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一条浩市(祖父)

第11話 孫を探して

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あれからワシは部下を使って浩二の行方を探したが、やはり浩二の宣言通り見つかる事は無かった。

浩二からは数年間で二回ほど孫が産まれたと手紙での連絡が入った。

ワシはグループの総力を持って手紙の言葉の文言や文脈、カモフラージュしてあるであろう消印、手紙の成分の分析から恐らく〇〇県であろう事だけが分かった。
流石は浩二、遠すぎず近すぎずの微妙な距離だ。

浩二から知らされた孫の名前は浩人と真由子。
流石に名前に嘘は無いだろうが、一般的にありそうな名前ではある。
手紙の時期と性別、年齢の関係性はフェイクである可能性が高いという分析もされていたが、ワシはこの手掛かりで手当たり次第に浩二の子供達の調査を、数年に渡って繰り返していた。

ワシは仕事の合間に自分の足で探しに行く事もあった。
ある時またもや空振りの徒労感からか公園で急に持病の心臓が痛み出した。

「うぐっ!」

苦しくて胸を鷲づかみにする。

く、薬は持っているのに、自分では出せない……
こ、これまでか……浩二……


ーーーーー


「どうしたんですか!! 大丈夫ですか!」

小学生ぐらいの少年が、倒れたワシを心配して来てくれた様だ。

「……く、薬を……」

ワシが何とか懐に薬がある事を伝えるとその子は必死になって薬を見つけてくれ、そして何処からか水を持ってきて、ワシに薬を飲ませてくれたんじゃ。

その後、まだ苦しんでるワシの背中をその少年はさすり続けてくれた。
少ししてやっと薬が効いてきたのか、喋れるようになった。

「君がワシに薬を飲ませてくれたのか?」
「えっと、はい。苦しそうにしていたので……」

ワシは助けてくれた眼の前の少年の顔をみて驚く。

少し正面からじっと見させてもらうと、やはり浩二の面影がある様に思えた。
もしかして……これは名前を聞いておくべきじゃろう。

「そうか、ありがとう。ワシは心臓を悪くしていてな。失礼だが君の名前は?」
「僕は吉井浩人と言います」

「浩人!……だが吉井か。いや、すまん。少し人を探していてな。何にせよ助かった。是非、君にお礼をしたいんじゃが……」

ワシはかなり落胆した。
人違いであったか……この様な利発そうで、倒れている人を一目散に助けに来るような優しい少年が、ワシの孫ならどんなに良かった事か……

じゃがなんというか、凄くボロボロの服を着ている。
苗字も違ったし、浩二なら絶対に自分の子供にこの様な格好はさせんじゃろう。
あやつの頭の良さなら自分の持つ元手でいくらでも稼げるだろうしな。
こりゃ完全に人違いじゃ……

「ああっ! しまった、出前を忘れてた! それじゃ僕はこれで!」
「えっ……」

ワシとした事が、命を助けてくれた恩人の少年にお礼が出来なかった……
しかし出前と言ってたが、あの歳で働いているのか?
あの子の親は一体何をしておるんじゃ!

まあ、明日にでもこの辺で出前をやっている店を見つけて、あの子に礼を弾むとしようか。

だがその後、事の顛末を聞いた家族や部下達から、以後の単独行動は絶対にしない様に言われてしまったんじゃ。
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