上 下
322 / 354
番外編ですよ。

VD 地味令嬢と友チョコと逆チョコと本命チョコと。

しおりを挟む


そんな感じでお菓子を作ったりイチャイチャしたりお菓子を食べたりイチャイチャしたりな数日を過ごし、とうとうバレンタイン当日になった。

「出来たわ、ムンストーン。こんな感じで良いかしら?」

少しおっとりした穏やかな声音で、カメリア・サンストーンが声をかけてくる。
手元には、バタークリームがバラの花弁の様になったカップケーキが幾つか、アラザンの朝露に濡れて佇んでいた。

「完璧♪」

「此方も出来ましたよ。」

私が完璧とサンストーンに言えば、背後のテーブルからデクスターが優しい声で言う。

此処はアレックスが用意してくれた学園近くの商家の庭園。
伝手でちょっとお庭をお借りしてダブルデート茶会を準備中だ。
認識阻害やらなんやかやと防風、温熱などをかけまくり、それはもう麗らかな庭園茶会となっている。

最初はサンストーンがデクスターに菓子を贈りたいってのを手伝う話だったのに、いつの間にかダブルデート茶会である。

まぁ、楽しいから良しとしよう。

私がケーキスタンドにバラのカップケーキを盛り付けてテーブルに運べば、アレックスとデクスターも綺麗なアイシングクッキーを盛り付けた皿をテーブルに並べてくれる。

一口サイズのクッキーはそれぞれ、"ラブ♡フェリシア"、"ラブ♡カメリア"となっていて、デクスターの字の方が少し右肩上がりのクセを感じた。

そう、このクッキー、なんと、アレックスとデクスターが粉を量って混ぜて焼いて、出来上がったクッキーにアイシングで二人が一個一個書いてくれたのだ。対する薔薇のカップケーキは私とサンストーンの手作りで…。

アレックスが入れてくれたお茶で四人で和やかにお茶を楽しむ。

デクスターとサンストーンがモジモジしながらも関係を深めていく様を眺めながら、私はアレックスお手製クッキーを齧った。

"LOVE"だなんて、デクスターに合わせて書いたとしても、何だか嬉しくて、食べるのが少し躊躇われた。

齧った♡が口の中で広がっていく。私のレシピなのに、何だかこんなに美味しいクッキーは初めて食べる。サクサクしてて、ほろ苦くて、とても甘い。美味しい。

明後日からテストがあり、終われば直ぐに結果発表になり、卒業パーティになる。

私はどうなるだろう。……サンストーンは?

「フェロー?…俺のお姫様、お茶をもう一杯どうだ?」

アレックスの低くて甘い声に、我に返って微笑む。

「お願いします、レックス様♪」

ヤメヤメ!明日の事は明日考える!今はこのデートを楽しもう♪

そう考えて、お茶を淹れてくれたアレックスの唇に、身を乗り出してキスすれば、サンストーンが真っ赤になって庭園の花を見に行ってしまった。

ごめん、ちょっと刺激的過ぎたかな?

アレックスの唇はバタークリームで潤い、滑らかで、少しだけ甘いミルクの香りがした。
キスが終わってお茶を飲む頃には、お茶はすっかりぬるくなっていたけれど、渇いた咽には丁度よく、私達はごくごくと勢い良く飲み干した。


その日の夜、夜食のティータイムで満を持してチョコケーキを出せば、流石にアレックスは苦笑いした。

「こんなに菓子を食べたのは人生で初めてだ。鼻血が出そうってこういう事なんだな…。」

「ちゃんと手袋とハンカチのセットもありますよ!アレックスの名前と護符タリスマンの刺繍入りです♪」

お菓子ばっかりで飽きさせちゃったかと思って慌てて言えば、クスリと笑ってアレックスが私を抱き締める。

「ロンドミオに感謝だな。お陰で、フェローのプレゼント攻撃で骨まで溶けそうな甘い経験が出来てるんだから…。
全く……、一体いつそのケーキを作ったんだ?忙しかったろうに……。」

アレックスの言葉に、思わずサプライズ成功♪とニンマリしてしまった。

「ありがとう、フェロー。嬉しいよ。」

そう、低く甘く耳許で囁かれて、思わず赤面する。

「多いかなって思ったんですけど、やっぱり一個位は、私だけがアレックスの為だけに作ったお菓子も食べて貰いたかったんです……。」

15センチホールのビターなチョコケーキ。バターたっぷりのしっとり生地にはチョコとベリーのペーストを混ぜ込んで、外側はたっぷりの生クリームで作った薔薇で覆われている。一番外側はアメジスト色で段々アクアマリンにグラデーションしていく。

え?色が派手すぎる??聞こえないなぁ。ワタクシ、前世からケーキは真っ青って決めてるんです♪

アレックスが嬉しそうにケーキを受け取ってくれる。

「嬉しいな……。
なら、これは俺だけで大事に食べさせて貰っても?」

アレックスの言葉に喜んで頷けば、私を見つめるアメジストの瞳がじゅわりと蕩けた。

結局、青薔薇のケーキは薄く切った一切れだけを食べ、残りはマジックボックスに丁寧に仕舞われた。
少しずつ大事に食べるんだそうだ。保存の効くマジックボックスは、本当に便利だよね…。

アレックスの要望で、薔薇のケーキを一切れ全部"はい、あーん♡"で食べさせてあげて、青くなった唇に何度もキスをして、私の舌まで青くなる位舌を絡めて、私達は眠りについた。



どうやら、手作りのチョコ菓子には、私達を健全にする効果があるみたいだ。











ーーーーーーーーーーーーーー

わーーー!すみません!
バレンタイン中に終われなさそうΣ( ̄ロ ̄lll)
後書き少しだけ続きます!







しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...