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ボロボロ令嬢は這うしか出来ない

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思い出が、バキバキと音を立てて壊れていく。



「あーぁ、マリア嬢大分ボロボロだねぇ。
そろそろ魔力切れで疲れちゃったのかな?
最初は、やれるもんならやってみな!みたいな強気さと、
逃げ切ってやる!みたいな気迫に満ちてたのにね。」

泣いちゃってカワイソーと言いながら、シューレンを見るラインハルト。
そんなラインハルトを気にするでもなく、
そうですね。とだけ呟いてマリアを見つめるシューレンに、ラインハルトはため息と共に肩を竦め、もう一度、カワイソ と呟いた。

「そういえば、王子たちは?」

「とっくに帰りましたよ。」

ため息混じりにシューレンが答えると、
もったいないなー、こんなのお金払っても見れないのに。と言って、ラインハルトは視線をマリアへと戻した。

ヘンリーが追い付き、結い上げた髪を鷲掴み、痛みと共に髪がほどける。
後ろに引っ張られ、たまらず尻餅をつく。
そんなヘンリーと私の腕にトストスとパラライズ弾が刺さる。
ヘンリーがぐっと呻いて沈み、その向こうに肩までの黒髪をかき揚げて近づいてくる渋いおじ様が現れた。

「……リブレーのおじ様……」

「やぁ、マリアクリスティナ。卒業おめでとう。」

リブレー王国外交官にして、現王の甥。
第2王子の婚約者として出席した式典で知り合い、血の繋がりは無いものの、おじ様と慕い、会えばいつも笑顔で外国の小物等をプレゼントしてくれ、珍しいお話を沢山聞かせてくれた、ロドリゴ・フォン・リブレサイト公爵。
そんな彼が、いつも外国の小物をくれる様に、君にプレゼントがあるんだと囁いて、私にカチューシャ型のベールを着けた。

とても甘い熱を帯びた濃紫の瞳で見つめ、似合っていると囁くのに、私の唇は震え、見開いた瞳からはらはらと涙が零れ落ちる。

涙を拭おうと手が伸びてきたのに、はっとして逃げようと向けた背にトストスとパラライズ弾が刺さる。

リブレー王国の広大な保護森に沢山の幻獣が生息し、その調査や管理にパラライズ弾が良く使われているという話を聞いたのはいつだったか。

色んな話を聞かせてくれた思い出の笑顔と、
パラライズ弾を私に撃ち込むように指示した事実に心がぐちゃぐちゃになりながら、全ネイルを発動させパラライズを浄化する。

浄化しきれなかった麻痺の残る身体を引きずり這い進むと、銀竜革のブーツが不意に前を遮る。

見上げると、謎の銀髪が怒りを孕んだ眼で見下ろしていた。
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