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「それで? こっからどうするんだい?」
ラングが宿の朝飯を頬張りながら、目の前で黙々と栄養補給に勤しむミアと烈に聞いた。二人とも人一倍体が大きいためか、食べ上がった皿が積み上がり始めている。
(よく似てんな......この二人......)
ラングは目の前の光景に胸焼けしながら目の前の光景を見ていた。口の周りを丁寧にナプキンで拭いて、ミアがラングの方を見る。
「ドイエベルンに行こうと思っている?」
「へぇ?」
ラングの目が鋭くなった。
「なんでまた?」
「なんで?」
「あそこは今内戦の真っ最中だ。前国王が亡くなったから、後釜をめぐってな。わざわざそんなところに行くのも変だなと思ってさ」
「戦士が戦場を求めるのはそんなにおかしいことか?」
「わざわざそんな危険を犯す必要もないだろう? 傭兵でもあるまいし」
「ちょっといいか?」
2匹の獣が肚の探り合いをしている中に、烈が割って入る。
「戦士と傭兵は違うのか?」
烈の質問にミアが答えた。
「傭兵は戦場を稼ぎ場とするものたちだ。基本的には戦場ならなんでもござれの連中だな。大体が傭兵団に所属している。戦士は戦うものだが、軍や領主に雇われて、必要な業務をする。個人でいるものも多い」
「ミアは戦士なんだな? なのにどこかに雇われていないのか?」
「ああ、別に戦場が好きなわけではないしな。今は好きに暮らさせてもらうさ。金に困ればまたどこかの領主の下で働いて、稼いでどこかへ行く」
「ふーん、自由なんだな」
「ああ、そうさ」
二人のやり取りを聞いて、ラングが不思議そうに聞く。
「昨日も少し聞いたが、レツは本当に何も知らないんだな。確か記憶喪失だったか?」
「ああ、覚えているのは自分の名前と剣の使い方くらいだ。気づいたら変な遺跡の中で寝てたんだ」
烈はラングにそういう風に説明していた。もちろん過去のことはすべて覚えている。自分の国も、暮らしも、家族も、そして罪も.......
「大変だねえ。それでミアについていっているのかい?」
「ああ、飯の恩義もあるしな」
「私は命の恩がある。お互い様さ」
「ほーん、なるほどね......だが、二人の腕ならわざわざ危ない橋を渡らなくても、どこかの領主付になればいいじゃないか?」
「それは、お前もだろう?」
「......」
一瞬の沈黙が訪れる。先に音を上げたのはラングだった。
「わかった、わかった。俺が悪かったよ。ここにいる奴らは全員腹まで真っ黒ということでいいか?」
「そういうことだ。下手な駆け引きなんぞやめるんだな」
「OK、ボス。ところで、話は変わるが、あんたら戦士だっていうなら、ちょっと道中、マルサの街に寄らないかい?」
「寄らないも何も、道を進んだら必然的に通らざるをえないだろう? そこで何か用事でもあるのか?」
「いや、実はな? マルサの街で武術大会があるらしいだわ」
「ほう?」
ミアは武術大会と聞き、俄然前のめりになった。
「強い奴が出るのか?」
「まあ、その辺はぼちぼちってところかな?」
「ぼちぼち?」
「ああ、バリ王国の達人級はほぼ全員、第一線に配置されているからな。わざわざ国境から少し下がったマルサの街に来る奴はいないよ」
「なんだ、つまらん」
「そういうなって。それでも歴史ある大会だ。それなりの武芸者や傭兵、戦士が集まるぞ?」
「ふーむ......」
「それに一番の目的はそこじゃない」
「というと?」
「賞金さ。優勝者には100ゴルド出るんだ」
「ほーう?」
「またちょっといいか?」
烈が手を挙げる。
「ミア、100ゴルドというのはどれくらいなんだ?」
「そうさな。庶民なら一生性格に困らないくらいかな?」
「なるほどな。それなら出てもいいんじゃないか?」
「かもしれんが......あまり大っぴらに目立つのも好きではないんだよなあ」
「なら、俺から提案があるんだが」
ラングがにやりと笑った。
「レツが大会にでてみたらどうだ?」
「何!? 俺が?」
「ああ、この前の親分との戦いを見てたが、レツの剣は相当なものだ。今回の大会なら難なく優勝できるんじゃないか?」
「知らんよそんなこと。俺もあまり目立つのは......」
「だが、いつまでもただ飯くらいというわけにはいかないだろう?」
「うっ......」
烈は言葉に詰まった。確かにいつまでもミアに奢られているわけにもいかない。自分の食い扶持は自分で稼がなければ......。
「私は気にしないぞ?」
「いや、ラング言う通りだ......ラング、その大会は誰でも出場できるのか?」
「ああ、出自関係なくな」
「わかった。エントリーしよう」
「OK!」
親指を立てるラングと、困ったように笑う烈を、ミアは何ともうかがい知れない目で、見ていた。
ラングが宿の朝飯を頬張りながら、目の前で黙々と栄養補給に勤しむミアと烈に聞いた。二人とも人一倍体が大きいためか、食べ上がった皿が積み上がり始めている。
(よく似てんな......この二人......)
