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第50話 無傷と停戦
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「な、何事が起きたのだ! 報告しろ!」
本陣にいる帝国軍の将軍が、陣に戻って来た参謀役に報告を求めた。
「はい。まだ各部隊混乱していますが、さきほど獣人の円陣を崩す為に突撃中であった騎馬隊が、周りの兵士ごと何らかの力により吹き飛んで瓦解したようです。一旦、獣人の陣とは距離を取って各部隊の混乱を立て直しております」
参謀役の男が汗を拭いながら説明する。
そんなやり取りの中、戦場にいる全員に向けて命令する声が聞こえて来た。
その声は耳に聞こえているようで、実際には頭の中だけで聞こえる声であった。
「帝国軍全員に告げる! 即時戦闘を停止し、武装を解除せよ!
繰り返す! 帝国軍は即時戦闘を停止し、武装を解除せよ!
従わない場合は、実力を持って排除する!」
驚いた将軍と参謀役の男が陣幕から出て空を見上げると、噂に聞く赤い悪魔が中空に佇んでいるのが見えた。
「今のはあれが言っているのか?」
将軍が驚いて参謀役に尋ねる。
「恐らくそうなのだと思います……停戦と武装解除に応じますか?」
参謀役の男が将軍に確認する。
「馬鹿な! 我が帝国軍が一魔法使いに屈するなどあってはならん! 空を飛んでいるなら飛龍部隊に攻撃させろ! それに傭兵も使え!」
将軍が激昂して命令する。
参謀役の男は、部下に命じて飛龍部隊と傭兵部隊に、赤い悪魔への攻撃命令を告げるのであった。
ーー
ロッドは獣人の陣が、ミーアの魔法のような舞で持ち直したのを見ると、〔念動力の翼〕で空に浮かび上がった。
そして超能力である〔精神感応〕を使い、この戦場にいる全員に向けて、即時の戦闘停止と武装解除を求めた。
何度か繰り返し命じていると、飛龍部隊がこちらに攻撃する構えを見せた。
ロッドはそれをみて、ピーちゃんに〔精神感応〕で話した。
(ピーちゃん、あの飛龍部隊を任せる。必要がなければ殺さないようにしてくれ。『はいデス。ご主人様!』)
ピーちゃんは飛龍部隊に向き直ると、鳥王の威圧を全ての飛龍に向けて放った。
飛龍達は良く訓練されており、今まで人間に逆らう事など無かったが、ピーちゃんの威圧を受け、その恐ろしさで乗り手の制御を無視して真っ逆さまに地上に降り、翼を伏せて平伏するのであった。
ピーちゃんの威圧は鳥系への効果が絶大であり、飛行系の生物や魔物にはピーちゃんの威圧は何よりも恐ろしい物となり、逆らえなくなってしまうのである。
実際に飛龍とピーちゃんが戦えば、一瞬で切り刻まれて死ぬだけとなるだろう。
それを本能でも悟っているため、尚更逆らえないのである。
飛龍の乗り手は、指示を無視して地上に降り、テコでも動こうとしなくなった自分の飛龍を、ため息をついて眺めるのであった。
ーー
「赤い悪魔に向け、一斉に撃てっ!」
傭兵部隊長の指示で、50人ほどの魔法使い達から次々と攻撃魔法が放たれる。
〚魔法の矢〛
〚炎の矢〛
〚炸裂する火球〛
〚炎の嵐〛
〚迸る稲妻〛
〚氷柱の爆発〛
〚氷の槍〛
〚風の刃〛
〚暴風〛
〚石の礫〛
〚岩の弾丸〛
……
様々な属性の攻撃魔法が合計何百発も、空中にいる赤い悪魔=ロッドを襲う。
数分し、もう充分だと判断した傭兵部隊長の指示で、魔法攻撃が停止される。
「撃ち方止めっ!」
しかし魔法で発生した爆炎等が晴れて見ると、そこには傷ひとつない赤い悪魔が変わらず空中に佇んでいるのであった。
魔法は全て〔サイコバリア〕に阻まれ、直接ロッドに届いてはいなかった。
知らない魔法もあったため、模倣で習得出来たと密かにほくそ笑むロッド。
