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2024年
9月の記録
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◇『水中図書館』
「こんなのどう?」
創作に困っていると、友人が助け舟を出してくれた。その図書館は水中にあるらしい。
「酸素はどうするの?」
「底から空気がわいて出るんだよ」
「なるほど」
中々いいんじゃないか? と、思った時だった。
「ちなみに人はそれを神様のおならと呼ぶ」
「台無しだよ」
◇『こぎつね座』
田舎の爺ちゃんは星空が好きな人だった。
「見てごらん。あれが夏の大三角だ。それから、その三角に頭を突っ込んでいるのがこぎつね座だよ」
爺ちゃんが夜空を指差し線を結ぶ。
「きっと、あの三角を大っきなおいなりさんと間違えちゃったんだねぇ」
◇『嘘の代償』
夏休みの宿題を忘れ、俺は記憶喪失のフリをした。
「オレ、バナナキライ」
正直怒られると思っていたのだが、先生は俺を見逃してくれた。
けれど、「お前はこのクラスの委員長だ。先生の手伝いをしなさい」と、その日から雑用を押し付けられてしまった。
次こそは勝ちたいと思う。
◇『不老長寿の酒』
「この酒は香りがいい」
ある山小屋で登山客の一人が地元の酒を楽しんでいた。
「酒といえば、婆さん。この辺りには不老長寿の酒があるんだってね」
「さて、何のことやら」
「確か、花を使った酒だと聞いたな」
「ああ、それでしたら、今あなたが飲まれているのがそうですよ」
◇『返さない約束』
「どうして俺にかまうんだ」
「見てて心配だからよ」
昔から、俺にやたらとちょっかいをかけてくるやつがいる。
「言っておくがな。そんなに良くしてくれたって、俺には何も返せないぞ」
「大丈夫。私も返さないから」
そいつは薬指の指輪を愛おしそうになでて笑った。
◇『つくも神』
祖母の遺品整理がほぼ終わり、公園でボーッとしていると、美しい青色の瞳を持つ少年に出会った。
「お嬢さん、2段目の引き出しに忘れ物があるよ」
それだけ言うと、その少年は姿を消した。
翌日、引き出しの奥から、くすんだ箱に大事にしまわれたサファイアの指輪が見つかった。
◇『仕返し』
「困ったな」
家で友人と遊ぶ約束をしていたのだが、連絡がない。心配になって通話をかけてみると、あっさりとつながった。
「あ~、悪い! 普通にパチンコ打ってたわ!」
ガハハ! という笑い声とともに通話が終了する。
俺はそっと冷蔵庫を開け、シュークリームにわさびを仕込んだ。
◇『衣替え』
休日の午後、会社の同僚とカフェで話をしていると、そろそろ衣替えの季節だねという話になった。
「衣替えの季節って聞くと、天ぷらが食べたくなっちゃうよね」
「ごめん。全然流れが分かんない。何で天ぷらなの?」
「衣がええ季節、ってね」
「バカがよ」
◇『キンモクセイ』
その人の家にはキンモクセイが咲いている。
「今日も来たのか」
「どうも」
私が縁側にこしかけると、彼は私の隣に座る。隣から優しい匂いが流れてきた。
「そんなに好きなら、もっと近くで見ればいいのに」
「ここがいいんです」
キンモクセイと優しい匂いのする、この縁側が。
◇『おはぎ』
おはぎには邪気をはらう効果があるらしい。なので、いつも様子がおかしい兄に1つ食べさせてみた。
「ゴホッガハッ!」
「だ、大丈夫!?お兄ちゃん!まさか本当に幽霊に取り憑かれてたの!?」
私が背中をさすってあげると、兄はせきこみながら答えた。
「米粒が、気管にっ!!」
◇『四季のダジャレ集』
「夏がなつかしい。秋に飽きた。冬になっとう。春を貼る」
「急に何を言ってるの?」
「四季のダジャレを作ったんだ」
「大変そうね」
「なんのこれ四季」
◇『助太刀』
秋の味覚を食そうと、サンマ釣りに来た。
「かかった!」
リールを回すと、秋刀魚の名にふさわしい輝く魚影が見えてくる。
しかし、あと少しのところで糸が切られてしまった。
「見間違いかな?糸が切れる直前、魚影が2つに増えた気がする」
もしかして、助太刀が入ったのだろうか?
