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終わってみれば楽しい1日
さよならサンタ村、さよならサンタさん
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ナカイさんと別れてしばらくたった。
疲れがひどくなってきた私は少し休もうとベンチに座る。
そこへ、今度はサンタさんがホットチョコレートを両手に持ってやってきた。
サンタさんは私の隣に座り、ホットチョコレートを私に差し出す。
「どうじゃ? 疲れとらんかのぅ?」
「実を言うと少しだけ。でも、大丈夫です。もう少しここにいたいので」
「そうか。そうじゃのぅ。もう少しゆっくりしていくといい」
私は受け取ったホットチョコレートに口をつける。
あったかくて、とっても甘い。
ホットチョコレートって、まるで疲れた心と身体に染みわたるような優しい飲み物だ。
ふと隣に座るサンタさんを見てみれば、サンタさんはただ広場で騒ぐ小人たちを優しく見つめていた。
そして、どこか独り言のようにゆっくりと口を開く。
「どうじゃった? 今日1日このサンタ村で過ごしてみて。ワシらはキミに、大切な時間を贈ることができたかのぅ?」
「そうですね。楽しかった……です。というか、えっと……上手く言葉にできませんけど、あの…………」
私は胸に手を当てて言葉を探す。
そこには、たくさんの思い出がつまっていて、なかなか伝えたい言葉が決まらない。
それでも私はなんとか気持ちを形になおしサンタさんへ伝える。
「私、サンタの仕事ができて、ここに来られて、本当に良かったです」
「そうか。それはなによりじゃ」
そう言ってサンタさんは広場から目線をそらさずに笑う。
どこか安心したようなその笑みからはたくさんの苦労が見て取れた。
迷惑かけちゃったかな……。ごめんねサンタさん。
心の中でサンタさんに謝罪し、私は広場の中心にそびえ立つ巨大なモミの木を見上げる。
大きなあの木を見ていると、自信の持てない小さな自分が情けなく思えてしまう。
心のモヤを振り払うように、私は頭をぶんぶんと振る。
お別れ前に、気を小さくしてちゃ良くないよね! もっと別の話でもふってみよう!
「あーあ。でも、明日からどうしよう。また寂しくなっちゃうな」
「友達を作ればいいんじゃよ」
「ええー? 私には無理だよ。嫌われるのが怖くて、話しかけることもできないもん」
ここで小人やトナカイと話したって、サンタの仕事を手伝ったって、現実では誰とも思い出を共有できないのだ。
しかし、サンタさんはそんな私の弱さにノーをつきつける。
「大丈夫。お嬢さんならできるよ。それに、今のお嬢さんに必要なものは、もう持っているじゃろぅ?」
「必要なもの??」
「勇気じゃよ。怖くても1歩踏み出すための勇気じゃ」
二カッといつもの笑顔が私に向けられる。
大切なのは勇気を持つこと……。
サンタさんが教えてくれた魔法の言葉だ。
「……うん。そうだね。私、頑張ってみようかな」
「そうしなさい。きっとお嬢さんなら上手くできるよ」
広場を見ると、たくさんの小人たちが疲れて眠りこけてしまっている。
もうそろそろ、私も帰る時間だろう。
「ありがとうサンタさん。私をここに連れてきてくれて」
私はサンタさんに笑顔を向ける。
「こちらこそありがとう、お嬢さん。サンタの仕事を手伝ってくれて、本当に助かったわい」
サンタさんも優しい笑顔を返してくれた。
◇◇◇
12月25日のお昼ごろ。
先ほどまで騒がしかった広場もずいぶんと静かになった。
「本当にみなを起こさなくて良かったのか?」
「うん。疲れているなら仕方ないよ。騒がしいのも落ち着かないし」
疲れて眠ってしまった小人さんたちは、ビットに頼んでそれぞれの家へと運びこんでもらった。
ビットもその作業で疲れてしまったのか、ウトウトと眠りはじめたので私が家まで運んで寝かせてきた。
現在、広場には私とサンタさんの2人だけが残っている。
「では、準備は良いか? お嬢さん?」
「うん。お願いサンタさん」
私は一度だけサンタ村の空気を胸いっぱいに吸いこむ。
そして、ハァッと吐き出し、向かいに立つサンタさんに手を振った。
「じゃあ、バイバイサンタさん」
サンタさんは小さくうなずき、腰のポーチからベルを取り出した。
「さよならじゃ、お嬢さん。では、良い夢を」
チリンチリン。
サンタさんが手に持ったベルを鳴らす。