「ば、馬鹿な! あれだけの攻撃魔法が効いてないのか!」
驚愕する傭兵部隊長。
「無傷だぞ!」
「魔法が効いてないのか!」
「化け物か?」
「やはり悪魔なのか!」
「空中だと戦えないぞ!」
「悪魔め!」
「降りてこい!」
「そうだ! 卑怯者!」
傭兵部隊は柄が悪い輩が多いようで、罵詈雑言が飛んでロッドの耳にも入る。
ロッドはそれならと〔念動力の翼〕で高速で飛翔し、傭兵部隊のど真ん中に舞い降りた。
「チャンスだ! 直接攻撃部隊で殺れっ!」
傭兵部隊長が千載一遇の機会を得たとばかりに叫ぶ。
〚突撃〛
〚連撃〛
〚三連撃〛
〚剛撃〛
〚剛衝撃〛
〚剛刺突〛
〚精密射撃〛
〚三連射〛
〚速射〛
〚渾身の一撃〛
〚全身全霊の一撃〛
……
様々な武器から、様々な戦技での物理攻撃が、赤い悪魔=ロッドを襲う。
背後攻撃であったり、一旦距離を取っての一斉射撃であったり、中には王国にいたゴードンのように身体強化を使う高ランク冒険者の様な者もいた。
その全ての攻撃を受けても傷ひとつなく、一歩も動かないロッド。
〔サイコバリア〕も無敵ではないが、傭兵部隊の者達の中級までの攻撃魔法や単発攻撃では、守りに徹した時に常時サイコエネルギーで補強される〔サイコバリア〕の強度を突破出来ないのだ。
無傷の赤い悪魔=ロッドに怯む傭兵達。
「もう終わりなのか?」
さきほどから指揮をしてる傭兵部隊長に、ロッドは尋ねた。
傭兵部隊長は頬をピクピクさせ、答えられず固まっている。
「なら今度はこちらのターンだな」
ロッドは片手を空に向けると、魔法を発動した。
〚炸裂する火球〛出力最大同時発動!
ロッドは自分が出せる最大威力で、同時発動も最大限を試みる事にしてみた。
以前、オーク亜種を屠った時には1mを少し超えるぐらいであった火球が、数々の経験を経たからなのか毎日の精神統一のお蔭なのか、今は大人の背丈ほどの巨大なサイズになっていた。
そのサイズの火球が、同時発動により数百の数で所狭しとひしめいている。
少しヤバいかな?と思うロッドであったが、発動を止める方法など知らないため、発射するしかなかった。
大空に超特大の炸裂する火球が多数打ち上がる。
ドッガガガがガガガがガガガガガガガガガガガガガオオオオォォッ……
少し拡散して撃った火球が、大爆発を起こして大空全体を炎で埋め尽くし、大音響を響かせた。
ーー
帝国兵達は諦めた表情で、次々と武器を地面に置いていく。
全員が理解していたのだ。
先程の魔法は、山へ撃てば山が消失し、街へ撃てば街ごと全てが灰になるほどの威力だ。
あんな威力の魔法を見た後では、もう誰も赤い悪魔に逆らう気にはなれなかったのである。
仮にこの戦場に撃てば、自分達帝国軍の全滅は必至だろう。
散々赤い悪魔に攻撃していた傭兵部隊も、魔法攻撃でも物理攻撃でも全く傷つく様子がないのと、先程見た強大な威力の魔法で心を折られていた。
ーー
ロッドは、空から見渡した時に見つけた帝国軍の本陣まで悠々と歩く。
青白い光に包まれたロッドが歩くと、進行方向の人波が割れてゆく。
いつの間にかハム美とピーちゃん、狼獣人のドルフが付いてきていた。
ハム美はユニークモンスター化しており、背中にミーアを乗せている。
本陣の天幕に入ると、奥に帝国軍の幹部と思われる二人の男がいた。
「お前達が帝国軍の責任者だな?」
赤い悪魔=ロッドが尋ねる。
「私は帝国軍の参謀です。そしてこの方は帝国軍の将軍閣下です」
参謀役の男は観念し、自分達の立場を名乗った。
「お、お前は何者だ? その力、ほ、本当に悪魔なのか?」
将軍の男が後ずさりながら言う。
「俺は悪魔ではなく、守護者という者だ。俺がここに来たのは、お前達に王国の砦への進行を取り止め、撤退を命じるためだ」
