上 下
1 / 11

卒業パーティーで婚約破棄宣言

しおりを挟む
「マリアクリスティナ・シルバーレーク伯爵令嬢!!今、この場で、貴様との婚約を破棄する!!」

騒然とするギャラリーに囲まれて、私、赤と白のぱっきりとしたコントラストのフリルドレスに身を包んだ白金髪紅眼のマリアクリスティナ・シルバーレークは愕然と赤毛の美青年を見つめた。

ティンバーレク王国第2王子クリスタ・イザル・ティンバーレク。

燃え盛る松明のように天へとうねり輝く見事な赤毛の青年は、美しい顔を怒りで歪ませ、鮮やかな碧緑の瞳で私を睨み付ける。

その横には、鮮やかなピンクとシャンパンゴールドのフリルをふんだんに使った愛らしいドレスに身を包んだ、ミュリアリー・ミューズリー男爵令嬢が、子鹿のように黒い瞳を潤ませて寄り添っている。

そっと、背後からそんな彼女に歩みより、カフェオレ色の髪を一房掬うのは、王子の側近候補、憎らしい銀髪碧眼片眼鏡の腹黒インテリ野郎マッケナ公爵子息。

王子の背後から威圧的にこちらを睨み付ける焦げ茶の短髪とライトグリーンの瞳の脳筋巨躯は王国騎士団長の息子ウォーハンマー伯爵令息。

王子の横で、ふわふわの金髪巻き毛を揺らし、ワクワクした紫の瞳でこちらを見ているリボンとフリルの塊の毒舌腹黒ショタは宰相の息子のジュディマ侯爵令息。
これからの展開が楽しみなのだろう。その場で1人ピョンピョンとマサイ族みたいに跳ねている。

王子は今も何か、私の罪状のようなものを語り断罪しているが、水の中に居るようにくぐもってよく聞こえない。
自分や周囲の息遣いや衣擦ればかり、
ハァハァ、さらさら、チャリチャリと鋭く耳に刺さる。
周囲が緊迫した面持ちで間合いを詰めてくるのが判る。

嗚呼、どうしてこうなってしまったのだろうか。




私が、暇潰しにインストールしてみた乙女ゲームの悪役令嬢に転生していると気付いたのは7歳のお見合い茶会の時だった。

そこから、何とか断罪を回避しようと足掻き続けてきたがゲームの強制力は恐ろしく、
ゲーム通りに王子と婚約し、学園に入学し、男爵令嬢を虐めてないのに虐めたとしか思えない状況に何度も陥り、
とうとう、この卒業パーティーで婚約破棄と断罪の憂き目となった。
只、足掻き続けた結果、
シナリオ以外のところがとんでもない程拗れたのが予想外だった。
ゲーム通りなら修道院送りのハズだが、果たして。
果たして、
普通に王子に惚れたフリでもして、嫉妬で男爵令嬢を虐めた方が良かったのではないか、と内心独り言ちて、鋭い視線を向けてくる周囲を見回す。

まるで逃げ場がないようにぐるりと囲まれている。

すがるように、王子を、ショタを、片眼鏡を、見る。

王子が口上を述べ終わり、満足気に男爵令嬢を抱き寄せる。
ショタは嬉しそうにピョンピョンし、
片眼鏡はおもむろに内ポケットから懐中時計を出し時間を確認し、
意地悪い笑みを浮かべてパチンと音を鳴らして時計の蓋を閉めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された公爵令嬢は監禁されました

oro
恋愛
「リリー・アークライト。すまないが私には他に愛する人が出来た。だから婚約破棄してくれ。」 本日、学園の会場で行われていたパーティを静止させた私の婚約者、ディオン国第2王子シーザー・コリンの言葉に、私は意識が遠のくのを感じたー。 婚約破棄された公爵令嬢が幼馴染に監禁されて溺愛されるお話です。

婚約破棄したいって言いだしたのは、あなたのほうでしょ?【完結】

小平ニコ
恋愛
父親同士が親友であるというだけで、相性が合わないゴードリックと婚約を結ばされたキャシール。何かにつけて女性を見下し、あまつさえ自分の目の前で他の女を口説いたゴードリックに対し、キャシールもついに愛想が尽きた。 しかしこの国では制度上、女性の方から婚約を破棄することはできない。そのためキャシールは、ゴードリックの方から婚約破棄を言いだすように、一計を案じるのだった……

