11 / 16
一条浩市(祖父)
第11話 孫を探して
しおりを挟む
あれからワシは部下を使って浩二の行方を探したが、やはり浩二の宣言通り見つかる事は無かった。
浩二からは数年間で二回ほど孫が産まれたと手紙での連絡が入った。
ワシはグループの総力を持って手紙の言葉の文言や文脈、カモフラージュしてあるであろう消印、手紙の成分の分析から恐らく〇〇県であろう事だけが分かった。
流石は浩二、遠すぎず近すぎずの微妙な距離だ。
浩二から知らされた孫の名前は浩人と真由子。
流石に名前に嘘は無いだろうが、一般的にありそうな名前ではある。
手紙の時期と性別、年齢の関係性はフェイクである可能性が高いという分析もされていたが、ワシはこの手掛かりで手当たり次第に浩二の子供達の調査を、数年に渡って繰り返していた。
ワシは仕事の合間に自分の足で探しに行く事もあった。
ある時またもや空振りの徒労感からか公園で急に持病の心臓が痛み出した。
「うぐっ!」
苦しくて胸を鷲づかみにする。
く、薬は持っているのに、自分では出せない……
こ、これまでか……浩二……
ーーーーー
「どうしたんですか!! 大丈夫ですか!」
小学生ぐらいの少年が、倒れたワシを心配して来てくれた様だ。
「……く、薬を……」
ワシが何とか懐に薬がある事を伝えるとその子は必死になって薬を見つけてくれ、そして何処からか水を持ってきて、ワシに薬を飲ませてくれたんじゃ。
その後、まだ苦しんでるワシの背中をその少年はさすり続けてくれた。
少ししてやっと薬が効いてきたのか、喋れるようになった。
「君がワシに薬を飲ませてくれたのか?」
「えっと、はい。苦しそうにしていたので……」
ワシは助けてくれた眼の前の少年の顔をみて驚く。
少し正面からじっと見させてもらうと、やはり浩二の面影がある様に思えた。
もしかして……これは名前を聞いておくべきじゃろう。
「そうか、ありがとう。ワシは心臓を悪くしていてな。失礼だが君の名前は?」
「僕は吉井浩人と言います」
「浩人!……だが吉井か。いや、すまん。少し人を探していてな。何にせよ助かった。是非、君にお礼をしたいんじゃが……」
ワシはかなり落胆した。
人違いであったか……この様な利発そうで、倒れている人を一目散に助けに来るような優しい少年が、ワシの孫ならどんなに良かった事か……
じゃがなんというか、凄くボロボロの服を着ている。
苗字も違ったし、浩二なら絶対に自分の子供にこの様な格好はさせんじゃろう。
あやつの頭の良さなら自分の持つ元手でいくらでも稼げるだろうしな。
こりゃ完全に人違いじゃ……
「ああっ! しまった、出前を忘れてた! それじゃ僕はこれで!」
「えっ……」
ワシとした事が、命を助けてくれた恩人の少年にお礼が出来なかった……
しかし出前と言ってたが、あの歳で働いているのか?
あの子の親は一体何をしておるんじゃ!
まあ、明日にでもこの辺で出前をやっている店を見つけて、あの子に礼を弾むとしようか。
だがその後、事の顛末を聞いた家族や部下達から、以後の単独行動は絶対にしない様に言われてしまったんじゃ。
浩二からは数年間で二回ほど孫が産まれたと手紙での連絡が入った。
ワシはグループの総力を持って手紙の言葉の文言や文脈、カモフラージュしてあるであろう消印、手紙の成分の分析から恐らく〇〇県であろう事だけが分かった。
流石は浩二、遠すぎず近すぎずの微妙な距離だ。
浩二から知らされた孫の名前は浩人と真由子。
流石に名前に嘘は無いだろうが、一般的にありそうな名前ではある。
手紙の時期と性別、年齢の関係性はフェイクである可能性が高いという分析もされていたが、ワシはこの手掛かりで手当たり次第に浩二の子供達の調査を、数年に渡って繰り返していた。
ワシは仕事の合間に自分の足で探しに行く事もあった。
ある時またもや空振りの徒労感からか公園で急に持病の心臓が痛み出した。
「うぐっ!」
苦しくて胸を鷲づかみにする。
く、薬は持っているのに、自分では出せない……
こ、これまでか……浩二……
ーーーーー
「どうしたんですか!! 大丈夫ですか!」
小学生ぐらいの少年が、倒れたワシを心配して来てくれた様だ。
「……く、薬を……」
ワシが何とか懐に薬がある事を伝えるとその子は必死になって薬を見つけてくれ、そして何処からか水を持ってきて、ワシに薬を飲ませてくれたんじゃ。
その後、まだ苦しんでるワシの背中をその少年はさすり続けてくれた。
少ししてやっと薬が効いてきたのか、喋れるようになった。
「君がワシに薬を飲ませてくれたのか?」
「えっと、はい。苦しそうにしていたので……」
ワシは助けてくれた眼の前の少年の顔をみて驚く。
少し正面からじっと見させてもらうと、やはり浩二の面影がある様に思えた。
もしかして……これは名前を聞いておくべきじゃろう。
「そうか、ありがとう。ワシは心臓を悪くしていてな。失礼だが君の名前は?」
「僕は吉井浩人と言います」
「浩人!……だが吉井か。いや、すまん。少し人を探していてな。何にせよ助かった。是非、君にお礼をしたいんじゃが……」
ワシはかなり落胆した。
人違いであったか……この様な利発そうで、倒れている人を一目散に助けに来るような優しい少年が、ワシの孫ならどんなに良かった事か……
じゃがなんというか、凄くボロボロの服を着ている。
苗字も違ったし、浩二なら絶対に自分の子供にこの様な格好はさせんじゃろう。
あやつの頭の良さなら自分の持つ元手でいくらでも稼げるだろうしな。
こりゃ完全に人違いじゃ……
「ああっ! しまった、出前を忘れてた! それじゃ僕はこれで!」
「えっ……」
ワシとした事が、命を助けてくれた恩人の少年にお礼が出来なかった……
しかし出前と言ってたが、あの歳で働いているのか?
