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吉井浩人
第5話 知ってしまった真実
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妹がピンク色のランドセルで通学した次の日、学校の先生の一人が休みで授業が少なくなったので少し早めに帰宅出来た僕は、伯父さんの手伝いに店の前まで来た。
まだ午後の開店前の様で中に入ろうとすると話し声が聞こえて来る。
伯父さんと伯母さんの会話だ。
会話を邪魔をするとまた怒られるだろうから、僕は少し聞き耳を立てて会話が終わるのを待つ事にした。
「でも本当に大丈夫なの? 誰かがあの二人を支援しているんじゃない?」
「中古のランドセルでも貰ったんだろ? 流石にあいつらが自分で手に入れた物を、捨てろとも言えないしな」
「ねえ、もし私達が由香さん達を殺した事がバレでもしたら……」
「奴らを轢き殺した中古車は埋めて、その上に物置小屋を建てたし、バレる訳ないだろ」
「それはそうだけど……私、怖くて……」
「まあ、あの二人は中学を卒業したら無一文で放り出すさ。奴らの遺産も俺達でたっぷり貰ったしな」
「そうね。大丈夫よね? 後で妹の方を何か理由を付けて折檻してやるわ! この私を不安にさせるなんて!」
「まあ程々にな」
僕は聞いてはいけない会話を聞いてしまった様だ……
身体の震えが止まらない。
僕はそっと慎重に音を立てない様にその場を離れた。
そしてすぐに物置小屋にいる妹に出掛ける準備をさせ、二人のランドセルに必要な物を詰めてお金も全部持ち、エコバックに薄い毛布も入れ、真由子の手を引いて足早に家を出た。
ーーーーー
僕と真由子は家を出て、とりあえず晴臣くんの家に向かった。
晴臣くんの家はお母さんが家にいない。
本当はいるみたいだけどずっと入院している様で、晴臣くんに部屋に入れてもらうと、いつもの様に家政婦さんがジュースとお菓子を出してくれた。
そして部屋の隅で真由子がお菓子に夢中になっている間に、晴臣くんに僕が聞いてしまった事を小声で全部話した。
「浩人くん、これからどうするの?」
「うん。こうなったら家にはもう帰らずに、お父さんの免許証にあった住所に行ってみようと思うんだ」
このまま伯父さんの家にいて、もし僕がこの事を知ってると思われたら、僕たちは殺さてしまうかも知れない。
もう真由子を連れて逃げるしか無いだろう。
「それが良いかも知れないね。僕もネットで調べて見たんだけど、〇〇県で浩人くんのお父さんの名前がヒットしたよ。その免許証の住所の県と同じだから間違いないと思う」
「調べてくれたんだ。晴臣くん、ありがとう」
「真由子ちゃんに聞こえない様にしているけど、真由子ちゃんには言わないの?」
「うん。妹にはまだ知って欲しくないんだ……知ると、きっと許せなくなってしまうと思うから」
「浩人くんの考えは分かったよ。でも、ちょっと待って。そこまでの地図をプリンターで印刷するよ」
「ありがとう」
僕はいつの間にか寝てしまっていた真由子を起こしてランドセルを背負わせる。
晴臣くんに印刷してもらった地図も持った。
「はい、これ」
「晴臣くん、これは……」
晴臣くんがお札を数枚、僕に渡してくれた。
「こんな事もあるかもと、お小遣いを貯めていつでも渡せる様にしていたんだ。僕にはこれくらいしか出来ないけど、浩人くんが真由子ちゃんを守って幸せに出来るって信じてる。いつか、また必ず会おうよ!」
「晴臣くん……ありがとう。僕、いつか必ず恩返しするから……」
「そんなの良いんだよ、僕たちは親友だろ。真由子ちゃんも元気でね!」
「晴臣おにいちゃん、ありがとう!」
しばし別れを惜しんだ後、僕たちは晴臣くんの家を後にした。
まだ午後の開店前の様で中に入ろうとすると話し声が聞こえて来る。
伯父さんと伯母さんの会話だ。
会話を邪魔をするとまた怒られるだろうから、僕は少し聞き耳を立てて会話が終わるのを待つ事にした。
「でも本当に大丈夫なの? 誰かがあの二人を支援しているんじゃない?」
「中古のランドセルでも貰ったんだろ? 流石にあいつらが自分で手に入れた物を、捨てろとも言えないしな」
「ねえ、もし私達が由香さん達を殺した事がバレでもしたら……」
「奴らを轢き殺した中古車は埋めて、その上に物置小屋を建てたし、バレる訳ないだろ」
「それはそうだけど……私、怖くて……」
「まあ、あの二人は中学を卒業したら無一文で放り出すさ。奴らの遺産も俺達でたっぷり貰ったしな」
「そうね。大丈夫よね? 後で妹の方を何か理由を付けて折檻してやるわ! この私を不安にさせるなんて!」
「まあ程々にな」
僕は聞いてはいけない会話を聞いてしまった様だ……
身体の震えが止まらない。
僕はそっと慎重に音を立てない様にその場を離れた。
そしてすぐに物置小屋にいる妹に出掛ける準備をさせ、二人のランドセルに必要な物を詰めてお金も全部持ち、エコバックに薄い毛布も入れ、真由子の手を引いて足早に家を出た。
ーーーーー
僕と真由子は家を出て、とりあえず晴臣くんの家に向かった。
晴臣くんの家はお母さんが家にいない。
本当はいるみたいだけどずっと入院している様で、晴臣くんに部屋に入れてもらうと、いつもの様に家政婦さんがジュースとお菓子を出してくれた。
そして部屋の隅で真由子がお菓子に夢中になっている間に、晴臣くんに僕が聞いてしまった事を小声で全部話した。
「浩人くん、これからどうするの?」
「うん。こうなったら家にはもう帰らずに、お父さんの免許証にあった住所に行ってみようと思うんだ」
このまま伯父さんの家にいて、もし僕がこの事を知ってると思われたら、僕たちは殺さてしまうかも知れない。
もう真由子を連れて逃げるしか無いだろう。
「それが良いかも知れないね。僕もネットで調べて見たんだけど、〇〇県で浩人くんのお父さんの名前がヒットしたよ。その免許証の住所の県と同じだから間違いないと思う」
「調べてくれたんだ。晴臣くん、ありがとう」
「真由子ちゃんに聞こえない様にしているけど、真由子ちゃんには言わないの?」
「うん。妹にはまだ知って欲しくないんだ……知ると、きっと許せなくなってしまうと思うから」
「浩人くんの考えは分かったよ。でも、ちょっと待って。そこまでの地図をプリンターで印刷するよ」
「ありがとう」
僕はいつの間にか寝てしまっていた真由子を起こしてランドセルを背負わせる。
晴臣くんに印刷してもらった地図も持った。
「はい、これ」
「晴臣くん、これは……」
晴臣くんがお札を数枚、僕に渡してくれた。
「こんな事もあるかもと、お小遣いを貯めていつでも渡せる様にしていたんだ。僕にはこれくらいしか出来ないけど、浩人くんが真由子ちゃんを守って幸せに出来るって信じてる。いつか、また必ず会おうよ!」
「晴臣くん……ありがとう。僕、いつか必ず恩返しするから……」
「そんなの良いんだよ、僕たちは親友だろ。真由子ちゃんも元気でね!」
「晴臣おにいちゃん、ありがとう!」
しばし別れを惜しんだ後、僕たちは晴臣くんの家を後にした。
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