お飾りの妃なんて可哀想だと思ったら

mios
恋愛
妃を亡くした国王には愛妾が一人いる。 新しく迎えた若い王妃は、そんな愛妾に見向きもしない。

聖女に選ばれた令嬢は我が儘だと言われて苦笑する

しゃーりん
恋愛
聖女がいる国で子爵令嬢として暮らすアイビー。 聖女が亡くなると治癒魔法を使える女性の中から女神が次の聖女を選ぶと言われている。 その聖女に選ばれてしまったアイビーは、慣例で王太子殿下の婚約者にされそうになった。 だが、相思相愛の婚約者がいる王太子殿下の正妃になるのは避けたい。王太子妃教育も受けたくない。 アイビーは思った。王都に居ればいいのであれば王族と結婚する必要はないのでは?と。 65年ぶりの新聖女なのに対応がグダグダで放置され気味だし。 ならばと思い、言いたいことを言うと新聖女は我が儘だと言われるお話です。  

余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~

藤森フクロウ
ファンタジー
 相良真一(サガラシンイチ)は社畜ブラックの企業戦士だった。  悪夢のような連勤を乗り越え、漸く帰れるとバスに乗り込んだらまさかの異世界転移。  そこには土下座する幼女女神がいた。 『ごめんなさあああい!!!』  最初っからギャン泣きクライマックス。  社畜が呼び出した国からサクッと逃げ出し、自由を求めて旅立ちます。  真一からシンに名前を改め、別の国に移り住みスローライフ……と思ったら馬鹿王子の世話をする羽目になったり、狩りや採取に精を出したり、馬鹿王子に暴言を吐いたり、冒険者ランクを上げたり、女神の愚痴を聞いたり、馬鹿王子を躾けたり、社会貢献したり……  そんなまったり異世界生活がはじまる――かも?    ブックマーク30000件突破ありがとうございます!!   第13回ファンタジー小説大賞にて、特別賞を頂き書籍化しております。  ♦お知らせ♦  余りモノ異世界人の自由生活、コミックス3巻が発売しました!  漫画は村松麻由先生が担当してくださっています。  よかったらお手に取っていただければ幸いです。    書籍のイラストは万冬しま先生が担当してくださっています。  7巻は6月17日に発送です。地域によって異なりますが、早ければ当日夕方、遅くても2~3日後に書店にお届けになるかと思います。  今回は夏休み帰郷編、ちょっとバトル入りです。  コミカライズの連載は毎月第二水曜に更新となります。  漫画は村松麻由先生が担当してくださいます。  ※基本予約投稿が多いです。  たまに失敗してトチ狂ったことになっています。  原稿作業中は、不規則になったり更新が遅れる可能性があります。  現在原稿作業と、私生活のいろいろで感想にはお返事しておりません。  

人形令嬢は暗紅の公爵に溺愛される

oro
恋愛
生まれた時から妹の代わりでしか無かった姉フィオラ。 家族から愛されずに育った少女は、舞台に立つ操り人形のように慎ましく美しい完璧な令嬢へと成長した。 全てを諦め、平穏な人生を歩むために。 妹の代わりに婚約させられた相手は冷淡で冷酷な「暗紅の白銀狼」と呼ばれる公爵様。 愛を知らない令嬢と公爵様のお話。

破滅は皆さんご一緒に?

しゃーりん
恋愛
帰宅途中、何者かに連れ去られたサラシュ。 そのことを知った婚約者ボーデンは夜会の最中に婚約破棄を言い渡す。 ボーデンのことは嫌いだが、婚約者として我慢をしてきた。 しかし、あまりの言い草に我慢することがアホらしくなった。 この場でボーデンの所業を暴露して周りも一緒に破滅してもらいましょう。 自分も破滅覚悟で静かにキレた令嬢のお話です。

王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。 これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。 しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。 それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。 事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。 妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。 故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。

処理中です...