私は急に眠たくなって、たちまち意識を失った。
ありがとうサンタさん。私に勇気をくれて……。
疲れがひどくなってきた私は少し休もうとベンチに座る。
そこへ、今度はサンタさんがホットチョコレートを両手に持ってやってきた。
サンタさんは私の隣に座り、ホットチョコレートを私に差し出す。
「どうじゃ? 疲れとらんかのぅ?」
「実を言うと少しだけ。でも、大丈夫です。もう少しここにいたいので」
「そうか。そうじゃのぅ。もう少しゆっくりしていくといい」
私は受け取ったホットチョコレートに口をつける。
あったかくて、とっても甘い。
ホットチョコレートって、まるで疲れた心と身体に染みわたるような優しい飲み物だ。
ふと隣に座るサンタさんを見てみれば、サンタさんはただ広場で騒ぐ小人たちを優しく見つめていた。
そして、どこか独り言のようにゆっくりと口を開く。
「どうじゃった? 今日1日このサンタ村で過ごしてみて。ワシらはキミに、大切な時間を贈ることができたかのぅ?」
「そうですね。楽しかった……です。というか、えっと……上手く言葉にできませんけど、あの…………」
私は胸に手を当てて言葉を探す。
そこには、たくさんの思い出がつまっていて、なかなか伝えたい言葉が決まらない。
それでも私はなんとか気持ちを形になおしサンタさんへ伝える。
「私、サンタの仕事ができて、ここに来られて、本当に良かったです」
「そうか。それはなによりじゃ」
そう言ってサンタさんは広場から目線をそらさずに笑う。
どこか安心したようなその笑みからはたくさんの苦労が見て取れた。
迷惑かけちゃったかな……。ごめんねサンタさん。
心の中でサンタさんに謝罪し、私は広場の中心にそびえ立つ巨大なモミの木を見上げる。
大きなあの木を見ていると、自信の持てない小さな自分が情けなく思えてしまう。
心のモヤを振り払うように、私は頭をぶんぶんと振る。
お別れ前に、気を小さくしてちゃ良くないよね! もっと別の話でもふってみよう!
「あーあ。でも、明日からどうしよう。また寂しくなっちゃうな」
「友達を作ればいいんじゃよ」
「ええー? 私には無理だよ。嫌われるのが怖くて、話しかけることもできないもん」
ここで小人やトナカイと話したって、サンタの仕事を手伝ったって、現実では誰とも思い出を共有できないのだ。
しかし、サンタさんはそんな私の弱さにノーをつきつける。
「大丈夫。お嬢さんならできるよ。それに、今のお嬢さんに必要なものは、もう持っているじゃろぅ?」
「必要なもの??」
「勇気じゃよ。怖くても1歩踏み出すための勇気じゃ」
二カッといつもの笑顔が私に向けられる。
大切なのは勇気を持つこと……。
サンタさんが教えてくれた魔法の言葉だ。
「……うん。そうだね。私、頑張ってみようかな」
「そうしなさい。きっとお嬢さんなら上手くできるよ」
広場を見ると、たくさんの小人たちが疲れて眠りこけてしまっている。
もうそろそろ、私も帰る時間だろう。
「ありがとうサンタさん。私をここに連れてきてくれて」
私はサンタさんに笑顔を向ける。
「こちらこそありがとう、お嬢さん。サンタの仕事を手伝ってくれて、本当に助かったわい」
サンタさんも優しい笑顔を返してくれた。
◇◇◇
12月25日のお昼ごろ。
先ほどまで騒がしかった広場もずいぶんと静かになった。
「本当にみなを起こさなくて良かったのか?」
「うん。疲れているなら仕方ないよ。騒がしいのも落ち着かないし」
疲れて眠ってしまった小人さんたちは、ビットに頼んでそれぞれの家へと運びこんでもらった。
ビットもその作業で疲れてしまったのか、ウトウトと眠りはじめたので私が家まで運んで寝かせてきた。
現在、広場には私とサンタさんの2人だけが残っている。
「では、準備は良いか? お嬢さん?」
「うん。お願いサンタさん」
私は一度だけサンタ村の空気を胸いっぱいに吸いこむ。
そして、ハァッと吐き出し、向かいに立つサンタさんに手を振った。
「じゃあ、バイバイサンタさん」
サンタさんは小さくうなずき、腰のポーチからベルを取り出した。
「さよならじゃ、お嬢さん。では、良い夢を」
チリンチリン。
サンタさんが手に持ったベルを鳴らす。
私は急に眠たくなって、たちまち意識を失った。
ありがとうサンタさん。私に勇気をくれて……。
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