ロッドは帝国将軍に返答し、続けて自身の考えを話す。
「お前達帝国は少しやり過ぎだ。獣人の里を征服・弾圧し、征服した者を捨て石にしてまた圧政の及ぶ版図を広げ続ける。これは獣人にだけという訳でも無いだろう? このままのやり方で帝国が侵略を繰り返し、暴虐の覇道を突き進むようであれば、平和を脅かす魔物と何ら変わらない。今後、世界にとって害悪だと判断すれば、俺が直接的に帝国を滅ぼすとしよう」
参謀役の男は、ロッドの的確な指摘に言葉を返す事が出来なかった。
帝国のやり方は他国にしてみれば、指摘の通りただの横暴な侵略であるからだ。
だが、将軍の男は敵意を剥き出しにして叫ぶ。
「そ、そんな事が出来る訳が無い!」
「出来ないと思うか? 俺は先程撃った魔法程度なら何千発でも撃てるぞ。数は撃ったが、あれはただの炸裂する火球なのだからな」
「「 !!! 」」
参謀役の男と将軍の男はこれまで以上に驚愕する。
軍事に関わる者として、中級魔法程度であればその威力や効果、範囲などは当然のように頭に入っている。
しかも〔炸裂する火球〕は代表的な中級魔法であり、使える者も多くその威力も熟知されている。
通常であれば家一軒を爆発させる程度である。
それも全て吹き飛ばす訳ではなく、燃やすのが精一杯なのだ。
さきほど赤い悪魔が放った魔法が、仮に帝都に放たれた場合、おそらく都の半分から3分の1程度は、文字通り吹き飛んでしまうだろう。
それをまだ何千発も撃てるという事であれば……
また、もっと威力の高い上級魔法などであれば……
帝国軍の二人は、冷や汗が止まらなくなるのであった。
「よし! この者達や帝国に少し分からせてこよう。ついでに色々と根回しも含んでな! ドルフ、お前は一旦獣人達の元に戻ってピーちゃんと一緒に獣人達を護れ。もし俺が帰るまでに帝国軍が獣人達を攻撃してきた場合、帝国軍は皆殺しにしても構わない」
ロッドがドルフとピーちゃんに獣人を護るよう指示を出す。
(『はいデス! ご主人様!』)
「はっ! 承知しました。守護者様!」
「ミーアは獣人代表として一緒に来てくれ! ハム美はミーアの肩で護衛だ」
そしてミーアとハム美にはついて来るように指示を出した。
「はい! 一緒に参ります!」
(『はいデチュ! ご主人様!』)
皆の答えを聞くと、ロッドは帝国軍の二人を連れて〔瞬間移動〕するのであった。
本陣にいる帝国軍の将軍が、陣に戻って来た参謀役に報告を求めた。
「はい。まだ各部隊混乱していますが、さきほど獣人の円陣を崩す為に突撃中であった騎馬隊が、周りの兵士ごと何らかの力により吹き飛んで瓦解したようです。一旦、獣人の陣とは距離を取って各部隊の混乱を立て直しております」
参謀役の男が汗を拭いながら説明する。
そんなやり取りの中、戦場にいる全員に向けて命令する声が聞こえて来た。
その声は耳に聞こえているようで、実際には頭の中だけで聞こえる声であった。
「帝国軍全員に告げる! 即時戦闘を停止し、武装を解除せよ!
繰り返す! 帝国軍は即時戦闘を停止し、武装を解除せよ!
従わない場合は、実力を持って排除する!」
驚いた将軍と参謀役の男が陣幕から出て空を見上げると、噂に聞く赤い悪魔が中空に佇んでいるのが見えた。
「今のはあれが言っているのか?」
将軍が驚いて参謀役に尋ねる。
「恐らくそうなのだと思います……停戦と武装解除に応じますか?」
参謀役の男が将軍に確認する。
「馬鹿な! 我が帝国軍が一魔法使いに屈するなどあってはならん! 空を飛んでいるなら飛龍部隊に攻撃させろ! それに傭兵も使え!」
将軍が激昂して命令する。
参謀役の男は、部下に命じて飛龍部隊と傭兵部隊に、赤い悪魔への攻撃命令を告げるのであった。
