恋愛短編まとめ

よしゆき

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酔っ払いは恋を叶える

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 長年、両想いなのに奥手過ぎて片想いのままの二人がお酒を飲んで酔っ払い、一夜を共に過ごして、記憶をなくすけれど最終的に結ばれる話。

 大学生 同級生 淫語


───────────




 磯山いそやま芽依めいには好きな人がいる。梶原かじわらあらたという名のその人との出会いは、幼稚園だった。
 同い年で同じ幼稚園に通っていた彼に、入園式で顔を合わせた瞬間一目惚れしたのだ。それからずっと片想いをしている。
 遠くから見つめるだけでドキドキして、新のことを考えるだけでドキドキして、声を聞いただけでドキドキして、とにかく心臓が破裂しそうなほどドキドキして息が上がって体温は上昇し、眩暈すら感じる。
 そんな状態なので、声をかけることなどできなかった。近寄ることすら難しかった。ただひたすら遠くから見つめるだけの日々だった。
 小学校も中学校も高校も同じで、奇跡的にクラスもずっと同じだったのに、一言も言葉を交わすことはできなかった。挨拶すらできなかった。
 声をかけたい、話がしたい、親しくなりたいという願望はあるが、行動に移す勇気はなかった。遠くから見つめるだけで精一杯だった。自分の胸に秘め、誰かに打ち明けることもなかった。
 ストーカー行為は一切行っていない。本当にただ見つめるだけだ。あとをつけ回したり、私物を盗んだり、盗撮などの犯罪行為は断じて犯していない。
 自分から積極的に新の情報を集めることもしていない。
 だから芽依は彼のことをほぼなにも知らない。
 それでもこの気持ちが冷めることはなかった。見つめるだけの毎日で、少しずつ少しずつ彼を思う気持ちは大きくなっていった。
 大きくなるだけでなにもできず、時間だけが過ぎていった。
 同じ大学に通いながらも、やはりこっそりと見つめるだけだった。
 そして今も、芽依は離れた場所からチラチラと新に視線を向けている。
 今日は成人式だった。久しぶりに高校三年生のときのクラスメイトと顔を合わせた。仲の良かったクラスだったので、成人式の夜は全員で店に集まることになっていた。
 芽依は離れた席に座る新をこっそり見つめながら、はじめてのお酒をちびちびと飲んでいた。隣の友人と話しながらも、意識は新に向いていた。
 自分がもっと社交的な人間だったら、新の傍に行って「隣いい?」なんて軽い感じで訊けたのに。実際の芽依は、馴れ馴れしいと思われるんじゃないかと怖くてそんなことはとてもできない。
 もっと勇気があれば……なんて考えるだけだ。そもそも勇気があるならもうとっくに声をかけている。
 友達の話に相槌を打ちながら、芽依はグラスに口をつけた。





 一方、芽依の想い人である梶原新にも好きな人がいた。磯山芽依である。
 彼らは同時に恋に落ちていたのだ。
 新もただひたすら一途に芽依を思ってきた。思うだけで、芽依と同様に声をかけることはできなかった。遠くからそっと見守る日々を送っていた。それだけでも幸せだった。
 もちろん親しくなりたいとは思っている。できることなら恋人になりたい。
 だがしかし、声をかけることすらできないのに、告白などできるはずもない。
 彼女を好きな気持ちは誰にも負けないなどと思っているが、本人に伝えられなければ意味はなかった。
 新はもともと人と話すのがあまり得意ではない。芽依が相手ならば尚更だ。ちらっと目が合っただけで動悸や息切れが激しくなる。
 打ち明けることができないまま時は流れ、想いだけが募っていく。
 新もまた、遠くから見つめるだけでストーカー行為などは一切していない。秘密裏に芽依の情報を集めたり、縦笛を舐めたり、覗きなどの犯罪には手を染めてはいない。
 今も、新は誰にも気づかれないよう芽依に視線を送るだけだ。メニューを見る振りをしながら、スマホを弄る振りをしながら、そっと彼女を視界にとらえる。
 本当は声をかけたい。彼女の隣の席に座りたい。
 そう思うだけで、一切行動は起こせない。
 彼らは両想いでありながら、奥手すぎるがゆえに片想いのままなんの進展もしない二人だった。





