兄ちゃん、お帰り!」

 魔王討伐を労われることもなく、近所の人にも軽い挨拶で済まされたがテオドールはそれで満足なようだった。
 食材を買い込み、家に帰って料理を作る。子供の頃に両親を魔物に殺されてしまったテオドールは一人暮らしが長く、意外にも料理が上手だった。蒼も元の世界にいるときは自炊していたが、向こうとこちらでは食材が違うのでテオドールの指示に従って手伝うだけにとどめた。
 テオドールの作った料理はどれも美味しかった。「すごく美味しい!」と褒めれば、大袈裟だと呆れられたが、本当に美味しかったので作り方を教えてほしいと頼み込んだ。料理について話をしながら食事を終え、順番に風呂を使った。入浴を済ませた後、蒼はテオドールの衣服を借りてそれに着替えた。
 そして、二人は寝室にいた。ここははじめてテオドールと出会い、彼の童貞を奪った思い出深い場所だ。
 ベッドの上で胡座をかくテオドールの正面に、蒼は正座する。
 真面目な雰囲気で話があると言われ、蒼は緊張していた。

「俺が言ったこと、覚えてるか?」
「え……?」
「お前に、傍にいてほしいって」
「うん、もちろん、覚えてるよ」

 忘れられるはずがない。あの一言に、蒼がどれほど歓喜したか。
 テオドールはしっかりと蒼を見つめている。真剣な顔で、その瞳には緊張が滲んでいるように見えた。

「改めて言う。俺はアオに傍にいてほしい。それは、これからもずっとって意味だ」
「こ、これからも……ずっと……」
「アオが好きだ。だから、ずっと俺の傍にいてほしい」
「っ……」

 彼のまっすぐな言葉に、胸が詰まって声が出ない。

「お前は、アオ? 今も、気持ちは変わらないか?」
「か、変わらない、よっ……。テオドールが、好き……ずっと、一緒にいたい……っ」

 涙が込み上げて、つっかえながらもきちんと気持ちを伝えれば、テオドールは柔らかく目を細めた。

「そうか」

 優しく抱き締められ、涙が零れそうになる。

「泣くなよ」
「な、泣いてないよ……っ」

 ぎゅうっとテオドールの肩にしがみついたとき、ふと右手の指輪が目に入った。

「そ、そういえば、あの……」
「ん?」
「指輪をはめる指には、意味があるって……。テオドールは、どうしてこの指にはめたの……。理由、あるの……?」
「……あのチビ」

 ユリアルマの入れ知恵だと、テオドールはすぐに気づいたようだ。
 舌打ちするテオドールに、蒼は慌てて言った。

「あ、あのっ、言いたくないなら、言わなくても大丈夫……っ」

 もうテオドールの気持ちは聞けたのだ。蒼はそれで充分だった。

「いや。別に、言いたくねーってわけでもねーし。ただあのチビが唆したっていうのが気にくわないだけだ」

 そう言って、テオドールは体を離す。蒼の右手を取り、薬指の指輪に触れた。

「右手の薬指に指輪をはめるのは、相手を自分だけのものにしたいって意味が込められてる」
「っ……」
「だから、この指にはめたんだ」

 その言葉に、ぽろりと涙が零れてしまった。

「泣いてんじゃねーか」
「うっ、な、泣かない、よ……っ」

 ぐぐっと涙をこらえ、そして蒼は満面の笑みを浮かべた。こんなにも嬉しいのだから、泣くのではなく笑顔を見せたかった。

「教えてくれてありがとう、テオドール。すごく、嬉しい」

 テオドールも笑みを浮かべた。その笑顔は優しく、愛おしむように蒼を見つめる。
 自然と二人の距離が近づき、どちらからともなく唇を重ねた。
 触れるだけのキスは徐々に深くなり、互いに舌を絡ませる。交わす口づけはとても甘くて、堪らなく気持ちいい。
 キスをしたままベッドに押し倒される。
 じゅるっと舌を吸われ、快感に体が震えた。ぞくぞくと肌が粟立つ。身も心も蕩けていく。
 頭がくらくらして、胸がドキドキして、胎内がきゅんきゅんして、キスしかしていないのにどんどん下半身に熱が集まって、蒼は慌てて顔を離した。

「んぁっ、ま、待って、テオドール……っ」
「なんだよ」
「ごめっ、もう、下着汚しそうで……」

 真っ赤になって伝えると、テオドールにズボンと下着を剥ぎ取られた。
 ペニスもアナルも、既に蜜で濡れている。

「キスだけでこんなに濡らしてんのか」

 テオドールの意地悪な囁きにさえ感じてしまい、ペニスの先端から新たな蜜がたらりと垂れた。

「触ってもないのに漏らすとか」
「んゃっ、ご、ごめ……っ」
「なに謝ってんだよ。お前がエロいのはもうわかってるっての」

 楽しげな笑みを唇に乗せ、テオドールは下肢に顔を寄せた。滴る先走りを舐めとるようにペニスに舌を這わせる。

「ひあぁっあっ、らめっ、んっあっあぁんっ」

 ペニスをねぶりながら、テオドールの指が後孔に触れた。大聖霊の加護が残るそこはぐっしょりと濡れ、ひくひくと口を開けて指を飲み込もうと収縮している。
 焦らすことなく、指が中に埋め込まれた。腸壁が悦ぶように指に絡み付き、蠢く。
 内部をぐちゅぐちゅと掻き回し、反り返るペニスを舐め回す。