#140字小説
「こんなのどう?」
創作に困っていると、友人が助け舟を出してくれた。その図書館は水中にあるらしい。
「酸素はどうするの?」
「底から空気がわいて出るんだよ」
「なるほど」
中々いいんじゃないか? と、思った時だった。
「ちなみに人はそれを神様のおならと呼ぶ」
「台無しだよ」
◇『こぎつね座』
田舎の爺ちゃんは星空が好きな人だった。
「見てごらん。あれが夏の大三角だ。それから、その三角に頭を突っ込んでいるのがこぎつね座だよ」
爺ちゃんが夜空を指差し線を結ぶ。
「きっと、あの三角を大っきなおいなりさんと間違えちゃったんだねぇ」
◇『嘘の代償』
夏休みの宿題を忘れ、俺は記憶喪失のフリをした。
「オレ、バナナキライ」
正直怒られると思っていたのだが、先生は俺を見逃してくれた。
けれど、「お前はこのクラスの委員長だ。先生の手伝いをしなさい」と、その日から雑用を押し付けられてしまった。
次こそは勝ちたいと思う。
◇『不老長寿の酒』
「この酒は香りがいい」
ある山小屋で登山客の一人が地元の酒を楽しんでいた。
「酒といえば、婆さん。この辺りには不老長寿の酒があるんだってね」
「さて、何のことやら」
「確か、花を使った酒だと聞いたな」
「ああ、それでしたら、今あなたが飲まれているのがそうですよ」
◇『返さない約束』
「どうして俺にかまうんだ」
「見てて心配だからよ」
昔から、俺にやたらとちょっかいをかけてくるやつがいる。
「言っておくがな。そんなに良くしてくれたって、俺には何も返せないぞ」
「大丈夫。私も返さないから」
そいつは薬指の指輪を愛おしそうになでて笑った。
◇『つくも神』
祖母の遺品整理がほぼ終わり、公園でボーッとしていると、美しい青色の瞳を持つ少年に出会った。
「お嬢さん、2段目の引き出しに忘れ物があるよ」
それだけ言うと、その少年は姿を消した。
翌日、引き出しの奥から、くすんだ箱に大事にしまわれたサファイアの指輪が見つかった。
◇『仕返し』
「困ったな」
家で友人と遊ぶ約束をしていたのだが、連絡がない。心配になって通話をかけてみると、あっさりとつながった。
「あ~、悪い! 普通にパチンコ打ってたわ!」
ガハハ! という笑い声とともに通話が終了する。
俺はそっと冷蔵庫を開け、シュークリームにわさびを仕込んだ。
◇『衣替え』
休日の午後、会社の同僚とカフェで話をしていると、そろそろ衣替えの季節だねという話になった。
「衣替えの季節って聞くと、天ぷらが食べたくなっちゃうよね」
「ごめん。全然流れが分かんない。何で天ぷらなの?」
「衣がええ季節、ってね」
「バカがよ」
◇『キンモクセイ』
その人の家にはキンモクセイが咲いている。
「今日も来たのか」
「どうも」
私が縁側にこしかけると、彼は私の隣に座る。隣から優しい匂いが流れてきた。
「そんなに好きなら、もっと近くで見ればいいのに」
「ここがいいんです」
キンモクセイと優しい匂いのする、この縁側が。
◇『おはぎ』
おはぎには邪気をはらう効果があるらしい。なので、いつも様子がおかしい兄に1つ食べさせてみた。
「ゴホッガハッ!」
「だ、大丈夫!?お兄ちゃん!まさか本当に幽霊に取り憑かれてたの!?」
私が背中をさすってあげると、兄はせきこみながら答えた。
「米粒が、気管にっ!!」
◇『四季のダジャレ集』
「夏がなつかしい。秋に飽きた。冬になっとう。春を貼る」
「急に何を言ってるの?」
「四季のダジャレを作ったんだ」
「大変そうね」
「なんのこれ四季」
◇『助太刀』
秋の味覚を食そうと、サンマ釣りに来た。
「かかった!」
リールを回すと、秋刀魚の名にふさわしい輝く魚影が見えてくる。
しかし、あと少しのところで糸が切られてしまった。
「見間違いかな?糸が切れる直前、魚影が2つに増えた気がする」
もしかして、助太刀が入ったのだろうか?
#140字小説
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