「芽依、大丈夫? 顔赤いけど」
「んー。んー?」

 友人が心配そうに声をかけてきたのは、芽依が三杯目のグラスを空にしたときだった。
 芽依はぼんやりと友人を見つめる。

「芽依?」
「えへ、だいじょーぶ」

 へらりと笑い、立ち上がる。

「トイレ行ってくるね」
「ついていこうか?」
「だいじょーぶだよー」

 芽依は鞄を手に、トイレへ向かった。
 用を足して、手を洗う。
 鏡を見て、確かに顔が赤いな、と思った。
 なんだか頭がふわふわする。でも、気分は悪くない。寧ろ楽しい気持ちになってきた。
 早く戻って、また新の顔を見ながらお酒を飲みたい。そんなことを考えながらトイレを出た。
 出たところで、足がふらついた。

「あっ……」

 よろける体。倒れそうになる芽依を、背後から伸ばされた手がしっかりと支えた。

「大丈夫か?」

 聞こえてきた低い声が、芽依の鼓膜を震わせる。
 ぼうっとした状態で、後ろを振り返った。
 そこには新が立っていた。
 彼の姿を目にした瞬間、胸がきゅんきゅんと疼きだす。
 彼とこんなに接近したのははじめてだ。でも、妄想や夢の中では何度もある。
 つまりこれは現実ではない。夢なのだ。
 芽依は酔った頭でそう判断する。
 現実では声もかけられない。でも夢ならば別だ。いくらでも甘えられる。

「新くん、好きー」

 ぎゅっと、新に抱きつく。
 新のことは人前では「梶原くん」と呼ぶが、妄想や夢の中では勝手に「新くん」呼びしていた。
 一方、抱きつかれた新は硬直した。トイレを済ませて出てくると、同時に女子トイレから芽依が出てきて、倒れそうになった彼女を咄嗟に腕で支えた。すると突然、「好き」と言って抱きついてきた。
 こんなことが現実に起こるはずがない、つまりこれは夢なのだ、と判断した。彼も酔っていた。

「芽依、俺も好きだ」

 ぎゅっと抱き締め返す。
 新も同じく妄想や夢の中で芽依のことを呼び捨てにしていたので、自然と名前を口にした。
 そうすることで、お互いに疑うことなくすんなりとこれは夢なのだと認識してしまっていた。
 現実では声もかけられない分、夢の中では欲求が爆発する。

「嬉しい、新くん。えへへ、大好きー」

 ぐりぐりぐりと新の胸に頬を擦り付ける。

「可愛い、芽依」

 新は芽依の頭を優しく撫で回す。

「新くん、新くん」
「どうした?」
「ちゅーしたい」
「ん」

 軽く突き出された芽依の唇に、新の唇がちゅっと重なる。

「んふふー、新くん大好き」
「俺も芽依が好きだ」

 甘く囁き合いながら抱き合う二人。付き合ってもいないのにバカップルと化していた。
 
「なんかここ、うるさいな」

 それはそうだ。ここは店の中で、店内は客の喧騒で満たされている。
 新の言葉に、芽依も不満げに頬を膨らませる。

「そうだね。なんか気が散るね」

 せっかく新とイチャイチャしているのに、邪魔をしないでほしい。

「移動するか」
「うん! 新くんと二人きりがいい」

 新の提案に、満面の笑みで頷いた。
 そうしてすっかり夢だと思い込んでいる二人は、ぴったり寄り添いながら店を出た。夢なのだから都合よくパッと二人きりになれたらいいのに、と少し不便に思ったがお互い好きな人と一緒にいられるので移動中も幸せだった。
 たまたま店の近くにホテルがあり、たまたま部屋が空いていて、チェックインを済ませて二人は部屋に入った。
 ここでシャワーを浴びていたら酔いも醒めたのだろうが、夢だと思い込んでいる二人はシャワーも浴びずにすぐにベッドへ上がった。
 仰向けに転がる芽依の上に、新が覆い被さる。