「んあぁっあぁっ、らめ、ておぉっ、あっやあぁっ、離してぇっ」
「なんでだよ」
「あっやっ、もう、いっちゃ、すぐ、出ちゃうからっあっひあぁっ」
「出せばいいだろ」

 いやいやと首を振る蒼のペニスを、テオドールはぱくりと口に咥えてしまう。
 じゅぷじゅぷと口でペニスを刺激しながら、二本に増やした指で前立腺を押し潰した。
 前と後ろを同時に攻められ、強烈な快感に蒼は呆気なく絶頂へと上り詰める。

「んひゃああっあっ、いくっいくっ、あっ、あ~~~~~~っ!」

 びくびくっと体を痙攣させ、蒼はテオドールの口の中へ放った。
 ごくっと喉を鳴らす音が聞こえ、羞恥と申し訳なさに涙が零れる。
 顔を離したテオドールに、恨みがましい視線を向けた。

「ふっうっ……だめって、言ったのに……っ」
「別にいいだろ、俺がしたくてしたんだから」
「よくないよ……っ」
「いいから、余計なこと考えないで気持ちよくなっとけ」
「んぁんっ」

 埋め込まれた指が、内壁を擦り中を解していく。
 後孔は彼を求め、すぐに柔らかく綻んでいった。
指では足りないと、ねだるようにきつく中を締め付ける。
 ちゅぽっと指を引き抜かれた。蜜を漏らす後孔は、期待にぱくぱくと開閉を繰り返している。

「テオドールぅ……っ」
「ん。入れるぞ」

 ピタリと押し当てられた熱塊に、後孔がちゅうちゅうと吸い付く。
 ぐっと押し込まれれば、内部がそれを迎え入れるように蠢動した。

「はっ、飲み込まれる……っ」
「ひっあっああああぁっ」

 ずぶずぶずぶっと隘路を押し広げ、一気に奥まで貫かれる。
 胎内をいっぱいに満たされる快感に、蒼は目を見開き背中を弓なりに反らせた。びくびくと全身が痙攣する。

「はひっひあっあっあぁっ」
「っは……イッたのか?」
「んあっあぁっんっ、いっちゃった、あっひぅんっ」
「すげ、中、うねって……っ」

 搾り上げるような肉筒の動きに耐え、テオドールはゆっくりと抽挿を開始する。

「ておっ、テオドールぅっ……」

 縋るように両腕を伸ばせば、テオドールは上体を倒してキスをしてくれた。

「はんっ、んっはっ、ぁんんっ」

 ずんっずんっと体を揺さぶられながら、唇を合わせて舌を擦り合わせる。
 衣服の裾から潜り込んできたテオドールの手が乳首をくにゅくにゅと捏ね、その刺激にペニスからぴゅくっと蜜が溢れた。

「んひぁっあっ、きもちぃっ、あっあっあっああぁっ」
「どうされるのがいいんだよ? 奥ガンガン突かれるのか?」
「ひはっはっあっあっひんんっ」
「それとも、浅いとこぐりぐり押し潰されるのか?」
「んああぁあっあっあんっあっひあぁんっ」
「どれがいいんだ? 教えろよ、アオ」

 ピンと尖った乳首を爪の先でカリカリと引っ掛かきながら尋ねられ、蒼は快楽に蕩けた頭で答えた。

「ぜんぶ、きもちいっ、すきっ、すきぃっ、ておっ、あっあっあっ、ておどーるぅっ、すきっ」
「っくそ、煽りやがって……っ」

 余裕のない呟きを漏らし、テオドールは律動を速める。

「んひっあっひっあっあっあっあっ、ておぉっ」

 蒼は彼の体にしがみつき、絶頂を迎えた。
 同時に、ぎゅぎゅうぅっと直腸が剛直を締め付ける。

「あっ、くっそ……っ」

 その締め付けにつられるように、テオドールも射精した。どぷっと最奥に体液を注がれ、蒼は愉悦に震える。
 うっとりと快楽に浸る蒼とは反対に、テオドールは悔しげに舌打ちした。

「くそ、つられた……っ」

 彼はまだ射精するつもりはなかったようで、出してしまったことに不満そうだ。

「お前の中、気持ちよすぎんだよ」

 言いながらテオドールに優しく頬を摘ままれて、心も体もきゅんきゅんした。

「じゃあ、もっと、して……」

 蒼は蕩けた瞳でテオドールを見上げる。

「テオドールが満足するまで、もっと、いっぱい、たくさん、して……」
「アオ……」
「僕の中、好きなだけ、出して……」

 テオドールは僅かに目を見開き、それから獰猛な笑みを浮かべた。

「俺を煽ったこと、後悔すんなよ」

 蒼はしっかりと頷き、彼に身を委ねた。





 そして蒼は早朝まで離してもらえなかった。
 頭がおかしくなりそうなほどの快楽を与えられ続け、散々に泣かされ、少しだけ後悔したけれど、幸せだった。
 こうしてテオドールの隣で眠れることが。
 彼の傍にいられることが、なによりも幸せだった。
 そしてこの幸せがこれからも続くのだと思うと、涙が出るほど嬉しかった。
 いきなり聖女だと言われ異世界に連れていかれ、勇者の童貞を奪うことになり、なぜか勇者の性欲処理をするために旅に同行させられて。
 そして今、蒼は大好きな人の恋人としてここにいる。
 隣で眠る彼の寝顔を見つめ、その幸せをそっと噛み締めた。






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