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カイエン公爵
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「はっはっはっ! 久しいじゃないかミア! ペルセウスとドネルの小僧に国を追い出されたと聞いたときは流石に悪運尽きたかと思ったぞ?」
「父上! 笑い事ではありません!」
ミアの境遇を無骨な白髪の老人---カイエン公爵は陽気に笑い飛ばし、それをアイネが窘めていた。ミアはその物言いに気を悪くすることもなく、同じように豪快に笑っていた。
「私も流石に城の自室に兵が飛び込んできたときはもうダメかと思ったがな、どうにか逃げ切ることができたよ」
「うむうむ、そうかそうか。流石は儂の一番弟子。まあ飲め飲め」
そう言って、カイエン公爵はミアに酒を薦めていた。その様子を烈たちは大人しく見守っていた。
ミアの姿を見つけたカイエン公爵は、先ほどまで怒っていたのが嘘かのように上機嫌になり、烈たちも小屋に招き入れて、円を作って談笑を始めた。その間、アイネは甲斐甲斐しく酒や茶、つまみを用意し、ミアたちにふるまっていた。
「それで? ここへは何に用で来たんじゃ?」
カイエン公爵はにやりと笑って言った。まるで狙いをわかっていて、あえてミアを試すかのようであった。ミアは頭をポリポリと掻いていた。
「まあ、その前に紹介させてくれ。私の旅の仲間で、助力をしてくれるものたちだ。そこの小麦色の頭をしたのがラング。褐色の肌をしたのがルル。そしてそこのデカいのがレツ・タチバナだ」
「ほほう?」
カイエン公爵が値踏みするかのように烈たちを見まわした。烈たちはすべてを見透かされるようで気まずく身じろぎなどをしていた。
ひとしきり見終わったカイエン公爵がまたもにやりと笑った。
「どうやら、面白いものたちを供としているようだのう」
「まあな。特にそこのレツはバリ王国のキョウカ将軍を武術大会で打ち負かしたほどの腕前だぞ?」
ミアの説明にカイエン公爵が目を見開いた。
「ほほう? あの『三剣』のか。会ったことはないが相当な剛のものと聞く。なるほどのう......」
カイエンは舌なめずりをしそうな様子で烈のことを見た。烈はすべてを見透かされるようで、居心地悪く身じろぎしていた。
その様子にカイエン公爵はふっと笑った。それと同時に「うう~ん」と烈たちの後ろで身じろぎする者がいた。先ほどカイエン公爵に蹴り飛ばされた男であった。少々小太りだが、騎士のようである。完全に目を回していたのを、烈たちが運び込んだのであった。
「師匠、結局この男はなんなんだ?」
「ああ、そうだったそうだった。こやつ、お主の仲間の使いであろう? お主の陣営で共に戦ってほしいとかなんとか朝からずっと言っておったぞ?」
「私の? ああ、もしや......」
ミアには何か心当たりがあるようであった。
「儂が権力争いに興味ないことは知っておろう? さっさと連れて帰れ」
「はっはっはっ。連れて帰れと言われても私もどこに送ればいいのかわからん。自分で帰ってもらおう。それより師匠」
「なんだ? お主も儂に手伝えというのではあるまいな?」
「まあ、その思惑もなくはないのだがな。今は」
そう言って、ミアは烈のことを親指で差した。
「ちょっとレツのことで話があるんだ」
「ほ~う?」
カイエン公爵が興味深そうにした。烈はなんとなく猛獣が自分の食べ方を話し合っているような気がしてならなかった。
「父上! 笑い事ではありません!」
ミアの境遇を無骨な白髪の老人---カイエン公爵は陽気に笑い飛ばし、それをアイネが窘めていた。ミアはその物言いに気を悪くすることもなく、同じように豪快に笑っていた。
「私も流石に城の自室に兵が飛び込んできたときはもうダメかと思ったがな、どうにか逃げ切ることができたよ」
「うむうむ、そうかそうか。流石は儂の一番弟子。まあ飲め飲め」
そう言って、カイエン公爵はミアに酒を薦めていた。その様子を烈たちは大人しく見守っていた。
ミアの姿を見つけたカイエン公爵は、先ほどまで怒っていたのが嘘かのように上機嫌になり、烈たちも小屋に招き入れて、円を作って談笑を始めた。その間、アイネは甲斐甲斐しく酒や茶、つまみを用意し、ミアたちにふるまっていた。
「それで? ここへは何に用で来たんじゃ?」
カイエン公爵はにやりと笑って言った。まるで狙いをわかっていて、あえてミアを試すかのようであった。ミアは頭をポリポリと掻いていた。
「まあ、その前に紹介させてくれ。私の旅の仲間で、助力をしてくれるものたちだ。そこの小麦色の頭をしたのがラング。褐色の肌をしたのがルル。そしてそこのデカいのがレツ・タチバナだ」
「ほほう?」
カイエン公爵が値踏みするかのように烈たちを見まわした。烈たちはすべてを見透かされるようで気まずく身じろぎなどをしていた。
ひとしきり見終わったカイエン公爵がまたもにやりと笑った。
「どうやら、面白いものたちを供としているようだのう」
「まあな。特にそこのレツはバリ王国のキョウカ将軍を武術大会で打ち負かしたほどの腕前だぞ?」
ミアの説明にカイエン公爵が目を見開いた。
「ほほう? あの『三剣』のか。会ったことはないが相当な剛のものと聞く。なるほどのう......」
カイエンは舌なめずりをしそうな様子で烈のことを見た。烈はすべてを見透かされるようで、居心地悪く身じろぎしていた。
その様子にカイエン公爵はふっと笑った。それと同時に「うう~ん」と烈たちの後ろで身じろぎする者がいた。先ほどカイエン公爵に蹴り飛ばされた男であった。少々小太りだが、騎士のようである。完全に目を回していたのを、烈たちが運び込んだのであった。
「師匠、結局この男はなんなんだ?」
「ああ、そうだったそうだった。こやつ、お主の仲間の使いであろう? お主の陣営で共に戦ってほしいとかなんとか朝からずっと言っておったぞ?」
「私の? ああ、もしや......」
ミアには何か心当たりがあるようであった。
「儂が権力争いに興味ないことは知っておろう? さっさと連れて帰れ」
「はっはっはっ。連れて帰れと言われても私もどこに送ればいいのかわからん。自分で帰ってもらおう。それより師匠」
「なんだ? お主も儂に手伝えというのではあるまいな?」
「まあ、その思惑もなくはないのだがな。今は」
そう言って、ミアは烈のことを親指で差した。
「ちょっとレツのことで話があるんだ」
「ほ~う?」
カイエン公爵が興味深そうにした。烈はなんとなく猛獣が自分の食べ方を話し合っているような気がしてならなかった。
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