「新くん」
「芽依」

 二人はどちらからともなくキスを交わす。妄想や夢の中では散々してきたので躊躇いもない。
 じゃれるように角度を変えて何度も唇を重ね、芽依がそっと舌を伸ばせばすぐに新も口を開いた。くちゅくちゅと音を立てながら舌を絡ませる。

「ん、ふぁ……あらたく、んんっ」
「は、ん……芽依……」

 新の舌に口腔内を舐め回され、芽依は快感に震えた。新の舌にちゅうっと吸い付き、混ざり合う唾液を嚥下する。
 
「ふぅ……ん、あらたく、んん、キス、気持ちぃ、ふ、ぅんっ……好きぃ」
「ん……可愛い、芽依……好きだ……ん、はぁ……芽依の唇、柔らかいな……っ、俺も気持ちいい……」
「うれひ、ん、あらたくんんっ、もっと……」

 激しく唇を重ね、アルコールに酔って火照った二人の体は更に体温を上げる。
 互いに互いの体をまさぐりながら交わす口づけに、どちらも息が上がるほど興奮していた。衣服を乱し、露になった素肌に触れる。
 このままずっとしていたいほど気持ちよくて、でもだからこそ、キスだけでは我慢できなくなる。

「んはっ……新くん、お願、もっと触って……っ」

 芽依は服をたくし上げて胸元を露にする。新が手を伸ばしてきたので、ブラジャーのホックを外しやすいように背中を浮かせた。
 どうして夢なのに都合よく服が消えないのかと、二人はもどかしく思う。そのもどかしさに、余計に興奮した。
 新がブラジャーを上にずらせば、芽依の滑らかな胸の膨らみがぷるんと揺れた。それを見て、新は荒い息を吐く。

「はあっ、芽依……っ」
「あんっ」

 新は両手で乳房を鷲掴みする。ふにゃりと柔らかい感触が掌に伝わってきた。こんなにリアルに感覚のある夢ははじめてで、新は酷く感動した。
 それは芽依も同じで、胸を揉む新の掌の感触に歓喜した。火傷しそうなほどに新の手は熱くて、その熱に溶かされてしまいそうだった。

「んあっあっ、気持ちいいよぉ……っ」
「すげ、柔らけ……っ」

 むにゅむにゅと胸を優しく揉み込まれ、芽依は快感に身をくねらせる。
 徐々に乳首が固く尖り、新の掌に擦れた。

「ふぁっ、あっ、あっあっ」

 芽依は無意識に掌へ乳首を擦り付けるように背を反らせた。
 気づいた新は、指の腹で突起を撫でる。

「ひぁんっ」
「ここ、気持ちいいのか?」
「ひゃっ、いい、気持ちいい、新くぅ、んんっ、あっ、こりこり、しちゃ、あっあっあっ」

 両方の乳首をくりくりと刺激され、芽依の体はびくびくと跳ねる。

「新くん、あっ、新くぅん、気持ちぃよぉ、新くんの指、気持ちいいの、んあっ、あんんっ」
「どんどん固くなって……はあっ、エロい……っ」

 身悶える芽依の胸に顔を近づけ、新は乳輪ごと乳首を口に含んだ。乳輪をねっとりと舐め回し、乳首を舌で弾く。音を立てて吸い上げれば、芽依の嬌声が室内に響いた。

「ひあぁっ、あっあっ」

 柔らかくこりこりと歯を立て、味わうように何度も吸い上げる。もう片方は変わらず指で擦り、両方の乳首を可愛がった。
 しゃぶられ、撫で擦られ、芽依はただ快楽に喘ぎつづける。
 秘所からは絶えず蜜が溢れ、疼きを抑えるように内腿を擦り合わせた。

