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65: いきなり始まった何かの試練的なモノ。
しおりを挟む「ウーァ!!!待って!!……う"お"っ!??」
慌ててイオンウーウァを追い掛けたラートンの脇腹にドンッ!!という衝撃があり、ラートンが横に吹っ飛ぶ。途端に景色がガラリと代わり、ラートンは何処かの川岸から勢い良く水面に落ちる瞬間だった。
「ミ"ャ"ァ"ア"ア"ア"!??」
キンキンに冷たい水面に尻尾の先が触れ、ラートンはぼふん!と思わず獣化した。
爪と牙がにょっきと生えて、揉み上げや胸毛等の体毛が豊かな毛皮になる。
もふもふっとした筋肉と毛の塊になったラートンは、良く判らない不思議で巨大な長方形の粘土の様な、脇腹に激突してきた物体に必死にしがみついて爪でワシワシと登り何とか川岸に着地する。
「ふぅ……何か自分の口から出たとは思えない声が出とぅわッッ!?
う"っ!! ウ"ア"!! ギャアオン!!」
川ポチャ回避できた、とラートンがほっとしたのも束の間、息をつく暇も無い程次から次へと長方形の粘土の様なものがラートン目掛けて飛んでくる。
それらを避け、くぐり、飛び越え、時に飛んできた物の上を走ってラートンは川から離れようとするが、不思議な長方形粘土はまるでラートンを川に突き落とそうとするかのように執拗に飛んできた。
(わぁぁ!これが妖精の悪戯!?僕の奥さんがこんな目に遭ったら溺れちゃうよ!!)
長方形粘土を躱しながらキョロキョロとイオンウーウァを探せば、対岸の茂みの向こうにキラリと光るものがあった。
(虹色の蝶…!!)
そのすぐ後を、イオンウーウァの深緑の頭がフラフラと通り過ぎる。
「イオンウーウァ!待って!!」
(くそ、獣化してる今ならギリギリ飛び越えられるか…!ええい!ままよ!!)
ザバァン!! ザバン!! ザブン!!
三歩程下がって助走をつけて川を飛び越えようとしたラートンだったが、川の中から長方形粘土が次々に出てきてラートンを阻もうとする。
一度激突したものの爪を立ててしがみつき、そのまま川に沈もうとしている粘土板を足掛かりに跳び、第二、第三の粘土板も逆に足場にして何とか川を渡りきったラートンはそのまま躊躇うこと無くイオンウーウァが消えていった方へと駆け出した。
(イテテテ……爪が食い込むと痛いや……)(ワァーン、悔しい!アイツやるなぁ)(アッハハハハハ…!よぉし!次はオレが行く!見てろぉ♪)
ラートンが消えた後、川の両岸で妖精達がクスクスと楽しそうにランタンを揺らしていた。
「あ!いた!イオンウーウァ!待って!!イオンウーウァ!僕の奥さん!!」
その後もラートンはイオンウーウァを見失ったり見つけたりしながら粘土板に襲われ続けていた。
イオンウーウァは虹色の蝶に魅入られてしまっているのか、ラートンの声に反応せず、ひたすらフラフラと蝶の後を付いていくばかりだった。
その様子が更にラートンの不安を募らせる。
(早く、早くイオンウーウァに追い付かないと…!)
フラフラと歩くイオンウーウァのすぐ近く、坂道を登ろうとしたら急に足下が水車を踏むように下がりだし、中々追い付けないまま、ラートンは歯噛みした。
「ウーァ!!!」
必死に手を伸ばすも、イオンウーウァは依然フラフラとしたまま、茂みの間を縫うように森の奥へと消えていった。
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