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119: 三回目の自己申告と熱狂の伝播。

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「イテテ……畜生!よくもマリローズを!このイタチ!!」

「ギャウウーー!トカゲ野郎!イオンウーウァには手を出させないぞ!」

「クソが!お前を殴ってるんだ!!」

「ギャウ!守る守る守る!!」「えぃクソ!ムカつくムカつくムカつく!!ムカつkウギャッ!!」

「ラァトに手を出すなー!」「ムキーー!まぁたりゅーさまにお盆投げたわね!ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく!!」

何とかタンコブのショックから立ち直ったリュートが、マリローズと中庭を所狭しと駆け回ってお盆対決をしているイオンウーウァを睨み付ける。
だが、手を出すのはマリローズに止められた為、そのフラストレーションを手近なラートンにぶつけたのだが、興奮したラートンはイオンウーウァを守ると部分獣化で金色のマリモの様にふこふこ膨らんで立ちはだかる。
これが更にリュートを苛立たせる事になった。

ムカつくムカつくと叫ぶ長身痩躯のリュートとマリローズに、番に手を出させない!と互いに庇いあって息巻くぱつぱつ筋肉とむっちり脂肪で丸みを帯びたラートンとイオンウーウァ。
その似た者同士な姿は流石運命の番、と静かにレモンドは考えた。

そんなレモンドの横を流れ銀のお盆が凄い勢いで掠めていく。
眼下の中庭では、マリローズとイオンウーウァがキラキラと煌めく高速銀のお盆を雪合戦の様に投げ合っていた。

何故そんなに銀のお盆があるのか、というと、中庭の奥に設けた軽食の場に大量の銀のお盆と共に配置予定だった使用人達が、怒涛の迫力で降りてきたマリローズとイオンウーウァにパニックになり、お盆を置いて散り散りに逃げたからである。

若干数ではあるが、うっかり近くの茂みやベンチ、テーブルの下に逃げ込んだ者達が飛び交う銀のお盆に今更移動することも出来ず、怯え震えていた。

(テルと協力して、何とか彼らの避難誘導が出来ないものか……。)

疎まれていたとは言え、王族に近しい公爵家の生まれ。
レモンドは使用人達に思いを馳せたが、婚約者のラミテルは違う事を考えていたようだ。


「  獅子が来れば死ぬまで戦おう。

  虎が来れば戦う為に戦おう。 」


  「えっ。」

いきなりラーテルの歌をド低音で歌いだしたラミテルにレモンドはびくりと肩を跳ね上げて驚いた。

何故、とか、どうしたの、とか色々な問いが頭の中を駆け巡ったが、もうすっかりイタチの仲間入りを果たしていたレモンドの体は、レモンドの意識とは裏腹に足を踏み鳴らして拍子を取り、胸を拳で叩いて、拳を振り上げて、ラミテルと息ピッタリに振り付けをこなし、歌を口ずさんでいた。

 「  象が来るならば、憤怒の形で戦おう。

   ラーテルが来れば、我らは戦い、我らは滅ぼう。 」

 
フー! フー! フー! フー! フー! フー!

ラミテルとレモンドが力の限り歌うラーテルの歌に鼓舞されたバドワイザの子女達がいつの間にか集結し、フーフーと拳を突き上げて叫ぶ。

その熱狂はラートンとイオンウーウァを鼓舞し、他の獣人子女達にも伝播した。
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