「あふっ、新く、お願いぃ、も、らめ、はっ、あんっ」
「だめ?」
「お腹、きゅんきゅんして、我慢できないのっ……お願い、こっちも可愛がってぇ」

 芽依はスカートを捲り大きく脚を開いた。びしょびしょに濡れそぼったショーツが晒される。
 夢の中ではどんな痴態を見せようと新に軽蔑されることはない。だから芽依は素直に新を求めた。
 新は下着越しに芽依の秘所を見下ろし、ごくりと喉を鳴らした。

「はあ、はあっ……すごい、濡れて、張り付いてる……」

 興奮した新の零した言葉に、芽依は羞恥と同時に快感を覚えた。

「お願、新くぅん……触ってぇ……」

 我慢できないと懇願すれば、新の手がゆっくりとショーツを脱がしていく。濡れたショーツが足から引き抜かれ、蜜を溢す秘所を隠すものはなくなった。
 夢で芽依のそこがこんなにはっきり見えるのははじめてで、新の興奮は更に高まる。
 欲望のままに犯してしまいたい衝動をこらえ、蜜口へと手を伸ばす。たとえ夢でも芽依を乱暴には扱いたくない。

「あぁんっ」

 軽く指が触れただけで、芽依はびくんと大袈裟に反応した。
 くちゃりと卑猥な音を立て、新の指が花弁を撫でる。

「芽依のここ、ぬるぬるだ……」
「ああっあっあっ、新くん……ひ、んっ」

 花弁を撫で回し、指は少しずれてクリトリスに触れた。

「ひぅっ、あっあっ、ひあぁっ」
「すごい反応……芽依、気持ちいい?」
「あっ、気持ちいい、そこ、そこ、あっあっ」

 指で挟まれ、くりゅくりゅと優しく擦られると腰がはしたなく浮いてしまう。
 強すぎる快楽に襲われ、芽依は腕を伸ばして新にしがみついた。

「あっ、らめ、いく、もういっちゃう、あっいくっ」
「いいぞ、我慢しなくても。ほら」
「あっあっあっ、あっ、〰️〰️〰️〰️っ」

 絶頂へと促すように肉粒を捏ね回され、芽依はびくびくと体を震わせながら達した。

「あっ、いっちゃ……いっちゃったの、新くん……」
「ああ、顔、蕩けきって可愛いな……」

 うっとりとした表情の新に見下ろされ、体の奥がきゅんと疼いた。

「新くん、中も……中も弄って……新くんの指でぐちゅぐちゅしてぇ」
「芽依……っ」

 こんなに卑猥な言葉でねだる芽依の夢ははじめてだ。扇情的な彼女の姿に新は煽られる。
 クリトリスを弄っていた指を、蜜口にそっと押し込んだ。たっぷりと蜜を含んだ肉壁が、新の指を包み込む。中は狭く閉ざされているのに、更に奥へと誘うように蠢いていた。
 あまりにもリアルな感触に、いやが上にも興奮が高まる。

「あっあっ、指、新くんの指、入ってるよぉ……っ」
「すごい、芽依の中、熱くて、うねってる……」

 指で中を擦られ、芽依は快感に首を振り立てた。新の指が入っているという事実に性感を煽られ、余計に感じてしまう。
 身を捩ると、太股に硬いものが触れた。それは新の性器で、そこはズボンの上からでもわかるほどに膨らみ張り詰めていた。
 芽依はとろりと欲情した目でそれを見つめる。

「私も、私も触りたい、新くんのおちんちん触りたいの……っ」

 必死に手を伸ばせば、新はズボンから陰茎を取り出してくれた。
 反り返った新のものが、しっかりと芽依の目に映る。
 今まで妄想や夢ではぼやけていたそれが、今ははっきりと視界にとらえることができた。
 芽依は目に焼き付けるように新の肉棒を凝視する。