あの子の親は一体何をしておるんじゃ!
まあ、明日にでもこの辺で出前をやっている店を見つけて、あの子に礼を弾むとしようか。
だがその後、事の顛末を聞いた家族や部下達から、以後の単独行動は絶対にしない様に言われてしまったんじゃ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
十年前の片思い。時を越えて、再び。
赤木さなぎ
SF
キミは二六歳のしがない小説書きだ。
いつか自分の書いた小説が日の目を浴びる事を夢見て、日々をアルバイトで食い繋ぎ、休日や空き時間は頭の中に広がる混沌とした世界を文字に起こし、紡いでいく事に没頭していた。
キミには淡く苦い失恋の思い出がある。
十年前、キミがまだ高校一年生だった頃。一目惚れした相手は、通い詰めていた図書室で出会った、三年の“高橋先輩”だ。
しかし、当時のキミは大したアプローチを掛けることも出来ず、関係の進展も無く、それは片思いの苦い記憶として残っている。
そして、キミはその片思いを十年経った今でも引きずっていた。
ある日の事だ。
いつもと同じ様にバイトを上がり、安アパートの自室へと帰ると、部屋の灯りが点いたままだった。
家を出る際に消灯し忘れたのだろうと思いつつも扉を開けると、そこには居るはずの無い、学生服に身を包む女の姿。
キミは、その女を知っている。
「ホームズ君、久しぶりね」
その声音は、記憶の中の高橋先輩と同じ物だった。
顔も、声も、その姿は十年前の高橋先輩と相違ない。しかし、その女の浮かべる表情だけは、どれもキミの知らない物だった。
――キミは夢を捨てて、名声を捨てて、富を捨てて、その輝かしい未来を捨てて、それでも、わたしを選んでくれるかしら?
【完結】婚約破棄して異世界に追放したくせに今さら迎えに来られたって私には素敵な旦那様がいるので元の世界には帰りません!
ネオン
恋愛
「アンジェリカ=ウォールナッツ侯爵令嬢! 貴様とは今この時をもって婚約関係に終止符を打つこととする!」そう声高に叫ぶのは私の婚約者である第二王子殿下。彼がとある女生徒と只ならぬ関係であることは知っていた。けれど学生のうちの火遊びと気にしていなかった。なのに嫉妬から彼女に嫌がらせをしたという冤罪を掛けられたのだ。婚約破棄は受け入れる。
あとは家同士で話し合えば良いとその場を去ろうとしたら、問答無用で異世界に追放されてしまった。私が元の世界にいたままだと、意中の彼女が安心して暮らせないからって。そもそも嫉妬すらしていなかった相手に何もするつもりなんてないのだけれど……。
そんな私が異世界で素敵な旦那様に出会って幸せになるお話です。
※本編は完結済みですが小話を追加中☆
※ムーンライトノベルズにて短編として上げていた物を、連載用にエピソードを増やして改稿しました。
※同タイトルで、ムーンライトノベルズに短編が掲載されていました。(連載版を載せるにあたり現在は取り下げてます)そちらで、一瞬ですが短編日間ランキング1位になりました(*^^*)
※短編バージョンには、ほんの少しだけうっすらとした大人表現がありましたが、連載にするにあたって濡れ場を増やしました。(濡れ場は後半と小話にて徐々に追加予定です)
※本編は完結済みなので、予約投稿を設定しています。小話については書き上げてからの投稿になりますので、亀投稿ですがまったりお待ちいただけたら幸いです。
ダイヤと屑石
まさみ
BL
容姿端麗頭脳明晰、パーフェクトな幼馴染のフジマにコンプレックスを抱く平凡な大学生・巧。
気になる女の子に玉砕した合コンの帰り道、酔っ払った勢いでフジマに絡んだのがきっかけでモテるレッスンを受けることになるのだが……。
溺愛幼馴染攻め×平凡男子受け
大学生幼馴染の甘々日常シリーズ。
イラスト:まる様(@maru_mori_25)イラスト:あきまろ(@tottamatrpg)様
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
親友のハジメテを俺がもらうことになりまして
緑虫
BL
大学生でインドア派を自負する平凡な眼鏡男子のそらは、高校時代からの親友である明るい爽やか系イケメンの大地とルームシェアをしている。ある日、そらの親が生活費を振り込み忘れたまま船旅へ出発してしまう。あまりにも金がなくお腹が空いて困り果てていたそらだったが、大地の機転で事なきを得る。
いつも頼りになる大地に恩返しをしたいと大地に伝えると、何故か話の流れで大地の童貞を捨てさせてほしいと頼まれて――?
