上 下
7 / 16
黒田鉄男(伯父)

第7話 ドス黒い想い

しおりを挟む
俺の名前は黒田鉄男くろだてつお

俺はしがない街の中華店を営む家に生まれた。
子供の頃から親父に似てでっぷりとした小太り体型で、顔も良くない俺は女には全くモテなかった。

かといって勉強が出来るわけでもなく、どの道店を継がなきゃならない俺は素行も悪くて、まともに勉強などした事が無かった。

母親は俺が小さい頃に病気で死んでしまっていたが、俺が高校生になった頃に小学生の連れ子がいる二番目の母親が出来た。

何でも亭主にDVされてこの町に逃げてきた人らしい。
親父は容姿は悪いが気は優しくて力持ちのタイプだから、相談に乗っているうちに絆されたんだろう。

連れ子は女の子で細身で顔立ちも良く、将来は凄い美人になりそうな感じだったが、歳もかなり離れていたので俺が気にする事は無かった。

俺は高校を卒業すると店に入り、親父に中華料理を教えてもらいながら修行する毎日だった。


ーーーーー


俺がようやく一人前になった21歳、義理妹の由香が15歳の頃、二番目の母親がこの世を去った。

遂にこの街まで追いかけて来た元亭主に駅前で刺されたらしい。
親父が駆け付けた時にはもう息が無かったそうだ。

もちろん相手は現行犯で捕まえられて刑務所に入れられた。
相手も若くは無いので、もうシャバに出て来る事は無いそうだ。
扱いは小さいが全国的なニュースにもなる程だった。

それから母親が居なくなった負い目からなのか由香が店を手伝うようになった。
反対に親父は母親を守れなかった責任を感じてか徐々に衰弱し、一年後に流行したウィルスに感染してこの世を去ってしまった。

なんの因果か俺達義理の兄妹二人だけが残ってしまったんだ。


ーーーーー


それから俺は義理妹の由香を女として意識する様になった。

女っ気の全く無かった俺は店を手伝う由香とこのまま所帯を持って、店を続けて行くのも悪くないかと夢想する毎日だった。

それからしばらくして俺達の前に一人の男が現れた。

その男は若く洗練された出で立ちで、背も高いイケメンだった。
うちの店の味を気に入ってくれたらしく度々店を訪れるが、その度に由香が張り切って接客しているのがわかった。

由香は男をずっと目で追っていて、少しでも水が減ると直ぐに注ぎに行き、男への笑顔は他の客への愛想笑いと違って輝いていた。
そして会計の時にも男の手をやんわりと握っている様だ。

そのうちに男は由香と長い会話をする様になり、休日にはデートをする仲になっていった。

俺はその様子を見て歯噛みした。


ーーーーー


そして由香が18歳になって高校を卒業する時、二人に結婚の挨拶をされた。
今日これから結婚して男の家に住むと。

寝耳に水だった俺は渋々と了承したが、心の中はドス黒い想いが渦巻いていた。
畜生! 由香は俺の嫁にしようと思っていたのに! 何でだよ!

それから一人で店を切り盛りする様になった俺は求人の募集を出した。
どうせなら妙齢の女性にして、あわよくば仲良くなって俺の嫁になってくれないかという思いもあった。
もしうまい事そうなれば由香を忘れられるだろう。

だが応募してきたのは俺の一回りも年齢が高い女性だった。
落胆した俺だったが、なる早で決めて仕事を回さなければならない。
俺は結局はその女性を雇い入れた。

そしてその二年後、俺はその一回りも歳上の女性と結婚する事になった。
凄く酔っていた時に、つい手を出してしまったからだ。

自分のせいで逃げられなくなった俺だが、由香と吉井浩二と名乗る男へのドス黒い想いは消えることが無かった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...