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第33話 劣勢と瀕死
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この第33話は一度編集中に誤って公開してしまった為、
予約公開時に更新通知が行われませんでした。
(通知が複数回飛ばないようにするアルファポリスの仕様です)
お詫び申し上げます。
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ロッドは〔念動力の翼〕で飛行し、敵を街の中央から破壊された正門跡まで引き付けてきた。
吸血鬼の君主を筆頭に続々と吸血鬼達も地上に降りて変身を解き、元の姿を現す。
吸血鬼達はそのままぐるっと円形にロッドを囲み、逃さないとでもいう様に包囲した。
吸血鬼の君主が一人、前に進み出てロッドに問う。
「一つ聞いておこう。その力、お前は光の神の化身であるのか?」
(光の神の化身が現れ、闇が脅かされる)
闇の女神様が降された神託は吸血鬼の君主も耳にしていたのだ。
「知らないな。何の事だ?」
ロッドは本当に分からない為そう答えた。
「まあ良かろう。我の眷属をこれほどまでに大勢滅ぼしてくれたのだ。お前を殺し、この街の人間も、この国の人間も、我の目についた人間は全て殺し尽くしてやろうぞ!!」
吸血鬼の君主が最初は静かに、最後は激昂して告げた。
「ならばお前を、お前達を全て滅ぼすまでだ。それがこの世界の守護を任された俺の役目だからな。だが俺も一人じゃないぞ!」
ロッドはゆっくりと右手を前に出して超能力を発動する。
〔物質取得〕
一瞬の後、アイリスを中央に、左にハム美、右にピーちゃんが出現する。
「アイリス、ハム美、ピーちゃん。雑魚の掃討を頼む。俺は吸血鬼の君主と上空で戦う!」
「承知しました。ロッド様、ご武運を!」
アイリスが声で、ハム美とピーちゃんは仕草で応えた。
そしてロッドは吸血鬼の君主に両手を向け、超能力を発動するのであった。
ーー
ロッドは〔瞬間移動〕で吸血鬼の君主ごと上空に移動し、空中で〔念動力の翼〕を発動して空中に静止していた。
「ぬう!我を一瞬でこんな上空まで転移させるとは。その力、なんなのだ?」
上空でロッドと睨み合いながら吸血鬼の君主がロッドに問いかける。
吸血鬼の君主も何らかの力、呪文を唱えていなかったので恐らくはアイテムで飛行をしていると思われた。
「これは超能力という力だ。この回答で通じるか?それより少しは俺の質問にも答えてもらおうか。お前達は誰に依頼されてここまで来た?」
ロッドが疑問に2つ答えた代わりに質問をする。
「フン。それは我の眷属が2日前に何者かに滅ぼされたからだ。我は闇の女神様にお前達人間への復讐を誓ったのだ!」
吸血鬼の君主は自分がここまで来た理由を説明した。
「違う!その前の話しだ!なぜお前の眷属はこの近辺に現れて人間を襲ったんだ?その襲撃が誰の依頼かを聞いている!それが無ければお前の眷属は今も生きてるだろう?」
ロッドが元凶を問い質す。
「我は人間共の争いには興味がないが、闇の女神教団からの依頼があったのだ。ここに戻っている途中の一行を殺せとな」
聞いたことろですぐ死ぬと思っていた吸血鬼の君主は、ロッドに闇の女神教団から依頼された話を伝えた。
「なるほどな。だがその理由では逆撃を食らって死んだとしても自業自得じゃないか?」
ロッドは襲って来た方が悪いと断言する。
「我等と人間を比べるでない。人間など家畜のような存在よ!思うがままにして何が悪いか?もう飽きたな、そろそろ死ぬが良い!」
吸血鬼の君主が答える。
ロッドは〔サイコジャベリン〕を生成し、牽制で吸血鬼の君主に放ってみた。
ただの吸血鬼であれば〔サイコジャベリン〕が命中すれば滅ぼせる事は分かっているが、吸血鬼の君主にはどの程度通じるのか?
