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夏休み領地篇
88: 地味令嬢とワンコ達のマカロン談義。
しおりを挟むま、世の中、パッと見派手なら大体誤魔化せるもんである。
おーいしー!
お客人方も特に違和感とか田舎臭さを感じてなさそうでホッとする。
というか、従兄弟のテリー君がめっちゃキラキラキョロキョロしてて可愛い。
「流石、本家のお菓子は違いますね!
僕、こんなキラキラしたお菓子初めてです!
美味しい!!」
「何か色んな色で凄いな。大丈夫だテリー、
俺も初めてだよ。美味しいようで良かった。
俺も安心して食えるよ。」
「アーサー!」
テリーに小声でぶっちゃけるアーサーにキャロが黙れと肘でつつく。
「あはは。ムンストーン家は皆さん仲良いですね。
あ、敬語は結構ですので気楽に話してくださいね。
テリーから聞いて、皆さんとお話するの楽しみにしてたんです。」
まだ緊張は抜けないものの、元々人懐こいワンコ兄姉、どんどん話に華が咲いていく。
「あ、このマカロン美味しいですね。」
そんな中、王子が苺のマカロンを齧って、ふ、と洩らす。
食べたこと無いのに王子に褒められるマカロン作るなんて料理長やるなぁ♪なんて思ってたら、
ポツリとキャロ姉が呟く。
「わぁ、じゃあ、これ、
ちゃんとマカロンなんですね♡」
「「「「えっ」」」」
私とアレックスと王子と黒騎士が声を揃えて驚く。
「やだな、お姉…。
マカロン食べたこと無いみたいな言い方じゃない。
……え?嘘ぉ。お茶会とかで出ないの?」
「実は……高位貴族の方のお茶会とかで出たこともあるんだけど、食べて、はしゃいじゃったりしちゃったら、初めて食べたことを笑われちゃうんじゃないかって思って…いつもマドレーヌとかチョコしか食べなかったの。
だからマカロンて、フェリの情報を元に料理長が首を捻りながら作ったこのマカロンしか食べたこと無いの。」
なんだそれ!そっちのがはずかしーやろ!
そんでもってそんなキャロ可愛ウィー!
「そーそー、俺もそー。こんな甘かったんだな。」
アーサーお前もか。
「僕もマカロン初めて食べました!」
テリー君はしゃーない。
果物乗ったタルトかケーキ至上主義だもの。
「えっ、このマカロン、マカロン食べたこと無い人が正確なレシピも見ずに作ったんですか!??」
黒騎士初発言。王子もアレックスも驚いてる。
「ふふふ、うちの料理長、頑張り屋さんでしょう?
………にしても、アーサー、お姉…。」
「やだ、フェリ。そんな、
捨てられた子犬を見るよーな目で見ないでよ。」
「そーだぞ!ちょっと傷つくだろ!大体、銅貨50枚するマカロンを何でそんな食べ馴れてる体なんだ?銅貨50枚だぞ??」
「ヤダヤダ、ちょっとフェリ。
あんたまさか、あのちっこい癖にめっちゃ高い
アレも食べた事あるんじゃないでしょうね?
えと、ええと。」
「……どれの事言いたいのかよく判らないけど、
カフェテリアのスイーツは入学一週間で全部制覇したよ。
てか、勘弁してよ!
うちは確かに田舎だけど、この広く豊かな領地と産業で結構な財を誇り、伯爵家の中でも1、2を争う筆頭貴族だよ?
豊かさじゃ、侯爵家にもひけを取らないんだよ?
領民に広げる為にも率先して色々試して行こうよ!
毎度毎度マドレーヌばっかり食べよって!」
「「マドレーヌばかにするなぁ!」」
結局、アレックスともっと何かしたかったのに、
客人そっちのけで兄妹でペチャクチャ喋ってばっかで自己嫌悪する。
だが、王子も黒騎士も、そしてアレックスも、
私達のやり取りが面白かったらしくてケラケラ笑っていた。まぁ、結果オーライかな。
テリー君は何だか誇らしそうだった。Why?
そろそろお茶は終わりそうだったので、誰にいうでもなく言う。
「お茶、お口に合ったようで良かったです。」
そっと、紅茶を飲むふりしてアレックスを見る。アレックスも、誰にいうでもなく、
「お茶もお菓子も、とても美味しかったです。」
そう言って、そっと指で唇を撫でるもんだから、危うく紅茶をぶくぶくしてしまうところだった。
赤い顔を誤魔化すように紅茶を呷り、キャロの楽しそうな話を聞く振りをした。
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