「すごい、新くんの、おちんちん……」
「っ……」

 優しく握り込めば、新が息を詰める。

「はっ、芽依の手、気持ちいい……」
「ほ、ほんと……?」
「ああ。もっと擦って」
「嬉しい……っ」
「っ……俺も、いっぱい気持ちよくするからっ」

 大きなそれを懸命に手で擦れば、新の指に中を刺激された。

「あっあっあっ、ひっ、いいっ、気持ちいいの、新くぅんっ」
「んっ……俺も……っ」

 中を掻き混ぜる指は徐々に増やされ、気づけば三本も指を咥え込んでいた。三本の指でじゅぽじゅぽと胎内を擦られ、芽依は快感に喘いだ。
 はくはくと開く芽依の唇に、そっと新の唇が触れる。芽依が舌を伸ばせば、新はすぐに舌を絡ませキスに応えた。
 キスを交わしながら、互いの欲望を高め合う。
 手に握る新のぺニスも先端から先走りを零し、彼も感じてくれているのだと伝わってくる。それが嬉しくて、夢中になってぺニスを扱いた。
 膣内を擦られるのは気持ちいい。でも、指では届かない奥の疼きは治まらない。熱は蓄積される一方で、芽依はもどかしさに身悶えた。

「ひ、あっ、新く……指じゃなくて、新くんのおちんちん欲しいの……っ」
「はっ、はあっ……芽依、ここに俺のちんぽ入れてほしいのか?」
「んあぁっ、あっ、ほしい、ほしいよぉっ、おちんぽ入れてぇっ」
「芽依……っ」

 新は指を引き抜く。
 その感覚に震える芽依の両脚を、新が抱えた。
 熱塊が膣口に押し付けられ、芽依の瞳は期待に揺れる。

「新くぅん……っ」

 誘うように両腕を広げれば、新はぐっと体を前に傾けた。同時に、陰茎がぐりっと挿入される。

「ひうぅっ……」

 ぐぐっと突き入れられ、痛みに目を見開く。
 夢であるのに痛みを感じることに疑問を抱くことはなかった。
 ぴったりと体が重なり、新の背中へと腕を回す。
 痛みは彼を受け入れる悦びに代わり、芽依の膣穴は歓喜に蠢きながら彼の熱を全て飲み込んだ。

「あっあっ、しゅごい、あらたくんの、奥まで、入って……ひっ、ふ、ふぅっ」
「はあっ、あっ……芽依の中、熱い……っ」

 二人ははじめて味わう快感に酔いしれた。
 正に今、処女と童貞を捨てたのだという自覚もないまま、好きな相手と繋がる幸せに浸る。

「あっ、新くん、好き、すき、んっ、しゅきっ」
「はっ、俺も、俺も好きだ、芽依……っ」

 きゅうきゅうと絡み付くように陰茎を締め付けられ、新は我慢できずにゆっくりと腰を動かした。ねっとりと包み込む膣内に、目眩を感じるほどの快楽を覚えた。

「芽依、芽依、はっ、はっ……」
「ひっ、ん、ん、んあっ、あら、た、あっあっあっ」
「はあっ、う……はっ、芽依……っ」
「ひあぁっ」
「ん、すげ、締まっ……」
「あっあっ、そこ、あっあっあっあっ」
「はっ、ここ? く……ここ、気持ちいいのか?」
「あっあっ、らめ、そんな擦っちゃ、あっあぁっ」

 ごりごりと敏感な箇所を抉られ、芽依は強すぎる快楽に涙を流す。無意識に、掴んだ新の肩を強く引っ掻いていた。

「ひあっ、らめ、あっあっ、だめぇっ」
「はっはっ……だめか? ここ、俺のちんぽで擦られるの嫌なのか?」
「あっ、いやじゃない、すき、すき、あらたくんすきっ、あっ、そこ好きっ、おちんぽでぐりぐりされるの気持ちいいっ」