ーー
ロッドは獣人の陣が、ミーアの魔法のような舞で持ち直したのを見ると、〔念動力の翼〕で空に浮かび上がった。
そして超能力である〔精神感応〕を使い、この戦場にいる全員に向けて、即時の戦闘停止と武装解除を求めた。
何度か繰り返し命じていると、飛龍部隊がこちらに攻撃する構えを見せた。
ロッドはそれをみて、ピーちゃんに〔精神感応〕で話した。
(ピーちゃん、あの飛龍部隊を任せる。必要がなければ殺さないようにしてくれ。『はいデス。ご主人様!』)
ピーちゃんは飛龍部隊に向き直ると、鳥王の威圧を全ての飛龍に向けて放った。
飛龍達は良く訓練されており、今まで人間に逆らう事など無かったが、ピーちゃんの威圧を受け、その恐ろしさで乗り手の制御を無視して真っ逆さまに地上に降り、翼を伏せて平伏するのであった。
ピーちゃんの威圧は鳥系への効果が絶大であり、飛行系の生物や魔物にはピーちゃんの威圧は何よりも恐ろしい物となり、逆らえなくなってしまうのである。
実際に飛龍とピーちゃんが戦えば、一瞬で切り刻まれて死ぬだけとなるだろう。
それを本能でも悟っているため、尚更逆らえないのである。
飛龍の乗り手は、指示を無視して地上に降り、テコでも動こうとしなくなった自分の飛龍を、ため息をついて眺めるのであった。
ーー
「赤い悪魔に向け、一斉に撃てっ!」
傭兵部隊長の指示で、50人ほどの魔法使い達から次々と攻撃魔法が放たれる。
〚魔法の矢〛
〚炎の矢〛
〚炸裂する火球〛
〚炎の嵐〛
〚迸る稲妻〛
〚氷柱の爆発〛
〚氷の槍〛
〚風の刃〛
〚暴風〛
〚石の礫〛
〚岩の弾丸〛
……
様々な属性の攻撃魔法が合計何百発も、空中にいる赤い悪魔=ロッドを襲う。
数分し、もう充分だと判断した傭兵部隊長の指示で、魔法攻撃が停止される。
「撃ち方止めっ!」
しかし魔法で発生した爆炎等が晴れて見ると、そこには傷ひとつない赤い悪魔が変わらず空中に佇んでいるのであった。
魔法は全て〔サイコバリア〕に阻まれ、直接ロッドに届いてはいなかった。
知らない魔法もあったため、模倣で習得出来たと密かにほくそ笑むロッド。
「ば、馬鹿な! あれだけの攻撃魔法が効いてないのか!」
驚愕する傭兵部隊長。
「無傷だぞ!」
「魔法が効いてないのか!」
「化け物か?」
「やはり悪魔なのか!」
「空中だと戦えないぞ!」
「悪魔め!」
「降りてこい!」
「そうだ! 卑怯者!」
傭兵部隊は柄が悪い輩が多いようで、罵詈雑言が飛んでロッドの耳にも入る。
ロッドはそれならと〔念動力の翼〕で高速で飛翔し、傭兵部隊のど真ん中に舞い降りた。
「チャンスだ! 直接攻撃部隊で殺れっ!」
傭兵部隊長が千載一遇の機会を得たとばかりに叫ぶ。
〚突撃〛
〚連撃〛
〚三連撃〛
〚剛撃〛
〚剛衝撃〛
〚剛刺突〛
〚精密射撃〛
〚三連射〛
〚速射〛
〚渾身の一撃〛
〚全身全霊の一撃〛
……
様々な武器から、様々な戦技での物理攻撃が、赤い悪魔=ロッドを襲う。
背後攻撃であったり、一旦距離を取っての一斉射撃であったり、中には王国にいたゴードンのように身体強化を使う高ランク冒険者の様な者もいた。
その全ての攻撃を受けても傷ひとつなく、一歩も動かないロッド。
〔サイコバリア〕も無敵ではないが、傭兵部隊の者達の中級までの攻撃魔法や単発攻撃では、守りに徹した時に常時サイコエネルギーで補強される〔サイコバリア〕の強度を突破出来ないのだ。
無傷の赤い悪魔=ロッドに怯む傭兵達。
「もう終わりなのか?」
さきほどから指揮をしてる傭兵部隊長に、ロッドは尋ねた。
傭兵部隊長は頬をピクピクさせ、答えられず固まっている。
「なら今度はこちらのターンだな」
ロッドは片手を空に向けると、魔法を発動した。
〚炸裂する火球〛出力最大同時発動!
