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夏休み領地篇

85: うとうと地味令嬢、落胆門番は帰路で影からブツを渡され疾走する。

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「えっ!?日焼け抜き手に入ったの!??」

うとうとしてたのがハッと現実に引き戻される。

グレーとダスティピンクを中心に纏められた室内。
お姉の部屋だ。

お姉が何かを抱えてこっちに駆け寄ってくる。

「フェリ!辺境伯領にお泊まりのどなたかがね、
 お困りみたいだからどうぞ使って下さいって、
 これ、下さったんだって!!
 誰だろう、スッゴい紳士!
 居るところには居るのねー!」

渡された包みを開けると、魔法クリーム2つと飲み薬1つ、
そして、ティファニーブルー地にゴールドの飾り枠が描かれたメッセージカードが添えられていた。

「あら?お嬢様…このカード…。」

「やだ!フェリのカードじゃない!
 紳士もあの店に入ったのね??アッハハハ!」

そう、このカードは私がデザインして文具店に作って貰っているカードだ。
本来、そういうのは私だけが使うのだが、私だけだとそんなに数使わないし、私はこの色の組み合わせが大好きなので、布教を兼ねて店頭で普通に売って貰っている。

この店主がクセ者で、乙女ちっくな花柄からマダム好みのブリブリの花柄まで、ひたすら女性向けの商品しか置いてない癖に、
街道沿いの商店街の目立つ場所に店を構え、店名とシンプルな万年筆のロゴで、如何にも紳士モノも置いてそうな外装でいたいけな男性陣を誘い込むのだ。

これがまた巧いもので、女性に関わる事全般苦手そうな、純朴、素朴、朴訥やら奥手と言った形容詞が似合いそう殿方が必ずと言って良い程引っ掛かる、殿方ホイホイなのだ。

そして、彼らは皆、店主が読書のふりしてニマニマと眺めているとも知らず、
顔を赤らめてうろうろし、途方にくれ、かといって何も買わずに出る雰囲気でもなく…と思った所にそっと置いてある、救世主の如くシンプルなティファニーブルーのメッセージカードを引っ掴んで購入し、店を出ていくのだ。

お陰で、あの店No.4の人気商品らしい。

「魔法薬みたいな高価なものを匿名でくれた上に、このカードを買ったなんて、本当にいい人なのね」

「最近ではこの辺の貴族や商家の方達に、このカードを持った男性は娘の結婚相手としてアタリだと言われてるそうですよ。」

お姉とエリーが楽しそうに笑っている。

でも、多分、彼はこのカードを見たことが有ったから買ったんだと思う。
私、何度かメモに使ってたから。

カードには相変わらずの優雅な文字で

『お困りの様ですので、是非お使いください。それではお休みなさい。よい夢を』

と書いてあった。

何だか恥ずかしくて、
今日はお休みメールが出来なかった。



折角白くなった肌を真っ赤に染めて、私はベッドに飛び込み無理矢理眠りに付いた。




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