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番外編ですよ。
10: 賢弟は溝鼠と昼食を。
しおりを挟むコンコン……「失礼します、坊っちゃん。今日のお昼は皆さんいらっしゃらないので、後でサンドイッチをお部屋にお持ちしますね。」
ノックがあって、こっちが返事をする前にメイドが入ってきて、そう伝えてくれたので、僕は揉んでたこめかみから手を離して礼を言う。
「そうなんだ。楽しみにしてるよ、ありがとう。」
そういって、もう、メイドは退室するもんだと思って横を向いた途端、
「ちゆぅ。」
メ イ ド が 奇 声 を 発 し た 。
驚いて見れば、チュウと言うか、コンとかニャアみたいなポーズを取っていた。
「チュウ……あ、鼠…ヘンリー兄さんか……。やめてよ、心臓がまだバクバクしてるよ…。」
「すみません。このポーズでこの掛け声で、と厳命されまして……。」
淡々とそう言い淡々とこなすメイドに、隠密なお仕事って大変だなぁと思いながら、話を聞けば、なんの事はない、もうすぐ行くから一緒にお昼を食べようね♡って事だった。
そんなランチのお誘い一つの為に人の心臓を跳び跳ねさせないでほしい。
了承の旨を伝えてメイドには下がって貰い、念の為にフェリたんの手紙はしっかり胸ポケットしまってから、僕はヘンリー兄さんを待つことにした。
ヘンリー兄さんは、ムンストーンの隠密部門を担当している家の跡継ぎで、もう、最近は殆んど若頭みたいな位置に居る。
だから、ヘンリー兄さんに手紙を見せれば直ぐ判るかもしれない。
でも、フェリたんはヘンリー兄さんに知られたくないかも知れないからね…。
万が一にも手紙を取られないようにしなきゃ…。
ーーーーーーーー
ーーーーー
ーー
「やぁ、マイリトルブラザー♡こーんにーちわ♪」
暗いような明るいような、粘着質な口調と共に部屋に入ってきたのは、再従兄弟のヘンリー・ムーンダスト子爵嫡男、フェリたんが溝鼠と呼ぶヘンリー兄さんだ。
青灰色の生気のない瞳に濃い隈、鉄灰色の艶のないうねうね髪、身長はそこそこ高く、スタイルも悪くないものの、何処か卑屈な雰囲気を漂わす陰湿ネクラ野郎(フェリたん談)。
「こんにちは、ヘンリー兄さん。」
「ハロー、久しぶり♪元気だったぁ?……って、機嫌悪ぅ!めっちゃ機嫌悪ぅっ!」
はぁ、本当にこの、ニチャァっとした喋り方何とかなんないのかな。
僕は、溜め息を吐きながらソファに座り、メイドが用意してくれてたサンドイッチを齧った。
「あのメイド、ヘンリー兄さんの手の者だったんですね。」
他に何人居るんだろう、一時期はフェリたんが悉く排除してたのに、そう思って聞けば、なんでもないことの様に返される。
「うん、他にも何人か居るよぉ。なんたって、子猫ちゃぁんからお許しが出ちゃったからねぇ?
ああ、それにしても、18歳って、すぐ終わっちゃうんだよぉ。キャロの一番輝く年だよぉ?まぁ、キャロは毎日輝きを更新する奇跡の人だから、幾つでも最高だけど、それでも、本人にとってはやっぱり、十代って大事でしょ??そんな18歳のキャロをさ、こんなに毎日見守って、エスコートして、お喋りして過ごせるなんて思ってもみなかったよ……。俺ぇ、幸せだよねぇ…♡」
「ちょっとよくわからない。」
うっとり紅茶を飲みながら言われた言葉に思わず本音が洩れる。何だろう、言ってることは難しくない気がするけど、彼の口から語られるとちょっとよくわからなくなる。
「取り敢えず、屋敷にヘンリー兄さんの手の者が居るのも、ヘンリー兄さんがキャロ姉様と遊んだりするのも、フェリたん公認って事?」
「そうだよぉ♡後、キャロが最高に可愛いって事実が抜けてるよぉ?」
「あ、うん。そうですね。」
僕はキュウリのサンドイッチ美味しいなぁ、なんて考えながら適当に相槌を打った。
うん。サンドイッチ最高。
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