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時は来た!断罪の卒業記念パーティー!
322: ヤンキーは企て、地味令嬢を狩り、そしてとうとう……。
しおりを挟む一度覚悟を決めてしまえば、後は簡単だった。
先ずは調査、それから計画だ。
俺はすぐに取りかかった。
名前、選択してる授業、日々の行動。
調べれば調べる程、まるで何かに見つからないように身を潜めている様な過ごし方に親近感が湧き、別館での奔放な過ごし方を観察するのが楽しみになった。
彼女、ムンストーン伯爵家の次女フェリシアはまるでガツガツ音がするような勢いで官能小説を読む。貪り読む。
そして、官能小説は結構えげつないものがお好み。
自分なりに読んだ作品に優劣をつけ、勝手に官能小説の棚の一番上におすすめランキングを作っている、中々の悪戯好きだ。
頭の中では性に奔放な、恋やら色事に夢見る乙女。
どうやら婚約者も想い人もいないようなので、そんなフェリシアには、体から俺に墜ちて貰うことにした。
彼女の大好きな官能小説のように。
渡り廊下付近に彼女以外近付かないように根回しし、空き教室を1つ買収した。
中のガラクタはそのまま端に寄せて、大きな砂時計や寝椅子等を設置していく。
歩くスピード、癖を計算に入れて、どのタイミングでどう出るかを測る。
そうして、全ての準備が整ったのは、第二学年が始まって2ヶ月が経った頃だった。
こんなナリだから出会いもねぇ、事件もねぇ、
モブ男子ですら目も合わねぇ。おら、とっても暇だぁ♪
「安心しろ、フェリシア。直ぐに暇じゃなくなるさ。俺と沢山楽しもう♪」
読んだ本をお気に入りランキングの4冊目に差し込みながら、珍妙な歌を口ずさむ彼女を上から眺め、俺は独り言ちた。
そろそろ夕食だ、と満足げに棚を一瞥すると、食堂へと向かう後ろ姿を見送り、手元の資料を最終確認する。
決行日は明日。
俺と彼女の退屈な学園生活は一変するだろう。
さぁ、来いフェリシア。
準備は万端だ、絶対に逃がさない。捕まえたら沢山可愛がってあげよう。
だから、早く狩られにおいで。
ーーーーーーー
ーーーー
ーー
「ん……。」
ふ、と目が醒める。
視界に広がる白金髪の巻き毛に、心が満たされる。
そっと、可愛い性悪猫を起こさない様にベッドから抜け出し、軽く伸びをする。
俺の愛しの婚約者殿は、ピクリとも動かずに眠っている。
少し、昨夜は自制が効かなかったからな…。いつもより疲れさせたかもしれない。
昨日は別人に見えるほど濃かった目の周りの黒い化粧が、今は殆んど剥げて、頬に快楽の涙による幾つもの黒い筋を描き、口紅はほぼ剥げている。
その様に征服欲が酷く満足し、尚且つ、このまま寝込みを襲って再び気絶するまで啼かせてやりたくなるが、ぐっと堪えて柔らかい巻き毛にキスを落とす。
足許に落ちている奇抜にして絢爛豪華なドレスを拾い上げれば、外側は黒が中心だが裏地やレースの根元など、見えない所は俺の色をふんだんに使っていて……。
嬉しくなると同時に、やっと名実共に彼女を手に入れられた、という歓喜がじわじわとやってくる。
婚約したんだ。
やっと、認識阻害など掛けずに堂々とフェローと過ごせる。
それに、どうやら、彼女の方もひっつめ色眼鏡ではない姿で過ごせる様なのだ……。これ程喜ばしいことがあるだろうか。
軽くドレスをクリンナップし、ハンガーに掛けて壁に吊るしながら、ついついニヤついてしまう。
フェローが眠っていなきゃ鼻唄でも唄ってしまいそうだ。
「それにしても、懐かしい夢を見たな。」
防音魔法を掛けた中、シャワーを浴びながら呟く。
フェローと初めて出会い、この空き教室に連れ込む算段をしていた頃の夢だった。
あの頃思い描いていたより、フェローはもっとずっと可愛く、淫らで、性悪で、予想外で、破天荒だった。
そして俺は、思い描いていたより惚れて、骨抜きされてしまった気がするな……。
そんな事を考えて1人笑う。
シャワーを浴び終え、クリンナップで水気を飛ばす。
そろそろ、朝食を準備しようか。
着替えた後、マジックボックスからパンを出してトーストの準備をしつつ湯を沸かす。
フェローが疲れてるなら、エスプレッソと軽くつまむ程度にしようか。
気配的にそろそろ起きそうだったのでトーストを焼き、エスプレッソを入れれば、もそり、と布団が持ち上がる音がする。
ああ、愛しのお姫様がお目覚めだ。
俺はエスプレッソとトーストをトレイにのせてテーブルに運び、ぼうっとしてるフェローに声を掛けた。
「おはよう、フェロー…。愛しい俺の婚約者殿♡」
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