〔サイコジャベリン〕の投擲速度は速い。
数を撃てば空中で静止した状態で全て避けるのは無理があるだろう。
そして命中すれば少なくともある程度のダメージは与えられるはずだ。
精神力をかなり消耗したとはいえ徐々に回復している事もあり〔サイコジャベリン〕ならばまだ無数に打てそうだった。
数で圧倒する手もあるなと考えるロッドであったが、そう期待通りにはいかなかった。
吸血鬼の君主が何かを唱えると濃い闇が身体を包み込み〔サイコジャベリン〕を弾き返したのである。
「ふははは!この固有魔法〔闇の衣〕の防御は破れないぞ!何人たりとも我の身体に毛ほどの傷さえ付ける事も出来ぬ!」
=============== 《闇の衣》
闇の衣は吸血鬼の君主が持つ固有魔法の一つであり、闇の深淵から湧き上がる濃い闇で身を守る防御魔法である。
物理・魔法問わず一定の威力に達しない攻撃を、全て無効にする効果を持つ。
発動時は術者自身の耐久属性値も向上するため吸血鬼の君主の能力属性値が高い事も合わせ、吸血鬼の君主が公言する通り鉄壁の防御魔法となる。
==============================
吸血鬼の君主は盛大に笑い、さらにロッドを攻撃するために呪文を唱え始めた。
ロッドは〔サイコブレード〕を生成し、〔サイコ纏い〕で身体強化した状態で吸血鬼の君主に斬り付けるも、全て闇の衣に弾かれてしまう。
そうしているうちに吸血鬼の君主の魔法が発動する。
〚死の腐食風〛
=============== 《死の腐食風》
死の腐食風は吸血鬼の君主が持つ固有魔法の一つである。
腐食効果を持つ闇の黒風で相手を死に至らしめる攻撃魔法である。
掌から触手のようにも見える指向性のある黒風を複数放ち、接触したターゲットに即死および腐食効果を与える。
一度の発動で複数回の放出が行える魔力効率の高い魔法でもある。
==============================
吸血鬼の君主の掌から指向性のある漆黒の風がロッドに放たれるが、〔未来視〕が発動したロッドはその攻撃をギリギリ回避する事が出来た。
=============== 《未来視》
超能力のひとつであり受動的に近未来を視る能力である。
基本的には危機の感知とセットになっており、ロッドが望まない未来が訪れる可能性がある場合に限り、先に未来に起こる事柄を一瞬で視ることが出来る。
何もしなければ実現する未来であるが、その後のロッドの行動により回避する事が可能である。
但し、視えたからといって100%回避が出来る保証は無い。
そして、長くても数十秒先の未来しか視る事が出来ない。
==============================
風が服をかすめ、触れたところが黒く腐食してボロボロと崩れ落ちる。
吸血鬼の君主の攻撃魔法はどうやら一度の魔法発動で複数回放てるらしく、一時的に防戦一方になるロッド。
魔法消去を試みるも吸血鬼の君主の魔法には効果が無い様だった。
ロッドは〔サイコジャベリン〕を空中に滞留させ、〔念動力〕で一気に吸血鬼の君主に向けて打ち出すといったトリッキーな事も試してみたが、やはり闇の衣に弾かれてしまう。
吸血鬼の君主は爪の斬撃を入れ、ロッドは〔サイコブレード〕で受け止めるが、そのまま弾き飛ばされてしまう。
どうやら能力属性値は吸血鬼の君主の方がロッドよりも随分上のようである。
ロッドは魔法も少し試して見るが、強めに撃った炸裂する火球が吸血鬼の君主の至近距離で大爆発を起こすも、闇の衣に阻まれてダメージを与えられないようであった。