ラングは目の前の光景に胸焼けしながら目の前の光景を見ていた。口の周りを丁寧にナプキンで拭いて、ミアがラングの方を見る。
「ドイエベルンに行こうと思っている?」
「へぇ?」
ラングの目が鋭くなった。
「なんでまた?」
「なんで?」
「あそこは今内戦の真っ最中だ。前国王が亡くなったから、後釜をめぐってな。わざわざそんなところに行くのも変だなと思ってさ」
「戦士が戦場を求めるのはそんなにおかしいことか?」
「わざわざそんな危険を犯す必要もないだろう? 傭兵でもあるまいし」
「ちょっといいか?」
2匹の獣が肚の探り合いをしている中に、烈が割って入る。
「戦士と傭兵は違うのか?」
烈の質問にミアが答えた。
「傭兵は戦場を稼ぎ場とするものたちだ。基本的には戦場ならなんでもござれの連中だな。大体が傭兵団に所属している。戦士は戦うものだが、軍や領主に雇われて、必要な業務をする。個人でいるものも多い」
「ミアは戦士なんだな? なのにどこかに雇われていないのか?」
「ああ、別に戦場が好きなわけではないしな。今は好きに暮らさせてもらうさ。金に困ればまたどこかの領主の下で働いて、稼いでどこかへ行く」
「ふーん、自由なんだな」
「ああ、そうさ」
二人のやり取りを聞いて、ラングが不思議そうに聞く。
「昨日も少し聞いたが、レツは本当に何も知らないんだな。確か記憶喪失だったか?」
「ああ、覚えているのは自分の名前と剣の使い方くらいだ。気づいたら変な遺跡の中で寝てたんだ」
烈はラングにそういう風に説明していた。もちろん過去のことはすべて覚えている。自分の国も、暮らしも、家族も、そして罪も.......
「大変だねえ。それでミアについていっているのかい?」
「ああ、飯の恩義もあるしな」
「私は命の恩がある。お互い様さ」
「ほーん、なるほどね......だが、二人の腕ならわざわざ危ない橋を渡らなくても、どこかの領主付になればいいじゃないか?」
「それは、お前もだろう?」
「......」
一瞬の沈黙が訪れる。先に音を上げたのはラングだった。
「わかった、わかった。俺が悪かったよ。ここにいる奴らは全員腹まで真っ黒ということでいいか?」
「そういうことだ。下手な駆け引きなんぞやめるんだな」
「OK、ボス。ところで、話は変わるが、あんたら戦士だっていうなら、ちょっと道中、マルサの街に寄らないかい?」
「寄らないも何も、道を進んだら必然的に通らざるをえないだろう? そこで何か用事でもあるのか?」
「いや、実はな? マルサの街で武術大会があるらしいだわ」
「ほう?」
ミアは武術大会と聞き、俄然前のめりになった。
「強い奴が出るのか?」
「まあ、その辺はぼちぼちってところかな?」
「ぼちぼち?」
「ああ、バリ王国の達人級はほぼ全員、第一線に配置されているからな。わざわざ国境から少し下がったマルサの街に来る奴はいないよ」
「なんだ、つまらん」
「そういうなって。それでも歴史ある大会だ。それなりの武芸者や傭兵、戦士が集まるぞ?」
「ふーむ......」
「それに一番の目的はそこじゃない」
「というと?」
「賞金さ。優勝者には100ゴルド出るんだ」
「ほーう?」
「またちょっといいか?」
烈が手を挙げる。
「ミア、100ゴルドというのはどれくらいなんだ?」
「そうさな。庶民なら一生性格に困らないくらいかな?」
「なるほどな。それなら出てもいいんじゃないか?」
「かもしれんが......あまり大っぴらに目立つのも好きではないんだよなあ」
「なら、俺から提案があるんだが」
ラングがにやりと笑った。
「レツが大会にでてみたらどうだ?」
「何!? 俺が?」
「ああ、この前の親分との戦いを見てたが、レツの剣は相当なものだ。今回の大会なら難なく優勝できるんじゃないか?」
「知らんよそんなこと。俺もあまり目立つのは......」
「だが、いつまでもただ飯くらいというわけにはいかないだろう?」
「うっ......」
烈は言葉に詰まった。確かにいつまでもミアに奢られているわけにもいかない。自分の食い扶持は自分で稼がなければ......。
「私は気にしないぞ?」
「いや、ラング言う通りだ......ラング、その大会は誰でも出場できるのか?」
「ああ、出自関係なくな」
「わかった。エントリーしよう」
「OK!」
親指を立てるラングと、困ったように笑う烈を、ミアは何ともうかがい知れない目で、見ていた。
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