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夏休み領地篇
89: 地味令嬢とワンコ達の隠せない隠し事。
しおりを挟む和やか、というよりは賑やかというか、
騒がしい(主に兄妹が)お茶会が終わり、腹ごなしに少し庭を歩く。
と、前庭の方に行き着いてしまった。
いや、客人がこちらに誘導した感があるな。
「わぁ、これはまた……。」
黒騎士の嬉しそうな声に、庭師のケヴィンが手を止め私をめっっっっちゃ睨む。ゴメンて!!
「昨日、庭に鬼女が出て暴れたそうです。
何でも、鬼女の大切なものが盗まれたとか…。
でも、父と兄を筆頭に屋敷の者全員で掃討に当たったので今は安全ですわ。
ご安心下さい。」
「それはそれは……大変でしたね。プフッ失礼。フフッ」
黒騎士意外と笑い上戸だった。
何だか嬉しそうに、庭の爪痕を触ったり眺めたりしてる。
「でも、鬼女は大切なものを取り返せたみたいで良かったです。」
王子が笑って言う。何だ、詳細知ってるんだ。
まぁ、お姉、喋ってよし!って言ってたもんなぁ。
「そうですね。親切な方のお陰で。
…本当にありがとうございました。」
目を伏せて、誰にいうでもなくお礼を言えば、アレックスがふっと笑う気配がした。
「お恥ずかしいです。何があったか皆さんご存知なんですね…。」
アーサーがへんにゃりと苦笑いをして言う。
「そんな入手が難しい高価なものだとは思ってなかったのでしょう?
女性の物は何でもないような振りして目が飛び出る程希少だったりしますからね。
触らないのが吉ですよ。
……ま、今回で懲り懲りでしょうけど。
ははは。まぁ、暫くは噂されるでしょうが、
皆そう悪くは言ってないですよ。ハハハハ…。」
「フフフッ。謝っても許されない事があるとか、
誰にでも我慢の限界があると云う事を、
この程度の痛みで学べたのは、貴重だと思いますよ。
仲の良い兄妹って良いですねぇ。
黙って破滅を仕組まれたりする兄弟もいるって云うのに、
面と向かって教えてくれるんですから♪ね?」
「……俺は、そもそも実の妹とはいえ、乙女の秘密の花園に気軽に出入りするのは控えるべきだと思いますね。
妹君はもう立派なレディです。
婚約者や恋人以外には見せるべきではないモノもあるでしょうに。」
「レックスは厳しいな。ねぇ、そう思わない?レオンハルト。」
「俺は当然の事を言ってるだけですよ。
うっかり部屋着姿を見てしまった、とかも有るかもしれないでしょう?」
アレックスが危惧してるのは、私の下着姿や、部屋着の露出の高さだろうな……。
い、言えない。
あの部屋着でほぼ毎晩兄妹でお茶してるとか、何なら気にせず肩とか脚とか触られた事あるけど、アーサーガチ気にしてないからこっちも気にしてない、とか、こないだ下着姿の時に部屋に乗り込まれかけた、とか。
言えない…。
チラッと横見たら、アーサーもお姉も『言えない…。』って顔してた。
目深のローブと認識阻害で見えないアレックスの眉が、思いっきりしかめられたのが判った。
まっずー。
「あはは!凄いね!三つ子みたいだよ。
君達三人、本当に仲良いんだねー!」
三兄妹が揃ってそわそわしてるのを、王子と黒騎士が笑う。
「「「今不在なだけで、
ラインハルトも合わせて4人仲良いですよ?」」」
思わず3人声が揃う。
ふ、と、丁度やってきたテリーと王子が意外そうな顔をした気がした。
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