何度か直接攻撃、魔法攻撃の応酬があり、ロッドは吸血鬼の君主の魔法を〔念動力の翼〕と〔未来視〕を駆使してなんとか避け続けていたが、遂に死の腐食風がロッドの左腕を捉えた。
「ぐっ!」
ロッドが低い声で呻く。
そして魔法を受けた左腕が黒く変色して動かなくなるのであった。
ーーーーー
ジュリアンとジョアンナ、リーンステアは街の上空で戦うロッドと吸血鬼の君主との戦いを遠くから祈るように見つめていた。
上空で青白い光を纏ったロッドが放つ眩い光が何度も瞬き、光ってはまた散る。
夜空に魔法で大輪の花が咲き、消える。
吸血鬼の君主の周りには濃い闇がまとわり付き、偶に放たれる闇の塊がロッドを襲っているのが分かる。
そしてついに闇が、青白い光を部分的にだが消し去るのを見るのであった。
「嫌あ!ロッド様!」
「ロッドさん!」
「ロッド殿!」
明らかにロッドが劣勢であった。ジュリアンとジョアンナ、リーンステアは後悔した。自分達がロッドに救済を願ったばかりに…
アイリス達はロッドの手助けに呼ばれたようで、もう近くにはいない。
何処かで同じ様に戦っているのかもしれない。
そうして見守るうちに、さらなる部分も闇に呑まれてゆくのを見るのであった。
ーー
冒険者達も遠くから上空で繰り広げられる半神の守護者と吸血鬼の君主の戦いを見守っていた。
半神の守護者の攻撃は吸血鬼の君主に届いておらず、空中で爆発した物凄い威力の炸裂する火球でさえダメージを受けていないように見えた。
吸血鬼の君主もまさしく神のような力だ。
明らかに劣勢になっており、遂には腕に魔法でダメージを受けた半神の守護者を見て涙を流す者、悲鳴を上げる者、悔しそうに歯を食いしばる者、ただ祈る者もいた。
精霊の扉は半神の守護者を信じる。
半神の守護者は悪を討つ者だ。
バーン達は守護者の戦いから目を離さなかった。
ーーーーー
吸血鬼の君主が使う死の腐食風には触れた物を腐食させ、さらに生物であれば即死させる効果を持っていた。
ロッドが身につけているイクティスの指輪の効果により、即死は免れていたが両腕と両脚に部分的なダメージを食らい、自由に動かせなくなってしまっていた。
ただ〔念動力の翼〕は健在であり、地上に落下する事は無かったが自分でも劣勢にある事は理解していた。
吸血鬼の君主の高い能力属性値と〔闇の衣〕でこちらからの攻撃は全く効かず、あちらからの攻撃や魔法はどれも致命的であった。
有効な攻め手が無く、焦るロッドはさらに追撃で爪の斬撃を受けてしまい、片腕を根本から切り捨てられ胴体にも深刻なダメージを受ける。
吸血鬼の君主の爪の斬撃には死の呪いで即死する効果と、麻痺と猛毒の追加効果があったが、イクティスの指輪の即死無効と全状態異常無効が発動したため無効となった。
だが即死では無いにしても出血もあり、大ダメージを受け死に瀕する怪我を負って意識が徐々に朦朧となるロッド。
それをチャンスと見た吸血鬼の君主はロッドを屠るべく追撃に出るが、そこでロッドが急に強烈な金色の光を放出した。
あまりの眩しさに片手で目を覆う吸血鬼の君主。
ロッドが死に瀕する重症を負った事で、生存本能により変動する能力であるギフト〈神の血族〉の能力により、全能力属性が+9(1000%向上=11.0倍)までアップしたのだ。
〈ロッド〉
力属性ランクA(超一流)→S(英雄級)
敏捷属性ランクA(超一流)→S(英雄級)
耐久属性ランクB(一流)→S(英雄級)
知能属性ランクS(英雄級)→SS(人外)
魔力属性ランクA(超一流)→S(英雄級)
精神力属性ランクGOD(神級)
そしてそれに連動し、全ての能力属性値が英雄級以上に達した時、隠されていたこの世界の理により新たなギフト〈英雄〉が与えられたのであった。