 芽依はもう自分でなにを言っているのかわからないまま、新に縋りついた。
 粘ついた音を立てながら肉壁を擦り上げられ、芽依は与えられる快楽に耽溺する。

「ひ、あっ、あらたく、も、気持ちい? 私の中、気持ちいい……?」
「ああ、気持ちいいっ……ちんぽ、溶けそう……っ」
「はひっ、うれひ、もっと気持ちくなって、いっぱいおちんぽずぽずぽして、私を新くんのものにして、あっあっあーっ」
「芽依……っ」

 奥まで貫かれ、腰をがくがく揺さぶられる。
 最奥まで犯され、芽依は歓喜に涙した。夢の中でこんなにも新を強く感じられたのははじめてだ。
 膣内が蠕動し、陰茎を強く締め付ける。
 それに煽られたように新の動きが速くなる。小刻みに腰を打ち付け、汗を流し快楽を貪る彼の姿に芽依はぞくぞくと震えた。

「芽依、芽依、中に出すぞ……っ」
「出して、新くんの精子、全部かけてぇっ」
「っく……いく……っ」
「ああぁっ」

 どぷっと熱い体液を注がれ、芽依も絶頂を迎える。

「あん、新くんのいっぱい出てるぅ、嬉し……」
「芽依、好きだ……」

 ぐりぐりと亀頭を押し付けながら、新は芽依に口づけた。
 精液を擦りつけられ、芽依はうっとりと目を細めてキスを受け入れる。
 
「ふぁっ……新くん、好き……」
「芽依……」

 唇を離し、新はゆっくりと自身を引き抜いた。
 そして、身も心も満たされた二人は強い睡魔に襲われ、そのまま気絶するように眠りに就いた。







 翌日、二人は同時に目を覚ました。
 瞼を開けると、目の前には長年片想いをしている相手の顔がある。
 ばっちりと目が合い、頭が真っ白になり、そして次の瞬間には声にならない悲鳴を上げて二人は飛び上がった。後退り、同時にベッドから落ちる。
 二人は痛みなど感じる余裕もないほど混乱の極みに陥っていた。二日酔いにはならなかったが、酔っている間の記憶が全くなかった。ここはどこで、なぜ片想いの相手と同じベッドで寝ていたのかさっぱりわからない。
 芽依は蒼白になり頭を抱えた。必死に思い出そうとするが、昨日、お店で飲んでいてトイレに行った辺りから記憶がすっぽり抜け落ちている。
 どうして服が乱れているのか。パンツを履いていないのか。腰がだるいのか。股間がじくじくじんじんするのか。
 まさか、と思う。そんなわけがない、そんなことはあり得ないはずなのに、あまりにも生々しく形跡が残りすぎている。
 ベッドを挟んで、新も同様にパニックに襲われていた。
 トイレに行ったことは覚えている。でもそこからのことはなにも思い出せない。
 室内を見るに、恐らくここはホテルの一室なのだろう。だがなぜ彼女とホテルに泊まっているのか、全くわからない。
 芽依の方を見られないが、彼女の衣服は乱れていた気がする。そして自分の衣服も乱れまくっている。ズボンのボタンもチャックも全開だ。
 腰がだるく、でもなんだかスッキリしている。
 まさか、と新も思った。なにも思い出せないのに、状況を見る限りそうとしか思えない。
 とりあえず一回冷静にならなくては、と考えた。混乱したままではどうすることもできない。
 芽依の方を見ないまま、声をかける。

