脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

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かつての男爵家の栄光は……。

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「……うちの姉と妹が失礼しました」

 ようやく口を開いたオスカー殿。謝罪の言葉でした。

「……いいえ。私は良いのです。ただ、あなたが。大変だったでしょうに……私のことを庇ってくださって」
「俺のこととか気にしないで」

 どう見てもあなたの方が傷ついたでしょうに。あなたが私に対して心を痛めることなんて。

「……。そろそろ時間じゃない? 馬車まで送るよ」

 オスカー殿の仰る通り。元々解散するつもりでしたものね。

「ありがとう、お言葉に甘えますわね。オスカー殿、また来ますわね」
「……それは嬉しい。嬉しいんだ、でも」

 オスカー殿は悲しそうに笑ってます。わかりますわ、あなたが憂慮していることは。またあの姉妹に絡まれることがあったら、でしょう? 

「気にせず参りますわよ? オスカー殿、完成間近なのですよ? 見届けたいではありませんか!」

 私は明るめに言った。少しでもオスカー殿が気にしないで済むようにと。

「……そっか。うん、そうだね」

 オスカー殿は儚くも笑ってくださいました――。


「……すみません。僕が離れている間にそのようなことが」

 帰りの馬車の中、イヴが詫びてきました。彼は調べたいことがあると、一時離席していましたからね。

「いいえ、いいのですよ。護衛もついていましたし」

 適切な距離を保ちながらですが、護衛も見守っていてくれました。私は気にしないでと笑いました。

「……本当にすみません。それで調べたことですが――」

 イヴが探ってくれたのは、こちらの男爵領について。

「かつては豊かだったフェル領も、一気に財政が傾くことになりました。それも――男爵の再婚によって」
「!」
「継母も義姉妹もやりたい放題です。彼女達の身の丈に合わない贅沢によって、絞り尽くされています。実子のオスカー様にも冷たくあたっているとか」

 イヴが語るは事実。オスカー殿のご様子や、再婚したご一家からして、それは納得できるものでもありました。

「フェル卿はどうしたというのです。愛した気持ちもおありでしょうが、御子息の実態をご存知ないというの……」

 愛のある再婚だったのでしょうか。随分と好き放題を寛容されておいで。ですが、この実情でしてよ。オスカー殿も苦しんでいるのに……。

「……骨抜きですから。かつては良き領主だったそうですが。諫める気持ちなんて更々ないようですよ」
「なんですって……」
「長年続いたわけですから。露見していくのも避けられなくなったのでしょうね」
「……ええ」

 私は愕然としました。継母側に肩入れをしているのですか。そのような現を抜かした当主から、民も離れていったわけですわね。ああ、なんということでしょう……。

「かつての栄光は聞いておりましてよ。『王の守護神』として――王の盾になっていたとも」

 フェル一族の力を持って、我らが王を守り抜いたという。現代の伝説ともいえますわね。それほどまでの一族がこうも……。

「オスカー殿……」

 あなたはこのような環境でも、民を思って尽力してきた。それは誇ることだと、私は思いますわ。



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