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お詫び申し上げます。
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ロッドは〔念動力の翼〕で飛行し、敵を街の中央から破壊された正門跡まで引き付けてきた。
吸血鬼の君主を筆頭に続々と吸血鬼達も地上に降りて変身を解き、元の姿を現す。
吸血鬼達はそのままぐるっと円形にロッドを囲み、逃さないとでもいう様に包囲した。
吸血鬼の君主が一人、前に進み出てロッドに問う。
「一つ聞いておこう。その力、お前は光の神の化身であるのか?」
(光の神の化身が現れ、闇が脅かされる)
闇の女神様が降された神託は吸血鬼の君主も耳にしていたのだ。
「知らないな。何の事だ?」
ロッドは本当に分からない為そう答えた。
「まあ良かろう。我の眷属をこれほどまでに大勢滅ぼしてくれたのだ。お前を殺し、この街の人間も、この国の人間も、我の目についた人間は全て殺し尽くしてやろうぞ!!」
吸血鬼の君主が最初は静かに、最後は激昂して告げた。
「ならばお前を、お前達を全て滅ぼすまでだ。それがこの世界の守護を任された俺の役目だからな。だが俺も一人じゃないぞ!」
ロッドはゆっくりと右手を前に出して超能力を発動する。
〔物質取得〕
一瞬の後、アイリスを中央に、左にハム美、右にピーちゃんが出現する。
「アイリス、ハム美、ピーちゃん。雑魚の掃討を頼む。俺は吸血鬼の君主と上空で戦う!」
「承知しました。ロッド様、ご武運を!」
アイリスが声で、ハム美とピーちゃんは仕草で応えた。
そしてロッドは吸血鬼の君主に両手を向け、超能力を発動するのであった。
ーー
ロッドは〔瞬間移動〕で吸血鬼の君主ごと上空に移動し、空中で〔念動力の翼〕を発動して空中に静止していた。
「ぬう!我を一瞬でこんな上空まで転移させるとは。その力、なんなのだ?」
上空でロッドと睨み合いながら吸血鬼の君主がロッドに問いかける。
吸血鬼の君主も何らかの力、呪文を唱えていなかったので恐らくはアイテムで飛行をしていると思われた。
「これは超能力という力だ。この回答で通じるか?それより少しは俺の質問にも答えてもらおうか。お前達は誰に依頼されてここまで来た?」
ロッドが疑問に2つ答えた代わりに質問をする。
「フン。それは我の眷属が2日前に何者かに滅ぼされたからだ。我は闇の女神様にお前達人間への復讐を誓ったのだ!」
吸血鬼の君主は自分がここまで来た理由を説明した。
「違う!その前の話しだ!なぜお前の眷属はこの近辺に現れて人間を襲ったんだ?その襲撃が誰の依頼かを聞いている!それが無ければお前の眷属は今も生きてるだろう?」
ロッドが元凶を問い質す。
「我は人間共の争いには興味がないが、闇の女神教団からの依頼があったのだ。ここに戻っている途中の一行を殺せとな」
聞いたことろですぐ死ぬと思っていた吸血鬼の君主は、ロッドに闇の女神教団から依頼された話を伝えた。
「なるほどな。だがその理由では逆撃を食らって死んだとしても自業自得じゃないか?」
ロッドは襲って来た方が悪いと断言する。
「我等と人間を比べるでない。人間など家畜のような存在よ!思うがままにして何が悪いか?もう飽きたな、そろそろ死ぬが良い!」
吸血鬼の君主が答える。
ロッドは〔サイコジャベリン〕を生成し、牽制で吸血鬼の君主に放ってみた。
ただの吸血鬼であれば〔サイコジャベリン〕が命中すれば滅ぼせる事は分かっているが、吸血鬼の君主にはどの程度通じるのか?
