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豊穣祝祭期間

243: 祭だ祭だ地味令嬢、ヤンキーは喧嘩に喜び指を食われて悦ぶ。

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まずは振る舞い芋。
領民達が綺麗に並び、うちの神父が領民名簿と照らし合わせて、
チェックしながら札を渡していく。

領民には1人1個ずつ揚げ芋を振る舞うので、ズルしたり、漏れが無いように、名簿と照らし合わせて行く。

その後は1個銅貨10枚だ。
銅貨の真ん中の穴に紐を通して、10枚一纏めにしてあるモノが流通していて、数えて時間を食ったりもしないだろうということでこの価格設定になった。

まずは皆大人しく並んでいる。揚げ芋を食べたことがない者が大半だからだろう。
何組か受け取って、美味しい美味しいと食べだした辺りから列が乱れやすくなった。

「別にまず最初に芋を食べなければいけない訳ではない。
 他の屋台も良かったら見てくれ。
 あと、名簿のチェックに時間が掛かってるんだ、
 金払って先に食べることは可能だ。祭は10日続くんだ、
 その間に振る舞いの分を頼めばいい。ちゃんとチェックしてる
 から、今貰わなくとも権利は消えない。
 安心して祭を楽しんでくれ。」

そう言ったら、最後尾の方から列がほどけ、各々気になる屋台に駈けていった。

そこからはもう、何も言わずとも祭は賑やかに進み、
大人ブースに雪崩れ込んだ領民達には、すかさず民間の酒やソーセージ等を焼いている露店が声をかけ、酒を飲み、芋を食べ、あっという間にご機嫌になった。

「おい、この玉子せんべいとやら、旨いぞ!食ったか!?」

「この上の白いドロドロに芋をつけて食ってみろよ!うめえ!」

「「ママ、ぉおいちーー!」」「ほんと、お芋おいちーねぇ」

「豊穣祭で堂々と酒を出す屋台が出るの初めてじゃないか?」

どやどやと騒がしくなってきた。
早速、喧嘩が始まり、逞しい大工見習いにステージに引き摺られる数人の男。



数人!?

慌てて2度見するも、忌々しげに全員金を払い、リングに上がって団子になって殴り合い始めた。

そーいや、人数制限はしてなかったな。

しまったなぁ、と思うものの、横のアレックスも、おーー!とか嬉しそうな声あげて、手を叩いて楽しそうに見てるし、
領民も大盛り上がりなので、まぁ、いーかな。

一応、めちゃくちゃ酷い怪我になる前には止める様に言ってるし、
万が一のポーションも準備してるし、
腐っても神父も沢山居るし、大丈夫だろ。

リングとは広場の反対に位置するステージは通称カラオケステージ、金払って、ステージで歌えます。雇った吟遊詩人が、軽い伴奏とかしてくれます。
肉屋の主人が気持ちよさそーにがなってます。

通りすがりの商団や旅人が、匂いにつられて揚げ芋や玉子せんべい、唐揚げを欲し、馬や荷物の見張り番、お使いなどで子供達が小遣い稼ぎをしてる。

空いてるスペースで、続々と派手色大道芸人や吟遊詩人、露店商が店を開く。


中々大盛況じゃない?

なーんて自画自賛して、騒ぎを眺めながらポテトを摘まむ…あれ?摘ま…摘ま……あ、あった、摘まむ。

クスッとアレックスの笑う声がしたのを聞きながらポテトを口に運び、唇で挟んだらプニっとした。

ん?!

  …………アレックスの中指だった。


ケラケラ笑うアレックスが何だかムカついて、ちょっとだけ力を入れて噛んでやった。



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