半神の守護者

ぴっさま

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第61話 徴収と計画

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半神の守護者=ロッドは、辺境伯領に攻めてきて降伏した貴族家のうち、賠償金を背負う4貴族家の者達を〔瞬間移動テレポート〕で一瞬のうちにそれぞれの領地まで移動し、賠償金を徴収ちょうしゅうして回った。

賠償金が不足している家の場合は、その為にも来てもらっていたローモンドの見立てで、価値のある物品を代わり徴収していった。
物品を徴収する場合は、現金化の手間も多少掛かるため元の金額よりも多めに徴収する。

夜中に金貨や金品を徴収して回る仮面の人物はいかにも怪しいが、貴族家の当主が一緒であるため、驚かれはするが徴収自体に問題は出なかった。


〈それぞれの貴族家から徴収した金品〉
貴族家A……金貨8,500枚+罰金肩代返済166人分金貨830枚
貴族家B……金貨6,200枚+罰金肩代返済165人分金貨825枚(+不足分の物品)
貴族家C……金貨5,500枚+罰金肩代返済165人分金貨825枚(+不足分の物品)
貴族家D……金貨7,100枚+罰金肩代返済165人分金貨825枚(+不足分の物品)


結局すぐに全て金貨で精算できる貴族家は一つしかなく、そこに端数を負担しもらった上で、罰金の代理返済分を優先して徴収した。

〈徴収した金品の合計〉
・賠償金…金貨27,300枚
・物品……金貨6700枚相当の物品(評価額は1割ほど多め)
・罰金……金貨3,650枚
合計、金貨30,950枚、金貨6700枚相当の物品


徴収が終わったロッドはジュリアン達を辺境伯城に戻し、徴収した金品を全てジュリアンに預けた。

「これが今回徴収した金品の全てだ。これは全額被害の救済にててくれ。それと例の村の女性達だが、この領都に居住する意志があるらしいから、今回の賠償金や罰金で生活環境を整えてほしい」

「分かりました。ローモンド、手配を頼むよ」
ジュリアンがローモンドに指示する。

「承知いたしました。数日以内には整えられると思います」
ローモンドが請け負う。

「よろしく頼む、後はクレアと相談しながら進めてくれ。俺はもう少し向こうの状況を整理しに行ってくる。皆はもう今日は休んでいてくれ。ハム美とピーちゃんもご苦労だったな」

ロッドはそう言うと〔瞬間移動テレポート〕で貴族連合軍の野営地に行くのであった。


ーーーーー

ロッドは貴族連合軍の野営地の中空にただよい、超能力〔精神感応テレパシー〕で生存している貴族連合軍に向け、メッセージを送信した。

「これからお前達を逃げられない様に囲ってい物を解除する。お前達を率いてきた罪ある貴族は俺が既に処刑した。お前達は残った貴族達と共に王都に引き返す事になっているが、今夜はもう遅いからこの話が終わったら休んでくれ」

座って休んでいた者も起立して、ロッドの言葉に真剣に耳を傾ける。

ロッドが続きを話す。
「引き返す時に遺体も一緒に連れて帰るか、この地に埋葬するかはお前達で自由に決めてくれ! だが、そのままにする事は許さない。アンデッドが発生するかも知れないからな。燃焼系の魔法が使える者がいれば火葬にしてしまう事を勧めるが、出来ないようであれば俺が代わりに実行しても良い。その場合は代表者が申し出てくれ」

起立して聞いていた貴族連合軍の者達は、フンフンと頷いた。

ロッドがまた話す。
「最後になるが、これからの王都への旅路で似たような問題があれば、俺がまた現れると思ってくれ。その場合は有無を言わさずお前達全員を皆殺しにする事を宣言しておく。俺の名は〈守護者〉、一部の者からは〈半神の守護者〉と呼ばれている。今回殺された者の縁者で仇を討ちたいという者がいたら俺の名を覚えておくと良いだろう。俺は貴族達の野営場所にいるから何かあれば相談に来てくれ。それと怪我を治したい者がいれば今夜のみ応じる事にしよう」

ロッドはそう言うと野営地全体を囲っていた〔サイコバリア〕を解除して、貴族の野営場所に向うのであった。

ーー

貴族連合軍の生き残った者達の代表者は、貴族達の元を訪れて今後2日間に渡って死者のとむらいや、負傷者の怪我の治療や出発準備を行う事で合意した。

貴族側は当初、貴族達だけ先に王都に向け出発する事を申し出ていたが、そばで聞いていた半神の守護者=ロッドはそれをあり得ないと却下した。

自分達のせいで死んだ者達のとむらいもせず、さっさと自分だけ帰るなど許されるべきではない、反省なしとみなして貴族は処刑するとまで言われた貴族達は慌てて、葬儀に参加する旨を申し出でるのであった。