〔サイコジャベリン〕の投擲速度は速い。
数を撃てば空中で静止した状態で全て避けるのは無理があるだろう。
そして命中すれば少なくともある程度のダメージは与えられるはずだ。
精神力をかなり消耗したとはいえ徐々に回復している事もあり〔サイコジャベリン〕ならばまだ無数に打てそうだった。
数で圧倒する手もあるなと考えるロッドであったが、そう期待通りにはいかなかった。
吸血鬼の君主が何かを唱えると濃い闇が身体を包み込み〔サイコジャベリン〕を弾き返したのである。
「ふははは!この固有魔法〔闇の衣〕の防御は破れないぞ!何人たりとも我の身体に毛ほどの傷さえ付ける事も出来ぬ!」
=============== 《闇の衣》
闇の衣は吸血鬼の君主が持つ固有魔法の一つであり、闇の深淵から湧き上がる濃い闇で身を守る防御魔法である。
物理・魔法問わず一定の威力に達しない攻撃を、全て無効にする効果を持つ。
発動時は術者自身の耐久属性値も向上するため吸血鬼の君主の能力属性値が高い事も合わせ、吸血鬼の君主が公言する通り鉄壁の防御魔法となる。
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吸血鬼の君主は盛大に笑い、さらにロッドを攻撃するために呪文を唱え始めた。
ロッドは〔サイコブレード〕を生成し、〔サイコ纏い〕で身体強化した状態で吸血鬼の君主に斬り付けるも、全て闇の衣に弾かれてしまう。
そうしているうちに吸血鬼の君主の魔法が発動する。
〚死の腐食風〛
=============== 《死の腐食風》
死の腐食風は吸血鬼の君主が持つ固有魔法の一つである。
腐食効果を持つ闇の黒風で相手を死に至らしめる攻撃魔法である。
掌から触手のようにも見える指向性のある黒風を複数放ち、接触したターゲットに即死および腐食効果を与える。
一度の発動で複数回の放出が行える魔力効率の高い魔法でもある。
==============================
吸血鬼の君主の掌から指向性のある漆黒の風がロッドに放たれるが、〔未来視〕が発動したロッドはその攻撃をギリギリ回避する事が出来た。
=============== 《未来視》
超能力のひとつであり受動的に近未来を視る能力である。
基本的には危機の感知とセットになっており、ロッドが望まない未来が訪れる可能性がある場合に限り、先に未来に起こる事柄を一瞬で視ることが出来る。
何もしなければ実現する未来であるが、その後のロッドの行動により回避する事が可能である。
但し、視えたからといって100%回避が出来る保証は無い。
そして、長くても数十秒先の未来しか視る事が出来ない。
==============================
風が服をかすめ、触れたところが黒く腐食してボロボロと崩れ落ちる。
吸血鬼の君主の攻撃魔法はどうやら一度の魔法発動で複数回放てるらしく、一時的に防戦一方になるロッド。
魔法消去を試みるも吸血鬼の君主の魔法には効果が無い様だった。
ロッドは〔サイコジャベリン〕を空中に滞留させ、〔念動力〕で一気に吸血鬼の君主に向けて打ち出すといったトリッキーな事も試してみたが、やはり闇の衣に弾かれてしまう。
吸血鬼の君主は爪の斬撃を入れ、ロッドは〔サイコブレード〕で受け止めるが、そのまま弾き飛ばされてしまう。
どうやら能力属性値は吸血鬼の君主の方がロッドよりも随分上のようである。
ロッドは魔法も少し試して見るが、強めに撃った炸裂する火球が吸血鬼の君主の至近距離で大爆発を起こすも、闇の衣に阻まれてダメージを与えられないようであった。
何度か直接攻撃、魔法攻撃の応酬があり、ロッドは吸血鬼の君主の魔法を〔念動力の翼〕と〔未来視〕を駆使してなんとか避け続けていたが、遂に死の腐食風がロッドの左腕を捉えた。