アホエロ短編が書きたくなって衝動的に書いた作品です。頭をかるーくして読んでいただけると嬉しいです!
本編九話+おまけ(攻め視点)一話の計十話です♪
ムーンさんでも掲載中。
【不定期更新中】引き取った双子姉妹の俺への距離感がおかしい。
杜野秋人
恋愛
「真人兄さん」
「真人お兄ちゃん」
「お話があります」
「今日こそハッキリさせるわよ!」
俺の目の前には双子の姉妹。今年17歳の高校三年生で、もうすぐふたりとも18歳になる、俺の従妹たちだ。
10歳で両親を亡くして孤児になったこの子たちを、親戚一同の反対を押し切って引き取ってきてからはや7年。彼女たちはとんでもない美少女に成長してしまった。元々母親が日仏のハーフで、その母親の血を濃く受け継いだクォーターの彼女たちは、日本人とは思えぬほど凄絶な美貌を誇っている。
そんなふたりが、ここのところやけにグイグイ来る。父親の叔父の息子、つまり見た目も中身も純日本人な俺に対して、従兄だとか引き取ってくれた養い親だとか以上に『アピール』してくるのだ。
いや、お前たちの言いたいことは分かってる。分かってるから皆まで言うな。
「「私たちの、どっちと結婚するの!?」」
だから言うなってば!
だいたい、どっちかなんて選べるわけないだろ!結婚って『ひとりとしか出来ない』んだぞ!?俺に片方捨てろっていうのか!?
そんな俺、真人(まこと)の気も知らないで、今日も美人双子姉妹がグイグイ来る。
ホントマジで、どうなっても知らないからな!?
◆大好きな“お兄ちゃん”に自分を選んで欲しい双子と、片方なんて選べないお兄ちゃんのドタバタラブコメディ。
もだもだしているうちに、恋のライバルなんかも現れたりして……!?
◆最初の方は小学生編なので糖分控え目。ラブコメ展開は主に中学生編以降で。
若干の性的な匂わせ表現がそのうち出るかも知れません。苦手な方はご注意を。
◆本来の作品にはローファンタジー要素、具体的には魔術と魔術師が出てきますが、アルファポリス版ではその部分をカットして、現実世界の恋愛作品としてお届けする予定です。
なお、登場する地名は全て架空のものです。一応、舞台は九州北部のとある県です。
◆小説家になろうでも公開を開始しています。
執筆しつつの投稿になるので不定期更新です。ご了承ください。
吸血鬼公爵に嫁いだ私は血を吸われることもなく、もふもふ堪能しながら溺愛されまくってます
リオール
恋愛
吸血鬼公爵に嫁ぐこととなったフィーリアラはとても嬉しかった。
金を食い潰すだけの両親に妹。売り飛ばすような形で自分を嫁に出そうとする家族にウンザリ!
おまけに婚約者と妹の裏切りも発覚。こんな連中はこっちから捨ててやる!と家を出たのはいいけれど。
逃げるつもりが逃げれなくて恐る恐る吸血鬼の元へと嫁ぐのだった。
結果、血なんて吸われることもなく、吸血鬼公爵にひたすら愛されて愛されて溺愛されてイチャイチャしちゃって。
いつの間にか実家にざまぁしてました。
そんなイチャラブざまぁコメディ?なお話しです。R15は保険です。
=====
2020/12月某日
第二部を執筆中でしたが、続きが書けそうにないので、一旦非公開にして第一部で完結と致しました。
楽しみにしていただいてた方、申し訳ありません。
また何かの形で公開出来たらいいのですが…完全に未定です。
お読みいただきありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる