脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

文字の大きさ
上 下
381 / 442

暗闇イベント――???編①

しおりを挟む


 鳴っては止まない雷。停電は続いたままです。こちら、ですわね。

「ヒューゴ殿?いらっしゃるかしら?」

 ノックをしても返事は無し。失礼、ヒューゴ殿。入りましてよ。

「ああ……」

 部屋の隅で体を丸めていたのは彼、ヒューゴ殿。苦手……ですものね。
 前のように、あなたを支えてあげられたら。私はそう願って、彼に近づいて。そして、手を握ろうと――。

「近づかないで……ください」
「……ヒューゴ殿?」

 ここで拒絶の言葉ですの?彼の振り絞る声に、私は困惑してしまい。

「……逃げ、て」
「え」

 近づくな、逃げろ?ヒューゴ殿、それは一体――。

「……」
「!?」

 突然でした。ヒューゴ殿の体はがくっと力が抜けたかのよう、それから瞳を閉じられてしまって。

「ヒューゴ殿……?」

 ここ最近、体調不良やら様子のおかしさやら。ヒューゴ殿、病か何か患っていらっしゃるのかしら?ひとまず呼吸を確認し、お医者様を呼びましょう……! 

「ヒューゴ殿、大丈夫ですの――」

 私は彼の肩にそっと触れようとした時――。

「――はい、大丈夫です」
「……」

 ヒューゴ殿は急にしっかりとされました。切れ長の瞳は私を見ていて、さっきまで怯えていた方とは思えないほどで。

「それでしたら……ご無理はなさらないでくださいまし」
「はは、心配性だなぁ……でもって、妬けるというか」
「……ヒューゴ殿?」

 トラウマなんてない、そのような感じでした。それにです。
 喋り方も笑い方も違うのです。ええ、違っていて。
 私の目の前にいるのは、姿はヒューゴ殿であってもそうではないと。そう思えてならなくて――。

「あなたは……どなたですの?」

 あなたはヒューゴ殿ではない、そうでしょう。

「……わかってくれないんですか」
「!」 

 悲しそう、泣きそうな声。ヒューゴ殿ではない、別の誰か。なら誰だと――。

「……待って、そんな」

 私は何を考えているの。そんなはずないでしょう。違う、そんなわけがない。
 でも。

「……ユウ君?」

 そうとしか思えなくなった。なんでユウ君が?彼がなんでこの世界にいるの。その方がおかしいはずなのに、
 そうとしか思えなくなっていて。

「姉さん!」 

 彼の嬉しそうな声、顔。『私』をそう呼ぶ彼。
 ――それが答えだった。

「なんで……どうして……」 

 目の前の彼がユウ君、それはわかっても。わかってもだけど。どうして?なんで?ユウ君がこうしているの?わからない、わからないよ。

「姉さんと一緒です。俺もこうしてやってきました」
「それって……」

 ユウ君も転生したってこと、そういうこと。彼は生を終えて――。

「……まあ、最期とかは記憶がないんですけど。俺が意識を取り戻したのも、ここ最近でもあって」
「そう、なんだ……」

 私、素の喋りになってしまっていた。ユウ君、その方が嬉しそうにしている。私も今は取り繕えなくなっている……。

 うん……死に際の記憶、思い出して欲しいわけじゃない。でも、聞いておきたいこともあって。ここ最近って……。

「ユウ君。ここ最近っていつからなの?ヒューゴ殿となにか関係してる?」

 ヒューゴ殿の調子が優れない時からだったら。ユウ君が目覚めたことが関係しているのだとしたら。

「……姉さん」

 あれだけ笑顔だった彼が――無表情になった。

「……この男の方が大事なんですか?」

 表情は無いのに、声だけが怒りに満ちていて。

 ……怖い。ユウ君が怖い、だけど聞かないと。

「……。どっちが大事などではありませんわ。ヒューゴ殿が突然消えられたのです。友人として心配するのは当然でしょう?」

 私はあえて口調を変えました。ユウ君、より険しい雰囲気となりましたが、それでもです。

「……はあ、別に消えたわけじゃないです。姉さんと同じケース――俺の中で眠ってます」
「なんてこと……」

 私とアリアンヌ様と一緒ですか。それはもう――ユウ君が乗っ取ったも同然だと。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

えっ、これってバッドエンドですか!?

黄昏くれの
恋愛
ここはプラッツェン王立学園。 卒業パーティというめでたい日に突然王子による婚約破棄が宣言される。 あれ、なんだかこれ見覚えがあるような。もしかしてオレ、乙女ゲームの攻略対象の一人になってる!? しかし悪役令嬢も後ろで庇われている少女もなんだが様子がおかしくて・・・? よくある転生、婚約破棄モノ、単発です。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...