「ぐっ!」
ロッドが低い声で呻く。
そして魔法を受けた左腕が黒く変色して動かなくなるのであった。
ーーーーー
ジュリアンとジョアンナ、リーンステアは街の上空で戦うロッドと吸血鬼の君主との戦いを遠くから祈るように見つめていた。
上空で青白い光を纏ったロッドが放つ眩い光が何度も瞬き、光ってはまた散る。
夜空に魔法で大輪の花が咲き、消える。
吸血鬼の君主の周りには濃い闇がまとわり付き、偶に放たれる闇の塊がロッドを襲っているのが分かる。
そしてついに闇が、青白い光を部分的にだが消し去るのを見るのであった。
「嫌あ!ロッド様!」
「ロッドさん!」
「ロッド殿!」
明らかにロッドが劣勢であった。ジュリアンとジョアンナ、リーンステアは後悔した。自分達がロッドに救済を願ったばかりに…
アイリス達はロッドの手助けに呼ばれたようで、もう近くにはいない。
何処かで同じ様に戦っているのかもしれない。
そうして見守るうちに、さらなる部分も闇に呑まれてゆくのを見るのであった。
ーー
冒険者達も遠くから上空で繰り広げられる半神の守護者と吸血鬼の君主の戦いを見守っていた。
半神の守護者の攻撃は吸血鬼の君主に届いておらず、空中で爆発した物凄い威力の炸裂する火球でさえダメージを受けていないように見えた。
吸血鬼の君主もまさしく神のような力だ。
明らかに劣勢になっており、遂には腕に魔法でダメージを受けた半神の守護者を見て涙を流す者、悲鳴を上げる者、悔しそうに歯を食いしばる者、ただ祈る者もいた。
精霊の扉は半神の守護者を信じる。
半神の守護者は悪を討つ者だ。
バーン達は守護者の戦いから目を離さなかった。
ーーーーー
吸血鬼の君主が使う死の腐食風には触れた物を腐食させ、さらに生物であれば即死させる効果を持っていた。
ロッドが身につけているイクティスの指輪の効果により、即死は免れていたが両腕と両脚に部分的なダメージを食らい、自由に動かせなくなってしまっていた。
ただ〔念動力の翼〕は健在であり、地上に落下する事は無かったが自分でも劣勢にある事は理解していた。
吸血鬼の君主の高い能力属性値と〔闇の衣〕でこちらからの攻撃は全く効かず、あちらからの攻撃や魔法はどれも致命的であった。
有効な攻め手が無く、焦るロッドはさらに追撃で爪の斬撃を受けてしまい、片腕を根本から切り捨てられ胴体にも深刻なダメージを受ける。
吸血鬼の君主の爪の斬撃には死の呪いで即死する効果と、麻痺と猛毒の追加効果があったが、イクティスの指輪の即死無効と全状態異常無効が発動したため無効となった。
だが即死では無いにしても出血もあり、大ダメージを受け死に瀕する怪我を負って意識が徐々に朦朧となるロッド。
それをチャンスと見た吸血鬼の君主はロッドを屠るべく追撃に出るが、そこでロッドが急に強烈な金色の光を放出した。
あまりの眩しさに片手で目を覆う吸血鬼の君主。
ロッドが死に瀕する重症を負った事で、生存本能により変動する能力であるギフト〈神の血族〉の能力により、全能力属性が+9(1000%向上=11.0倍)までアップしたのだ。
〈ロッド〉
力属性ランクA(超一流)→S(英雄級)
敏捷属性ランクA(超一流)→S(英雄級)
耐久属性ランクB(一流)→S(英雄級)
知能属性ランクS(英雄級)→SS(人外)
魔力属性ランクA(超一流)→S(英雄級)
精神力属性ランクGOD(神級)
そしてそれに連動し、全ての能力属性値が英雄級以上に達した時、隠されていたこの世界の理により新たなギフト〈英雄〉が与えられたのであった。
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