ロッドは自分が出せる最大威力で、同時発動も最大限を試みる事にしてみた。
以前、オーク亜種を屠った時には1mを少し超えるぐらいであった火球が、数々の経験を経たからなのか毎日の精神統一のお蔭なのか、今は大人の背丈ほどの巨大なサイズになっていた。
そのサイズの火球が、同時発動により数百の数で所狭しとひしめいている。
少しヤバいかな?と思うロッドであったが、発動を止める方法など知らないため、発射するしかなかった。
大空に超特大の炸裂する火球が多数打ち上がる。
ドッガガガがガガガがガガガガガガガガガガガガガオオオオォォッ……
少し拡散して撃った火球が、大爆発を起こして大空全体を炎で埋め尽くし、大音響を響かせた。
ーー
帝国兵達は諦めた表情で、次々と武器を地面に置いていく。
全員が理解していたのだ。
先程の魔法は、山へ撃てば山が消失し、街へ撃てば街ごと全てが灰になるほどの威力だ。
あんな威力の魔法を見た後では、もう誰も赤い悪魔に逆らう気にはなれなかったのである。
仮にこの戦場に撃てば、自分達帝国軍の全滅は必至だろう。
散々赤い悪魔に攻撃していた傭兵部隊も、魔法攻撃でも物理攻撃でも全く傷つく様子がないのと、先程見た強大な威力の魔法で心を折られていた。
ーー
ロッドは、空から見渡した時に見つけた帝国軍の本陣まで悠々と歩く。
青白い光に包まれたロッドが歩くと、進行方向の人波が割れてゆく。
いつの間にかハム美とピーちゃん、狼獣人のドルフが付いてきていた。
ハム美はユニークモンスター化しており、背中にミーアを乗せている。
本陣の天幕に入ると、奥に帝国軍の幹部と思われる二人の男がいた。
「お前達が帝国軍の責任者だな?」
赤い悪魔=ロッドが尋ねる。
「私は帝国軍の参謀です。そしてこの方は帝国軍の将軍閣下です」
参謀役の男は観念し、自分達の立場を名乗った。
「お、お前は何者だ? その力、ほ、本当に悪魔なのか?」
将軍の男が後ずさりながら言う。
「俺は悪魔ではなく、守護者という者だ。俺がここに来たのは、お前達に王国の砦への進行を取り止め、撤退を命じるためだ」
ロッドは帝国将軍に返答し、続けて自身の考えを話す。
「お前達帝国は少しやり過ぎだ。獣人の里を征服・弾圧し、征服した者を捨て石にしてまた圧政の及ぶ版図を広げ続ける。これは獣人にだけという訳でも無いだろう? このままのやり方で帝国が侵略を繰り返し、暴虐の覇道を突き進むようであれば、平和を脅かす魔物と何ら変わらない。今後、世界にとって害悪だと判断すれば、俺が直接的に帝国を滅ぼすとしよう」
参謀役の男は、ロッドの的確な指摘に言葉を返す事が出来なかった。
帝国のやり方は他国にしてみれば、指摘の通りただの横暴な侵略であるからだ。
だが、将軍の男は敵意を剥き出しにして叫ぶ。
「そ、そんな事が出来る訳が無い!」
「出来ないと思うか? 俺は先程撃った魔法程度なら何千発でも撃てるぞ。数は撃ったが、あれはただの炸裂する火球なのだからな」
「「 !!! 」」
参謀役の男と将軍の男はこれまで以上に驚愕する。
軍事に関わる者として、中級魔法程度であればその威力や効果、範囲などは当然のように頭に入っている。
しかも〔炸裂する火球〕は代表的な中級魔法であり、使える者も多くその威力も熟知されている。
通常であれば家一軒を爆発させる程度である。
それも全て吹き飛ばす訳ではなく、燃やすのが精一杯なのだ。
さきほど赤い悪魔が放った魔法が、仮に帝都に放たれた場合、おそらく都の半分から3分の1程度は、文字通り吹き飛んでしまうだろう。
それをまだ何千発も撃てるという事であれば……
また、もっと威力の高い上級魔法などであれば……
帝国軍の二人は、冷や汗が止まらなくなるのであった。
「よし! この者達や帝国に少し分からせてこよう。ついでに色々と根回しも含んでな! ドルフ、お前は一旦獣人達の元に戻ってピーちゃんと一緒に獣人達を護れ。もし俺が帰るまでに帝国軍が獣人達を攻撃してきた場合、帝国軍は皆殺しにしても構わない」
ロッドがドルフとピーちゃんに獣人を護るよう指示を出す。
(『はいデス! ご主人様!』)
「はっ! 承知しました。守護者様!」
「ミーアは獣人代表として一緒に来てくれ! ハム美はミーアの肩で護衛だ」
そしてミーアとハム美にはついて来るように指示を出した。
「はい! 一緒に参ります!」
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皆の答えを聞くと、ロッドは帝国軍の二人を連れて〔瞬間移動〕するのであった。
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