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善悪

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 俺の血で魔法陣を描く。
 まずは結界用のもの。
 魔力を流し込んで起動させると、『プロミスド・サンクチュアリ』を歌う。

 歌が結界に馴染んだら、転移用の魔法陣を描く。
 結界に魔力を流し込んで、起動する。
 一応、限られた者しか使えないよう、封印を施しておく。

「お疲れ様でした、ヴァニタス」

 馬車の中でスピルスが手当てをしてくれる。
 やっと1か所。
 ラスティル王国内全てを結界で覆うのだ。
 もちろん、これだけでは終わらない。
 これから各地を回って、結界を張り巡らさなければならない。



 近くで馬車が止まった。
 スピルスと二人、首を傾げる。
 何者かが御者に話しかけている。

「俺が行ってくる。ピルスくんとバニーちゃんはちょっと待ってて」

 ジェラルドが剣を携え出て行った。
 この、妙な呼び方をつけるクセがなければカッコいいのに。

 ジェラルドが外にいる間にスピルスは手当てを終える。
 スライム姿の柚希と黒猫姿のソルティードが外を窺っている。

 ジェラルドはしばらく御者と3人で何かを話していた。
 やがて、話しを切り上げてこちらに向かってくる。

「バニーちゃん。ピルスくん。ちょっといい?」

 ジェラルドが戻ってきた。
 そこには……。

「ノア・マードック!?」

 あの日アレクシスの傍らにいた金髪の男だった。

「こちらもアッシュフィールド公爵家の離れ屋敷に向かう。そちらもすぐに向かってくれ」

 ノア・マードックが外から声を掛けてきた。
 ジェラルドが頷く。
 …………アッシュフィールド公爵家の離れ屋敷?




「今日、アレクシス宰相がノア・マードックと共にアッシュフィールド公爵家の離れ屋敷を訪れたらしい」

 屋敷は静まり返っていたそうだ。
 現れたのはマチルダとマドリーン。
 明らかに何か戸惑っている。

「新たに雇った侍女が、料理に何かしらの薬を混ぜた。それをビオンくんとスライくんが口にした。今二人は寝込んでいるみたい」
「侍女は?」
「逃げた」
「結界は?」
「機能しているかどうかも含めて、バニーちゃんに確かめて欲しいって」
「アルビオンとシルヴェスターの具合は?」

 わからない……と、ジェラルドは首を横に振った。




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