「磯山?」
「ひゃい!?」

 突然名前を呼ばれ、芽依は悲鳴のような返事をしてしまう。顔を向けると、新はこちらを見ずに言った。

「とりあえず、シャワー行ってきたら?」
「ははははい!!」

 芽依は立ち上がる。ベッドの上にパンツを見つけ、瞬時にそれを手に取った。

「おおおお先に行ってまいります!」

 芽依は逃げるように浴室へ駆け込んだ。
 部屋に一人になり、新は落ち着かなくてベッドを整えた。そのとき自分のスマホが床に転がっていることに気づく。ポケットに入れていたのが落ちたのだろう。
 友人から連絡が入っていた。昨日、自分はどうやら誰にもなにも言わずに店を出たようだ。急にいなくなってどうしたのかと心配する内容だ。
 本当のことは言えず、そもそも新自身覚えていないので説明のしようもないのだが、とりあえず緊急の用事で実家に帰らなくてはならなくなった、と適当に誤魔化して謝っておいた。




 芽依はシャワーを浴びながら再び記憶を辿るが、やはりなにも思い出せない。
 問題なのは、この股間の違和感だ。痛いような、むずむずするような。
 震える手をそっと脚の間へ伸ばす。するととろりと、そこから白濁とした粘液が流れてきた。
 驚愕に目を見開く。
 これは所謂アレなのではないだろうか。コレがアレだとしたら、コレはつまり新のアレだということになるのではないか。状況からして、新以外には考えられない。
 サーッと血の気が引いていく。
 自分はやらかしてしまったのだ。酔っ払って新に襲いかかったのだ。無理やり乗っかって、新の貞操を奪ってしまったのだ。
 一番最悪なのは、自分がそれを全く覚えていないことだ。
 なんてことをしてしまったのだろう。
 芽依はふらふらと目眩を感じながら浴室から出た。
 芽依が部屋に戻ると、入れ違いに新が浴室へ向かった。
 暫し呆然と立ち竦んでいた芽依だが、ふと床に落ちている自分の鞄が目に入った。
 拾って中からスマホを取り出す。友人から、どうしてトイレから戻ってこなかったのか、なにかあったのか、どこにいるのかと、心配する内容の連絡が来ていた。そこで自分が無断で抜け出していたのだと気づく。
 芽依は慌てて連絡を返した。まさか新とホテルにいるなどと正直に話すことはできず、急に具合が悪くなって我慢できずに帰ったということにした。




 一方、浴室では。
 シャワーを浴びながら、新もまた最悪の事態を想定していた。
 腕や肩に残る引っ掻き傷。これは恐らく芽依がつけたものなのだろう。
 つまり自分は酔っ払い、嫌がる彼女に襲いかかったのだ。
 最低だ。犯罪だ。好きで好きで、ひたすら一途に想いを寄せてきた彼女に対し、取り返しのつかない過ちを犯してしまった。
 でも、今は落ち込んでいる場合ではない。傷を負ったのは彼女の方なのだ。
 覚悟を決め、新は浴室を出た。
 それから芽依と新は向かい合って椅子に座った。

「あの」
「あの」

 二人の声が重なる。

「あ、あ、お先に、どうぞ……」

 芽依に促され、新はガバッと頭を下げた。

「申し訳ない!!」
「へ、え……!?」
「俺は酔っ払って、磯山にとんでもないことをしてしまった! しかも最低なことに全く覚えていないんだ! でも、責任は取らせてくれ! 磯山の望む通りにする、訴えるなりなんなりしてくれて構わない! 本当にすまない!」
「ええ!? ど、ど、どうしたんですか、梶原くん!?」

 いきなり頭を下げられても、芽依にはなんのことかさっぱりわからない。

「いや、だから、俺は昨日、酔っ払って、嫌がる磯山に、無理やり、ふ、ふ、不埒な行いを、してしまったんだろう……?」
「ええ!?」

 そんなラッキーなことが!?
 いや、だとしたら彼の言っていることはおかしい。芽依は新に不埒なことをされたら喜びはするが嫌がりはしない。無理やりなどあり得ない。

「それは違います、梶原くん! 私が梶原くんを襲ったんです!」
「はあ!? 磯山が……!?」
「そうです! 私が酔っ払って梶原くんを強姦したんです!」
「な……!?」

