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夏休み領地篇

97: 地味令嬢は夏の思い出に、豊かな田舎の宴を演出する。

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お姉がプクッと一瞬頬を膨らませてから諦めのため息をつく。

お姉は謎の紳士レオンハルト様やと思っとるからな…。

まぁ、
あの文具店に吸い込まれたのはレオンハルト様らしいから、近いっちゃ近い。

辺境伯領に向かう途中、レオンハルト様がちょっと覗いてみたいと吸い込まれて、
中々帰ってこないから、アレックスと王子が迎えに行き、そこであのカードを見付けたアレックスが私のカードだと気付いて購入。
涙目黒騎士も連れて撤収!って流れだったとか。

「そうですね、確かに今は時勢が少し……。
 でも、時勢が安定すれば、そちらの妹君なら、きっと素敵な出逢いがあるでしょう。
 周囲が焦らなくても、ね。」

アレックスの優しいフォローの言葉に、そうねぇ。と、お姉が和やかな雰囲気に戻る。

てか、私は第2王子が断罪イベントするまでは、って思ってるからだけど、
第3王子が"時勢がビミョー"発言にニッコリ頷くって何か怖いな。
え、何かあるの??

チラッとアーサーとお姉を見るが気にしてなさそー。

だよねー。
私らムンストーン家は中立ってか、王家の決定に従ってお金を出すお財布君だもんね☆

また和やかに話は代わり、
私とアレックスは曖昧に相槌をうちながら、お互いを盗み見てばかりいた。
膝もくっ付けれない距離で、靴先と靴先をくっ付け、キスを思い出させる様にそっと己の唇に触れる。


そうだった、と王子がこちらに笑顔を向けてくる。
明日王都に帰る馬車に私も乗せてくれるらしい。

やーったぜ!
アレックスいつの間にか話通しててくれたんだ。やさしー!

数日分の着替えと課題等、最小限の荷物で同行し、
他の荷物は後からゆっくり寮に届けて貰う事にする。

バーベキューの用意が整ったので移動し、
ちょっとしたガーデンパーティーなバーベキューを楽しむ。

使用人にも沢山魚と予算を渡しておいたので、端っこで交代でイカや魚を齧ってる庭師ケヴィンのこちらを睨む視線も何処か柔らかい。ホッとするわ。

ぷりぷりの下足や蛸足を存分に齧り、鮎の塩焼きにエビみたいな足が生えたヤツを頭からムシャる。

王子も黒騎士も、認識阻害で表情が読みにくい筈のアレックスも、驚きつつも喜んでくれているのが判る。

「こんな野趣溢れる食事は初めてです!楽しいですね!」

「はい、バイカル。凄く楽しいですね!」

王子とテリー君が、口の周りをソースと魚のコゲだらけにして楽しそうに笑い合う。

いつの間にか肉や酒を手土産に来た近くの親類達が歌い、踊る。
ダディはズブーギみたいな楽器を掻き鳴らし、マミーが手拍子をしながらニコニコしている。


アーサーの摂ってきた野草や山菜が、サラダ、グリル、香草焼きに使われ、
お姉の野苺がタルトやゼリー、魚のソースになる。
私の魚やイカタコがみるみる捌かれて串に刺されていく。

その様を、庭の端に作った簡易のキッチンで全て見せるスタイルなので、それも又楽しんで貰えてる様だ。

意外にも、テリー君が一番楽しんでいた。
このパーティーちょくちょく開催しているがテリー君は今まで参加したことがなかったらしい。



こうして、ムンストーン家流おもてなしは夜更けまで続き、



翌日、私は王子達と一緒に王都に向かった。



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