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王道のために暗躍する
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「なぁ、このあとは俺の部屋に来ないか?」
稔が耳元で囁く。
低く、心地良い声だが、今はそれに絆されるわけにはいかない。
「やだよー、俺は忙しいの!」
「何がそんなに忙しいんだ?」
「色々!」
「他の男と会うのか?」
「今のところその予定はないけど」
「なら良いだろう」
稔とのやり取りの間に、海堂はさっそくリングを腕に通して着け心地を確認している。
「似合うか?」
「似合うよ」
「そうか!」
ニコニコの海堂は本当に犬の様だ。
「央蜜っ!」
稔に顎を掴まれ唇が重なる。
食堂はシーンと静まり、すぐに叫び声が聞こえて来た。
またもや公衆の全面でキスとか。
もー、なんでこう稔って場所を選ばないのかなー!
学習能力が無いの?バカなの?!
しかも俺が食べてたハンバーグの味しかしない!
全然雰囲気とか皆無!もーいや、何コイツー!!
「んぅー!そーゆーとこ、キライ!」
稔の身体を引き離すと、掴む間もなく立ち上がり、そそくさと席を後にする。
手を伸ばした稔の姿が視界に入ったが知るものか!
腹立った!今日はもう誰とも会わずに、タブレットでBL漫画読み漁ってやる!
嫌いだと言い残して央蜜が去って行った後の食堂では、暫く硬直して動かない稔と、黙々と食事を行う海堂の姿があった。
「央蜜、嫌いって言った」
「言ったな」
「俺はまた嫌われたのか?」
「まぁ、毎回ああいう事をしているなら嫌われるんじゃないっすか?」
「なんでお前にそんなこと分かるんだよ」
「本人がイヤだと言うならイヤなんでしょう?」
「お前に央蜜の何が分かるんだよ」
あぁ、コイツに何言っても通じない。
そう悟った海堂であったが、同時に恋とはそうまでも盲目になるものなのかと感心すらした。
普段の後藤であれば、公衆の全面でキスなどしないだろうし、暫く動かなくなるほどショックを受ける様な真似も無かっただろう。
常に余裕がある頼れる先輩であり、無敵という言葉がピッタリであった。
少なくとも海堂自身は後藤の事をそう評価していた。
「なんか、会長は余裕がないっすね」
「余裕?そんなものねぇよ」
自傷気味に笑う後藤の姿に、海堂は少し目を細めてその姿を観察し、考察する。
テーブルの下で手を組み、項垂れ、この世の終わりの様な形相。何がそうさせるのか。
一体斎賀という男にそれほどの魅力があるのか。
確かに顔は良い。語尾を伸ばす様な気の抜けた喋り方が奴のぐうたらした、掴みどころのない内面を強調しているようだが、決して不精なわけではない。むしろキレッキレにイカしたセンスを持っている気がする。
知れば知るほど不可思議な奴だとは思う。
しかし、今までの後藤であるならこんな必死に相手を取り囲む様な真似はしなかった。
奴の何が一体そうさせるのか。
「なんか、興味でちゃいますよね」
「お前もか」
「も?」
「田口も風紀に声を掛けていたし、直也も気に掛けているようだった」
「へぇ、モテモテだな」
会長は「そうだな」と言ったあと、懺悔でもするかの様に言葉を吐き出した。
「アイツとセックスしても、心が満たされないんだよ」
「心が?」
「最高に気持ち良いのに、すぐに不安になる。アイツはセックスに快楽しか求めて居ないから、すぐにどっか行っちまう。一時的に体でつなぎ留めても、すぐにすり抜けてどっか行くんだ」
何も言わない俺を見て、肩を落としたまま立ち上がる会長。
「どうしたら、俺を好きになるんだろうな。自信なんて、もうないよ」
稔が耳元で囁く。
低く、心地良い声だが、今はそれに絆されるわけにはいかない。
「やだよー、俺は忙しいの!」
「何がそんなに忙しいんだ?」
「色々!」
「他の男と会うのか?」
「今のところその予定はないけど」
「なら良いだろう」
稔とのやり取りの間に、海堂はさっそくリングを腕に通して着け心地を確認している。
「似合うか?」
「似合うよ」
「そうか!」
ニコニコの海堂は本当に犬の様だ。
「央蜜っ!」
稔に顎を掴まれ唇が重なる。
食堂はシーンと静まり、すぐに叫び声が聞こえて来た。
またもや公衆の全面でキスとか。
もー、なんでこう稔って場所を選ばないのかなー!
学習能力が無いの?バカなの?!
しかも俺が食べてたハンバーグの味しかしない!
全然雰囲気とか皆無!もーいや、何コイツー!!
「んぅー!そーゆーとこ、キライ!」
稔の身体を引き離すと、掴む間もなく立ち上がり、そそくさと席を後にする。
手を伸ばした稔の姿が視界に入ったが知るものか!
腹立った!今日はもう誰とも会わずに、タブレットでBL漫画読み漁ってやる!
嫌いだと言い残して央蜜が去って行った後の食堂では、暫く硬直して動かない稔と、黙々と食事を行う海堂の姿があった。
「央蜜、嫌いって言った」
「言ったな」
「俺はまた嫌われたのか?」
「まぁ、毎回ああいう事をしているなら嫌われるんじゃないっすか?」
「なんでお前にそんなこと分かるんだよ」
「本人がイヤだと言うならイヤなんでしょう?」
「お前に央蜜の何が分かるんだよ」
あぁ、コイツに何言っても通じない。
そう悟った海堂であったが、同時に恋とはそうまでも盲目になるものなのかと感心すらした。
普段の後藤であれば、公衆の全面でキスなどしないだろうし、暫く動かなくなるほどショックを受ける様な真似も無かっただろう。
常に余裕がある頼れる先輩であり、無敵という言葉がピッタリであった。
少なくとも海堂自身は後藤の事をそう評価していた。
「なんか、会長は余裕がないっすね」
「余裕?そんなものねぇよ」
自傷気味に笑う後藤の姿に、海堂は少し目を細めてその姿を観察し、考察する。
テーブルの下で手を組み、項垂れ、この世の終わりの様な形相。何がそうさせるのか。
一体斎賀という男にそれほどの魅力があるのか。
確かに顔は良い。語尾を伸ばす様な気の抜けた喋り方が奴のぐうたらした、掴みどころのない内面を強調しているようだが、決して不精なわけではない。むしろキレッキレにイカしたセンスを持っている気がする。
知れば知るほど不可思議な奴だとは思う。
しかし、今までの後藤であるならこんな必死に相手を取り囲む様な真似はしなかった。
奴の何が一体そうさせるのか。
「なんか、興味でちゃいますよね」
「お前もか」
「も?」
「田口も風紀に声を掛けていたし、直也も気に掛けているようだった」
「へぇ、モテモテだな」
会長は「そうだな」と言ったあと、懺悔でもするかの様に言葉を吐き出した。
「アイツとセックスしても、心が満たされないんだよ」
「心が?」
「最高に気持ち良いのに、すぐに不安になる。アイツはセックスに快楽しか求めて居ないから、すぐにどっか行っちまう。一時的に体でつなぎ留めても、すぐにすり抜けてどっか行くんだ」
何も言わない俺を見て、肩を落としたまま立ち上がる会長。
「どうしたら、俺を好きになるんだろうな。自信なんて、もうないよ」
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