 強姦!? そんなの夢のようではないか、と新は愕然とした。
 そうだ。もし新が芽依に襲われたとしたら、喜んでこの身を差し出す。強姦なんてされるわけがない。

「いや、違う! 俺が襲ったんだ!」
「違います、私です!」
「そもそも、体格的に磯山に俺が襲えるわけがないだろ!」
「梶原くんが酔っ払っていたとしたら、私にだって襲えたはずです!」
「大体、俺は芽依が好きなんだから、襲われたらそれは俺にとってご褒美なんだよ!」
「そんなの私だってそうだよ! 新くんのこと大好きだもん! 襲われたら嬉しくて泣いちゃうから!」
「俺の方が好きだ!」
「私だって大好きだもん!」

 興奮しすぎた二人は、ぜいぜいと荒い呼吸を繰り返す。
 酸素を取り込んで、はっと我に返った。
 なぜか言い合いになり、なぜか愛の告白をしていた。
 二人の顔が真っ赤に染まる。耳から首まで赤くなっていた。
 しかも二人の視線はしっかりと合っている。こんな風に見つめ合ったのは酔っ払っているときを除けばはじめてだった。
 二人は慌てて視線を逸らす。
 半ばパニックに陥りながら、今のやり取りを反芻する。
 好きだと言い、好きだと言われた。
 夢でも妄想でもなく、現実で。
 二人はそれをじわじわと実感する。
 まだ少し混乱しながらも、新は口を開いた。

「磯山」
「ははははい!」

 芽依が顔を上げると、新はまっすぐにこちらを見ていた。恥ずかしくて居たたまれなくて、逸らしてしまいそうになるのをこらえて視線を彼に向ける。

「俺、磯山のことが好きだ」
「わ、わわ、わ、私も、好きっ」
「俺と結婚して」
「っっっ……ひゃいぃ! 喜んで!」

 思い切り声が裏返ってしまったが、そんなことはどうでもよかった。

「う、ううう、嬉しい……」
「お、俺も……。幸せに、するから……」
「はひぃっ」

 何度も妄想し、夢に見てきたことが現実となり、二人はもじもじと恥じらいながら、頭の中は幸せでふわふわしていた。
 にやけそうになる頬を押さえていた芽依は、ふと顔を曇らせる。
 気づいた新は、慌てて芽依に駆け寄る。

「ど、どうした!? もしかして、体調が悪いのか!?」
「あ、ち、違うの……。あの、記念すべき新くんとの、その、はじめてを、全然覚えてないのが、悔しくて……」
「た、確かに……」

 言われて、新も事の重大さに気づいた。
 妄想に妄想を重ね、夢にまで見るほどの願望が現実となったはずなのに、その内容を微塵も覚えていないのだ。ショックを受けずにはいられない。
 夢が実現したというのに、覚えていないせいで全く実感は湧かない。
 どうして忘れてしまったのか。お酒なんて飲まなければ。でも飲んでいなければこうして二人が結ばれることもなかっただろう。
 打ちひしがれる芽依の肩を、新は優しく撫でた。
 忘れてしまったことを思い出させることは難しい。でも、新たに思い出を作ることはできる。

「じゃあ、これから、俺の家に来るか……?」

 勇気を振り絞り、顔を真っ赤にしながら新は言った。
 芽依は顔を上げる。

「え……?」
「それで、その、やり直さないか……? 俺達の、はじめて……」
「っ……ぜぜぜぜ是非お願いします!」

 なんとも魅力的な誘いに、芽依は迷うことなく飛び付いた。
 それから二人はホテルを出て、手を繋いで新の家へ向かった。
 しかし素面の状態では、まともに顔を合わせることすら恥ずかしがる二人だ。
 はじめてのやり直しは、ぎこちなく、空回り、とてもすんなりとはいかなかった。それでも二人は心の底から幸せで、満たされた気持ちになれた。
 お酒のお陰で結ばれた二人は、けれどもう二度と記憶をなくすまいと、それからお酒を口にすることはなかった。





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 読んでくださってありがとうございます。








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