ーー

宣言通りロッドが野営地でたたずんでいるところ、幾人かの冒険者のような者達が現れた。

見ると、四肢ししが千切れかけのような状態の者もいる。

「半神の守護者様、図々しくも治療をお願いしたく参上しました……」
恐らくリーダーであると思われる女性が代表して、ロッドに治療を願い出る。

「分かった、いいだろう。希望者を連れて来てくれ」
ロッドがそう言うと女性が合図し、一人の片脚が千切れかけた男性が両脇に付き添われて、運ばれて来た。

「薬草などで治療をしているのですが、少しするとまた出血してしまう状況です。やはり切断しなければならないでしょうか……」

冒険者リーダーの女性がロッドに心配そうに尋ねる。

冒険者は過酷な職業である。
片足になってしまえば移動もままならず、即引退となってしまうだろう。

何とか元のように歩けるようにならないかと、わらにもすがる気持ちで治療を願いに来たのだ。

「いや大丈夫だ、俺に治せない怪我や病気は無い」
ロッドはそう言うと、超能力で治療する。

治癒ヒーリング〕!

ロッドの手から出た白く輝く光が患部をおおったかと思うと、次の瞬間には男の脚が元通り、怪我の無い状態にまで回復した。

欠損に近い状態からの瞬時の回復に、信じられない物でも見たかのように驚愕する男とリーダーの女性。
それを見ていた周りの者も騒ぎ、騒然となった。

「し、信じられない! ありがとう! ありがとうございます。守護者様!」
「守護者様、ありがとうございました。あなた様に一時的にでも敵対した自分達の愚かさをくやみます」
泣きながら男とリーダーの女性が礼を言った。

「良かったな。冒険者は身体が資本だ、大切にして残りの人生を正しく、精一杯生きて欲しい。それと、同じ様に怪我の治療が必要な者がいたらここに連れて来てくれ。お前達の未来への希望を奪うのは、俺の本意では無いんだ」
ロッドは自分の想いを冒険者達に告げた。

その後、冒険者達の働きで怪我人をピックアップしたロッドは、数十人もの重症者を治療して回った。

命に関わる怪我は少なく主に四肢の欠損であったが、通常では回復する手段の無い怪我が治った事に、本人は涙して喜び、周囲は驚愕するのであった。

貴族連合軍は、この様な存在に自分達がかなう筈が無いという事を改めて認識し、敵対してそれでも今生きている自分の幸運に感謝するのであった。


ーーーーー

一旦辺境伯城に戻り、少しだけ仮眠かみんを取ったロッドは皆で朝食をとりながら、貴族連合軍の様子を話した。

そしてロッドは考えていたこれからの事を話した。

「今回、貴族連合軍は退しりぞけたが、同じ様な事が起こらないうちに王都に乗り込むべきだと思う。そしてこの際、俺達も一緒に行こうと考えているが、アイリスはどう思う?」
ロッドがアイリスに尋ねる。

「よろしいのでは無いでしょうか。帝国の例からすると、ブランドル伯爵とやらも人間ではない可能性が高いと考えられます。もし大悪魔アークデビルであれば人間達では太刀打ち出来ないでしょう」
アイリスが最初はロッドに、最後はジュリアン達に話した。

「僕もそろそろ王都に行こうと考えていました。ロッドさん達が来てくれるのはとても心強いです。まるで100万の味方を得た気分です!」
ジュリアンが笑顔で語る。

「私も行きます! ジュリアン様をお護りする必要がありますので!」
「私も連れて行ってください! お父様の事が心配ですから!」
「ロッド様、何卒なにとぞ私もお連れ下さい。成さねばならぬ事があるのです」
リーンステア、ジョアンナとローモンドも立ち上がって同行を申し出た。

「皆が行くとして、辺境伯城は大丈夫なのか?」
ロッドが主にローモンドに尋ねる。

「実は将来的に家宰の業務をこなせるように、私が教え込んでいる者がおります。既に最低限の事は教え終えていますので、その者に一時的に管理させようと思います」
ローモンドがロッドに答えた。

「分かった。じゃあジュリアン達4人と俺達5人、3日後を目処に出発しよう。旅の準備は不要だ。俺の能力で直接王都に飛んで、まずは辺境伯を救い出そう。マリーは悪いが危険なので、城で良い子で留守番をしててくれ」
ロッドが皆に計画を話した。

「うん。ロッドお兄ちゃんも気を付けてね……」
マリーがロッドを心配そうに見て力無く話した。

マリーも薄々ではあるが父や兄達が、既にこの世にいない事を感づいていた。
ここでまた、兄のようなロッドを失うかもしれないと思い、悲しくなったのである。

それを敏感に感じ取ったハム美とピーちゃんが、マリーを慰めるように肩に移った。

マリーは両肩に乗って寄り添うハム美とピーちゃんを見て、自分は一人では無いという事に気付き、ふたりに嬉しそうに微笑むのであった。
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